防衛費増額で増税検討を要請「1兆円強は国民の税制で」岸田首相

防衛費の増額をめぐり、岸田総理大臣は5年後の2027年度にGDPの2%に達する予算措置を講じ、その後も水準を維持するためには歳出削減などを行っても毎年度1兆円を超える財源が不足するとして、与党に対し、年末までに税目や施行時期を含めて増税を検討するよう求めました。

政府与党政策懇談会には、岸田総理大臣のほか、自民党の麻生副総裁や公明党の山口代表、それに両党の幹事長や税制調査会長が出席しました。

この中で岸田総理大臣は、来年度から5年間の防衛費について総額でおよそ43兆円程度とし、5年後の2027年度にGDPの2%に達する予算措置を講じる方針を改めて示しました。

そのうえで、その後も防衛力を安定的に維持するためには、毎年度およそ4兆円の追加の財源が必要だとしています。

追加の財源のうち、およそ4分の3は歳出改革や、年度内に使われなかった「剰余金」の活用、それに国有資産の売却など、税金以外の収入を活用する「防衛力強化資金」の創設などで賄うとしています。

そして岸田総理大臣は、「残りのおよそ4分の1の1兆円強は、国民の税制で協力をお願いしなければならない。ただし、現下の家計を取り巻く状況に配慮し、個人の所得税の負担が増加するような措置は行わないこととする」と述べ、与党に対して、年末までに税目や施行時期を含めて、増税を検討するよう求めました。

また岸田総理大臣は、来年度から5年間の財源についても同様の考え方で確保するものの、来年度は増税を行わず、2027年度に向けて段階的な増税を検討する考えを示しました。

公明 山口代表「国民の理解を求めていくことが重要」

公明党の山口代表は、記者団に対し「税以外での財源の調達を相当努力したので、税負担はかなり抑えられているが、国民の理解を求めていくことが重要だ」と述べました。

そして、今後の与党での増税の検討について「安定的な財源措置によって、防衛力が支えられていくことになるので、そこが不透明なままどうなるかわからないという状況は避けるべきだ。責任ある判断をお願いしたい」と述べ、年末までに増税の税目や施行時期について方向性を示すべきだという考えを強調しました。

一方、自民党の一部から「増税ではなく、国債の発行で対応すべきだ」という指摘が出ていることに関連して「きょうの会合では、国債で財源措置をするという発言は誰からもなかった。国債は、いずれ将来の世代に負担が回るものであり、きょうの岸田総理大臣の指示の趣旨には合わないと思う」と述べました。

“検討に所得税は含めず” 自民 茂木幹事長

自民党の茂木幹事長は、派閥の会合で防衛費を増額するための追加の財源が、5年後の2027年度におよそ4兆円必要となり、このうち1兆円程度は、税制措置で確保することになるとの見通しを示しました。

そのうえで、今後、与党内での検討について、「いま、物価高の問題がある中で、所得税については個人の負担が増加するような措置はとらない方向だ」と述べ、増税の検討の対象に所得税は含めず、ほかの税目で対応する考えを強調しました。

8日の自民党の派閥の会合では、このほかにも防衛費の増額の財源をめぐる発言が相次ぎ、党の税制調査会の幹部を務める森山選挙対策委員長は「歳入が決まっていない国防費の話は慎重でなければならない。大事なことほど、財源の裏付けがないと話にならない」と指摘しました。

一方、安倍派の会合では、「増税で賄うことは、党の公約に盛り込んでいない」など、増税の議論に反対する意見が出され、萩生田政務調査会長は、党所属の議員が意見を言える機会をつくる考えを示したということです。

共産 志位委員長「大軍拡と大増税に断固反対」

共産党の志位委員長は、記者会見で「『敵基地攻撃能力』の保有、5年間43兆円の軍事費の総額、増税という3点がセットであらわれ、憲法の恒久平和主義に基づく国の在り方を根底から覆す非常に危険な動きだ。軍事費の増額の財源を国民が広く負担するとなったら、消費税大増税の重大な危険がある。大軍拡と大増税に断固反対する」と述べました。