森会長発言
スポーツ界の反応(5日)

組織委員会の森会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言したことについて、5日のスポーツ界の反応です。

JOC 山下会長「指摘する機を逸したというのが正直な感想」

JOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長は、5日午後、この発言について都内のJOCで取材に応じ、「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な発言だった」と述べました。

自身も出席するなかで森会長の発言を聞いたときの思いについて問われると「“ん?”と思った部分は正直あったが、そのあと話がいろいろと変わっていき、指摘する機を逸してしまったというのが正直な感想だ」と話しました。

一方、森会長が辞任する必要があるかどうか問われたのに対し「本人が謝罪されて発言を撤回されている。いろんな意見があることはわかっているが、最後まで全うしていただきたいと思っている」と述べました。

そのうえで、JOCとして女性の理事を40%に増やすなど役員の選考方法を変え、改革を進めていることを強調し「われわれが目指しているものをさらに進めていかなくてはいけない。多様性や差別のない共生社会、目指すべきところをさらに力強く進めていきたい」と述べました。

日本ラグビー協会 初の女性理事「私のことだと思った」

平成25年に日本ラグビー協会で初めて女性として理事に就任した稲澤裕子さんは「森会長が日本ラグビー協会の会長を務めていたときに女性理事は私しかいなかったので、私のことを話しているのだと思った」と述べました。

また、森会長が日本ラグビー協会の会長を務めていた当時の理事会について、「森会長から発言を制止された記憶はある」と述べ、どういう時に制止されたかを問われると「次々に質問をしたときだと思う。あまりはっきり覚えていない」と答えました。

そして、「ラグビーのことを知らない素人の立場でわからないことはよく質問していた。そういうことは理事会でなくて別のところで聞けばいいと森会長が思うことも当然だと思う」と説明し、「私が入ったことで理事会の時間は延びていたはずだ」と話しました。

一方で、稲澤理事は「女性がいると会議が長引くということは正しくない。女性だから男性だからというくくりではなく、何について話すかが重要だ。森会長が協会を辞めてから女性の理事は5人に増えたが議論も活性化されているし意味のあることだと思う」と述べました。

日本ラグビー協会 谷口理事「憤りを超えた感覚」

森会長が、かつて会長などを務めた日本ラグビー協会の谷口真由美理事は「オリンピック、パラリンピックのホスト国のトップが女性をそのように見ていることが悲しく残念だ」と述べました。

組織委員会の森会長は、JOC=日本オリンピック委員会の評議員会で、自身が会長や名誉会長を歴任した日本ラグビー協会を例にあげて「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言し、4日発言を撤回し謝罪しました。

これを受けて、日本ラグビー協会の5人いる女性理事の1人で、就任2年目の谷口真由美理事がオンラインで取材に応じ、「うっかり口がすべったのだと思うが、オリンピック、パラリンピックのホスト国のトップが、女性をそのように見ていることが悲しく残念。憤りを超えた感覚だ」と不快感を示しました。

また「協会の女性理事は会議で、空気は読むがその空気に支配されて黙ったり、丸く収めたりすることはしない。とげとげしいことを発言することがあったとしても、最終的にラグビー界を発展させるためだ。男性中心だった協会を変革していくためには必要なことだと認識している」と話し、女性理事の増加が組織全体によい影響を与えている考えを強調しました。

そのうえで「女性がないがしろにされてはスポーツの発展はないと思う。偏見や差別をなくすために、言うべきことは言うということを諦めてはいけない」と話しました。

吉田沙保里さん「発言は残念 選手たちが不安」

レスリングでオリンピック3連覇を達成し、国民栄誉賞も受賞した吉田沙保里さんは、森会長の発言について「自分は性別に関係なくオリンピックのすばらしさを実感していた。このような発言は残念だと思う。オリンピックまで半年を切る中で、開催を信じて頑張っている選手たちが、不安になっていることを思うと本当につらい」とコメントしました。

競泳選手からも「怒り」「残念」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の発言に対して、都内の大会に出場している競泳の選手からも厳しい声が相次ぎました。

ロンドンオリンピック銀メダリストの鈴木聡美選手は4日の取材で「自分の心にも大きく影響が出ると思うのであまり多くは語れないが、ひと言で言うとかなり残念で怒りも正直あった」と話していました。

ロンドンの銀メダリストでオリンピック3大会を経験した入江陵介選手は「世界的な大会のオリンピックを控える中、そういった発言があったことは少し残念には思う」としたうえで、アメリカのチームに所属してトレーニングした経験を踏まえ、「僕自身、アメリカでいろいろな国や人種の選手と一緒にトレーニングして楽しい生活をしてきた。年々、いろいろな差別の問題が取り上げられる中で多様性への認識を持っていかないかぎり時代との差が生まれてくる」と話しました。

IOC委員「この男性を絶対追い詰める」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の発言について、IOC=国際オリンピック委員会の委員からも批判の声があがりました。

アイスホッケー女子のカナダ代表として4大会連続でオリンピックの金メダルを獲得したIOCのヘイリー・ウィッケンハイザー委員は自身のツイッターで森会長の発言に関するアメリカメディアの報道を引用し「朝食会場のビュッフェでこの男性を絶対に追い詰める。東京で会いましょう」とコメントしました。