女川原発2号機 再稼働への
地元同意を表明 宮城県知事

東北電力女川原子力発電所2号機について宮城県の村井知事は、再稼働の前提となる地元同意を表明しました。東日本大震災の被災地にある原発で再稼働に向けた地元の同意が示されるのは初めてです。

女川原発2号機の再稼働をめぐっては、立地自治体の女川町と石巻市の議会、それに宮城県議会が再稼働を容認する判断を示していました。

9日に県内35のすべての市町村長から意見を聞く会合が開かれたのに続いて、11日は石巻市内で村井知事、女川町の須田善明町長、石巻市の亀山紘市長の三者会談が行われ、三者は再稼働を了解することで一致しました。

そして会談の終了後、村井知事は記者会見し、女川原発2号機の再稼働の前提となる地元同意を表明しました。

村井知事は理由について、原子力発電は重要なベースロード電源であることや、雇用が生まれ地元経済に寄与すること、それに原子力規制委員会の新しい規制基準に合格し安全性を確認できたと判断したことなどをあげました。

一方、事故が起きた際の住民の避難の在り方については、避難道路の整備を進め避難計画の見直しも続ける考えを示しました。

村井知事は「福島第一原発の事故のこともあり最後まで悩んだが、東北電力や国に安全対策を要請し、立地自治体としても対策をとっていくことで、意見の一致をみた。苦渋の決断だった」と述べました。

東日本大震災の被災地にある原発で再稼働に向けた地元同意が示されるのは初めてです。

女川町 須田町長「防災対策の取り組みが前提条件」

女川町の須田善明町長は三者会談の終了後に行われた記者会見で、「賛成や反対の双方の住民から意見が強く出されたのが事故が起きたときの避難道路の整備だ。防災対策については村井知事からハード・ソフトの両面で継続的かつ着実に取り組むと明確に答えをいただけたのでその前提条件をもって再稼働を了解する」と述べました。

石巻市 亀山市長「安全性や健全性確認できた」

石巻市の亀山紘市長は三者会談の終了後に行われた記者会見で、「原発の安全性や健全性についてしっかり確認できたものとして再稼働を了解することにした。また私からは住民の不安を解消するため、事故が起きた時に住民が避難する半島部の道路などの整備や避難先となる市町村との受け入れ態勢の構築などを要望し、実施に向けた明確な回答をいただいたので再稼働を了解する」と述べました。

東北電力「安全性向上に全力で取り組む」

東北電力は「大変重く受け止めている。女川原子力発電所2号機の再稼働に向け、引き続き発電所の安全性向上に全力で取り組むとともに、1人でも多くの方からご理解いただけるようにわかりやすく丁寧な情報発信に努めて参りたい」とコメントしています。

立地自治体の住民は

原発が立地する女川町に住む70代の男性は「住民一人ひとりの意見も聞かず決めてしまうのはやり方が横柄ではないか。いくら安全対策をしたと言っても、絶対の安全ではないし、住民の不安は消えない。このような大きな問題は、もっと丁寧に議論すべきだ」と話していました。

また、女川原発の立地自治体で隣接する石巻市から訪れていた70代の男性は「地元経済の活性化にとって原発がもたらす影響は大きい。基本的には再稼働に賛成で、原発が無いとこの地域は成り立たないのではないかと思う」と話していました。

原子力規制委 更田委員長「被災経験を安全対策に」

原子力規制委員会の更田豊志委員長は「東北電力は自分たちの原発が津波や地震で被災した経験をしっかりと安全対策に生かしてもらいたい。震災の際に感じた、あの時の記憶を失わないでほしい」と述べました。

そのうえで、女川原発が9年前に事故を起こした東京電力の福島第一原発と同じ沸騰水型と呼ばれる型式であることに触れ、「福島第一の原発事故の経験を経て、同じ原子炉の型式である女川原発では核燃料が損傷するような重大事故の対策が取られているが、これからも東北電力には絶えず対策を考えて続けてもらいたい」と注文をつけました。

加藤官房長官「地元の理解を得られたことは重要」

加藤官房長官は午後の記者会見で「どの発電所であっても、いかなる事情より安全性を最優先し、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重して、地元の理解を得ながら再稼働を進めるという政府の方針のもとで、地元の理解を得られたことは重要だ」と述べました。

そのうえで「女川原発2号機については、原子力規制委員会による設置変更許可は出されているが、そのほかの再稼働に必要な法令上の手続きも続いており、引き続き東北電力が安全確保を最優先に対応していくことを期待している」と述べました。

新規制基準に合格 9原発16基

これまでに福島の原発事故のあとにできた新しい規制基準に合格した原発は、全国で9原発16基あります。

このうち東日本大震災で影響を受けた原発で合格したのは、宮城県にある東北電力の女川原発2号機と、茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発の2基です。

東海第二原発は地元同意は得られていません。

このほかの被災地の原発については、青森県にある東北電力の東通原発が規制委員会による審査を受けている状況です。

また福島県にある東京電力福島第一原発と福島第二原発はすでに廃炉が決まっています。

地元の同意得て再稼働 5原発9基

全国で、地元の同意を得てこれまでに再稼働した原発は、九州電力の鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、そして、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、関西電力の福井県にある高浜原発3号機と4号機、大飯原発3号機と4号機、四国電力の愛媛県にある伊方原発3号機の合わせて5原発9基です。

原子力防災の専門家「広域避難の在り方 地域でも考えて」

原子力防災に詳しい福井大学の安田仲宏教授は「原子力災害が起きた場合、その影響は広範囲に及ぶことは福島の事故の教訓。その意味で広域的な避難の在り方を国任せにしないで地域でもしっかり考えることが重要だ。地震や津波などの自然災害が起きて原発の周辺から避難してきた住民に対して、受け入れる地域の自治体や住民はどのように対応するか事前にしっかりと決めておくことが求められる」と指摘しています。

また「原則、屋内にとどまる地域の住民は、福島の原発事故の教訓から家庭などでは自然災害だけの場合よりも多いおよそ1週間分の備蓄を用意しておくことや、自分の身を守るために放射線量などの必要な情報をどう入手するかなど、ふだんから考えておくことが重要だ」と述べ、住民自身の意識や備えも大切になってくるとしています。

原発システムの専門家「常に対策の見直しを」

原発のシステムに詳しい日本原子力学会の宮野廣さんは「女川原発は半島の先端にあってたどりつくまでの道の状況が厳しい。そして地震が多く、津波の可能性がある環境の中で、事故があったときに外部からの支援態勢を組んで、適切に行えるかが重要なポイントとなっている。きちんと対策を打っておく必要がある。『今、安全だから、ずっと安全だ』ということはない。常にさまざまな対策の見直しを行ってほしい」と指摘していました。