除染廃棄物 福島県外での
最終処分方針 意見聴く集会

東京電力福島第一原発の事故のあと行われた除染で出た廃棄物を福島県外で最終処分する方針が十分に知られていないなか、環境省は全国の人たちに説明し意見を聴く集会を初めて開きました。

福島県内の除染で出た土や廃棄物について、環境省は福島第一原発周辺に整備した中間貯蔵施設への搬入を来年3月までにおおむね終了させるとしています。

こうした廃棄物は、2045年までに福島県外で最終処分することが法律で定められていますが、処分場所などについて議論は進んでおらず、去年、環境省が行った調査では、この方針を福島県外で知っている人はおよそ2割にとどまりました。

こうした中、環境省は全国の人たちに説明を行い、意見を聴くオンライン集会を23日初めて開きました。

参加した人からは、福島県外に搬出する理由や安全性を尋ねる質問が出され、参加した小泉環境大臣は「原発で作った電力を首都圏の人たちも利用していたことを考えると、福島だけの問題として位置づけるわけにはいかない。『なぜ外に出すんだ』という批判があることも受け止めつつも、理解の醸成に取り組んでいきたい」などと答えていました。

23日の集会は、新型コロナウイルスの影響でオンラインで開かれましたが、環境省は今後、全国各地で集会を開く予定です。

再生利用の意見には今後回答

環境省は除染で出た土のうち、放射性物質の濃度が下がったものについては全国の公共工事で再生利用し、最終処分する量を減らすことを目指していて、23日の集会ではこの方針も説明されました。

福島県飯舘村では、除染で出た土を通常の土で覆ったうえで花や野菜などが試験的に栽培され、いずれの作物も放射性物質の濃度は国の基準を下回っています。

小泉大臣は23日の集会で「花の栽培から始め、いまでは地元の声もあり、野菜の栽培に取り組んでいるところだ。最初から意見がぶつかり合うような形ではなく、どのような形であれば前に進めていけるのかを議論したい」と述べました。

集会の参加者からは「堤防の工事で使えないか」とか「公聴会を実施すべきではないか」といった意見が出されましたが、23日、詳しく議論されることはありませんでした。

環境省は「きょう取り上げられなかった意見や質問についても、今後、適切な形で答えていきたい」としています。

専門家「多様な意見で議論を」

23日の集会をオンラインで視聴した、除染や環境政策に詳しい東京経済大学の礒野弥生名誉教授は「『福島県の人たちが大変な思いをしたのだから、みんなが自分のこととして考えていきましょう』と言うだけで、いったい何が問題となっているのか、参加した人たちがどんなことを心配しているのか、議論されることはなく、これではリスクコミュニケーションを行ったことにはならない」と指摘しています。

原発事故の発生から10年がたちましたが、環境省が今回のように全国の人たちを対象にした集会を開くのはこれが初めてで、礒野名誉教授は「最終処分の期限の2045年までに、環境省はさまざまな利害関係者や多様な意見をもつ人たちと責任やリスクをきちんと議論し、具体的な政策を示してほしい」と話していました。