佐賀 ”誰でも”が魅力!6人でつなぐ「卓球バレー」 全障スポ
- 2024年03月04日
国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会に向けて県内20市町の魅力を伝える「佐賀めぐりまるっと20」。
卓球が盛んな基山町では、全障スポで様々な種類の卓球競技が行われます。
障害のある人が出場する卓球のほか、音を頼りにプレーするサウンドテーブルテニスなどがあります。
中でも今回注目したのがオープン競技として行われる「卓球バレー」。初めて聞いた、という方も多いかもしれませんが、県内では様々なチームが活動しています。卓球バレーの魅力に迫りました。
1チーム6人でつなぐ卓球バレー
2月18日。SAGAパラスポーツセンターで卓球バレーの合同練習会が開かれました。
集まったのは、障害も年齢も様々な、6チーム40人ほど。この日は特に多くの人が集まったようでした。
競技に使うのは、音の出るボールと横長の板。この板がラケット。これでボールを打ち返します。
ボールの中には鉛の玉が4つ入っていて、視覚に障害のある人も音で球を追うことができるんです。
競技はバレーボールと同じで1チーム6人。全員座って行います。
味方同士のラリーは3回まで。ネットの下をくぐらせて相手コートへボールを返します。
相手がボールをテーブルから落としたり、3回以内に返せないときに得点が入ります。 1セット15点。通常3セット行い、2セット取った方が勝利となります。
みなさん、試合中も笑顔でプレーされています。会場は終始明るい雰囲気でした。
「楽しいですね!皆さん楽しむから、私も元気が出るんですよ」(練習会に参加した男性)
県内の競技人口 60人以上
卓球バレーはもともと、重い障害のある子ども達のために作られたスポーツ。今では障害のある人もない人も、誰もが一緒に楽しめるスポーツとして人気を集めています。
佐賀県での競技人口も少しずつ増えていき、今では60以上の選手たちが活動しているそうです。
楽しくをモットーに!「ドリーム武雄」チーム
黄緑のユニフォームを着ているのは、障害のある親子のための交流サークル「ドリーム武雄」。 メンバーは20人。大会前には積極的に集まり、交流を兼ねて練習を行っています。
2人の選手に練習試合の感想と卓球バレーの醍醐味を聞いてみました。
自分で集中して頑張りたいと思います。
(卓球バレーで好きなのは)みんなでするところ。楽しいです!緊張するけど頑張りました。
温かくチームを見守っているのはドリーム武雄の代表、東島百合子さんです。 中度の知的障害のある息子と一緒に暮らしています。
チームで取り組める卓球バレーに魅力を感じて、活動の1つに取り入れました。
「お互いに顔は知っているけれど、交流っていうのがなかなかなかった。お互いに話すとか(子どもたちが)一緒に活動するっていうのがなかったんです。社会参加の1つにもなるということで卓球バレーを始めました」。(東島百合子さん)
最初はルールの把握に苦戦したというメンバーたち。周囲のアドバイスを受けながら練習を重ね、今では試合で勝利できるほどに上達しました。ガッツポーズも!
試合や練習会でさまざまな人に声を掛けられることで、メンバーたちにいい変化が現れるようになったといいます。
「表情が明るくなったり、仲間意識が生まれてるなというのを感じます。回数を重ねることで、何か『自分ができた』という喜びにつながっていると思う」。(東島百合子さん)
チームメイトとして一緒にスポーツを楽しめるこの時間は、メンバーにとって大切なものになっています。
「チームのみんなと会えるのがすごくワクワクして嬉しかった。試合の時は集中するけど、試合が終わった後とか始まるときはウキウキした気持ちになる」。(ドリーム武雄 井手正宗さん)
卓球バレーを支える”卓球バレー協会”
卓球バレーに取り組む選手や保護者を支えるのは、佐賀県卓球バレー協会です。協会の多くは、障害や福祉について学んできた西九州大学の卒業生たち。
大会の運営や審判はもちろん、選手たちが気持ちよく競技を続けられるように、時にはコミュニケーションの仲立ちもしています。
「(色んな卓球バレーチームを見ていて思うのは)やっぱり生き生きされているなと。みなさんの生きがいにつながっているのかな。沢山の仲間がいるので、ぜひ一歩踏み出していただいてチームの中に入って、社会に出て欲しいなと思う。卓球バレーをやってくださいというのをアピールしたいです」。(卓球バレー協会 城﨑奈津美さん)
子どもから大人まで、障害がある人もない人も一緒に楽しめる「卓球バレー」。
これからも競技を通して、交流の輪は広がっていきます。
”社会参加”の大きなチャンスに
試合展開も早くて、面白そうな競技でした。6人で協力するというのも、会話も生まれて楽しいでしょうね。
今回紹介した卓球バレーに取り組むことで、どんなことが期待できるのか。佐賀県卓球バレー協会の事務局長であり、西九州大学でスポーツ健康福祉学科の教授を務める山田力也さんにお話を聞きました。
中でも、社会的なメリットとして、出かけるきっかけになることで生活力を高められる、というものがあります。重度の障害がある人が参加できるグループ競技はまだ多くはありません。そうした人にとって、卓球バレーは社会参加への大きなチャンスにつながるそう。
県内では年に3回大会も開かれていて、次は3月17日に武雄市で行われます。卓球バレーに興味を持たれた方は、ぜひ佐賀県卓球バレー協会までお問合せください。
卓球バレーの日程や、基山町で開かれる国スポ・全障スポのその他の競技はこちら。
取材後記
実は「卓球バレー」という競技を始めて知りました。障害のある・なしや年齢に関わらず、誰でも挑戦できる競技。様々な人に開かれた優しいスポーツですよね。練習試合に参加したチームのみなさんが真剣に、そしてとても楽しそうにプレーをしていたのが印象的でした。特に、密着させていただいた「ドリーム武雄」の選手たちは言葉数は少ないものの時々目を合わせて笑ったり、得点を入れるとガッツポーズをしたり。それぞれがチームであることを感じながらプレーしているのが伝わりました。ぜひ、これからも笑顔いっぱいで楽しみながら卓球バレーに励んでください。応援しています!
2024年に佐賀で開かれる国スポ・全障スポに向けて、県内20市町のそれぞれ魅力を伝えるプロジェクト「さがめぐりまるっと20」。こちらの特設サイトには、動画も掲載しています。ぜひご覧ください。