倍首相 辞任の意向
各省庁の反応は

安倍総理大臣が総理大臣を辞任する意向を固めたことについて、各省庁の反応です。

外務省幹部「各国首脳と信頼関係 外交に大きな意義」

外務省幹部は記者団に対し「安倍総理大臣が各国首脳との信頼関係を築いてきたことは、日本外交にとって大きな意義があった。安倍総理大臣の時に、集団的自衛権の行使を含む安全保障法制を整備することができたが、これがなければ、アメリカのトランプ政権と渡り合っていくことはできなかったと思う」と述べました。

外交・安全保障担当幹部「外交面の影響は大きい」

政府で外交・安全保障を担当する幹部の1人は「これだけ長い間、総理大臣を務めた人がいなくなるので、外交面での影響は非常に大きい。特にアメリカのトランプ大統領とは首脳どうしの個人的な信頼関係があったので、辞任によって日米関係にどのような影響が出るのか懸念している」と述べました。

そのうえで「安倍総理大臣はアジアや中東などでも知名度と存在感は大きく、今後は、今までのような影響力を発揮できなくなるのではないか。後任人事については、各国から大きな注目が集まるだろう」と述べました。

文科省幹部「政策推進に懸念」

文部科学省の幹部はNHKの取材に対し「非常に驚いたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校の要請については事務方の声が必ずしも届かないこともあったと感じている。コロナ禍で緊急の対応が続く中、官邸との連携が欠かせないので今後どうなっていくのか注視していきたい」と話していました。

また別の幹部は、第2次安倍政権になって「教育再生実行会議」が設けられ先日の会議でも少人数学級の指導体制を検討する必要があるという考えが示されていたことを踏まえ「非常にショックだ。コロナ禍の学びの保障をどうするかや、教育再生実行会議で議論が始まった少人数学級の検討など難しい課題が多く残る中で、政策が進まなくなるのではないかという懸念もある」と話していました。

ほかの幹部は「体調を考えてのことだとは思うが、東京オリンピック・パラリンピックの開催もどうなるかわからず、これからその判断を下す大きな節目を迎える中、今ではないほうがいいのではないかとも感じた。これから閣僚人事などがどうなるのかという不安もある」と話していました。

厚労省官僚「官邸主導の力関係が変わるのではないか」

新型コロナウイルスの対策にあたっている厚生労働省の幹部職員の1人は「心配していたが、辞任するとは想定していなかった。今は新型コロナウイルスの対策でも政策のかなり細かい部分まで官邸から指示をされるようになっているので官邸主導の力関係が変わるのではないかという思いはある。職員の力を合わせて対策を頑張りたい」と話していました。

別の幹部職員は「ニュースを見て驚いている。ただ、来月には予算要求を控えているが、大きな方針に影響はないだろう。オリンピックとパラリンピックは、国際的な状況を踏まえると開催は難しいと思うので早期に判断して新型コロナウイルスの対策をとるため、政治を仕切り直してほしい」と話していました。

また、職員の1人は「経済産業省出身の官僚が発言力を持っている内閣では経済偏重になってしまい、今のような緊急時にはそぐわない。専門性が高く、省庁の意見を尊重してもらえる人にトップに立ってほしい」と話しています。

新型コロナ対応の担当者「意表を突かれた感じ」

新型コロナウイルスへの対応にあたっている内閣官房の担当者はNHKの取材に対し「驚いた。今後も執務を継続していくという雰囲気だったので、意表を突かれた感じだ。新型コロナウイルス対策については、きょう、今後の総合的な取り組みをまとめたので、政策面で大きく変わるということはないのではないか」と述べました。

国交相幹部「引き続きしっかり」

国土交通省の幹部は「新型コロナウイルスの感染対策を進めていかないといけないときの辞任に、驚いたとしかいいようがない。ただここ最近、省内は総理の進退の話題でもちきりで『来月初旬にも退陣するのでは』など、まことしやかに話が飛び交っていたところだった。国土交通省は危機管理に対応するので、次の総理大臣には混乱が起きないように引き続きしっかりとマネージメントをしてほしい」と話していました。

また、先月から実施されている「Go Toトラベル」については「世間で多くの反対の意見が聞かれる中、安倍政権の意向のもと進めてきた政策だけに、次の総理大臣が今後どういう方針を示すのか、大きな変更がでると現場での対応が混乱するので不安だ」と話していました。

一方、九州北部豪雨や西日本豪雨などの被災地に安倍総理大臣に同行した国土交通省の官僚は「相次ぐ水害対策など、来年度予算の概算要求を控える中で辞任するとは、非常に驚いた。相次ぐ水害では多くの被災地を視察し、被災者の声も多く拾い上げ、対策に向けた予算を確保するなど本気で災害対策に向き合ってくれている印象があった。次の総理大臣にも途切れることなく防災への取り組みを続けてもらいたい」と話していました。

また、別の幹部の1人は「心配はしていたが、辞任には驚いた。ただ安倍路線は継続だろうから、直ちに影響はないと思っている」と話していました。

拉致担当職員「最重要課題という姿勢を引き継ぎを」

拉致問題を担当する政府の職員はNHKの取材に対し「政権として、拉致問題を最重要課題に掲げてきたが、辞任により途中で投げ出したと批判されるおそれがあるのではないか。拉致被害者家族の高齢化が進みあまり時間は残されていないので、次の政権にも拉致問題は最重要課題だという姿勢を引き継いでもらいたい」と述べました。

警察庁幹部「五輪準備を粛々と」

警視庁の幹部はNHKの取材に対し、「1報をニュースで見て非常に驚いている。来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックは、安倍総理のもとで具体的な開催方式などが示されると思っていたので、今後、どうなるか注視したい。いずれにせよ、オリンピック・パラリンピックが中止になったわけではないので、誰が総理大臣になっても警備計画の策定や交通対策といった準備を粛々と進めていくだけだ」と話していました。

自衛隊幹部「安保政策変わり米軍と協力関係進んだ」

自衛隊の幹部はNHKの取材に対し「集団的自衛権の行使容認など、安倍政権のもとで日本の安全保障政策は大きく変わり、自衛隊とアメリカ軍との現場レベルでの協力関係が進んだのは確かで辞任は残念だ」と話していました。

一方、別の幹部は「今後の政治状況によって、イージス・アショアの配備断念に伴う新たなミサイル防衛体制の検討などにどのような影響が出るのか、注視したい」と話していました。