助役は“裏の町長”
「仲介なく受注難しい」

関西電力の会長や社長などが福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題で、地元の建設会社の間では、元助役の仲介がなければ原発関連の工事の受注は難しいという認識が広がっていたことがわかりました。元助役は、業者から多額の手数料を得ていて、その一部は関西電力側に還流していたとみられています。

この問題は、関西電力の岩根茂樹社長や八木誠会長など20人が、原発が立地する高浜町の森山栄治元助役から、物品や金銭、合わせて3億2000万円相当を受け取っていたものです。

元助役は、ことし3月に90歳で亡くなりましたが、原発関連の工事の受注に大きな影響力を持っていて、地元の建設会社の間では、仲介がなければ受注は難しいという認識が広がっていたことが複数の会社への取材でわかりました。

このうちの1人は、NHKの取材に対し「影響力が絶大で、話を通さないと原発関連の工事の仕事がもらえなかった」などと話しています。また、関係者の多くが「当時の町長よりも大きな力を持っていた」と話していて、「裏の町長」などと呼ばれていたということです。

関係者によりますと、国税局の税務調査では元助役は地元の建設会社から受注に絡んで多額の手数料を受け取っていたということで、その一部は関西電力側に還流していたとみられています。

地元では、今回明らかになった町の元幹部と電力事業者の関係に対する不信感を背景に、関西電力に説明責任を果たすよう求める声が強まっています。

電力会社と自治体 金をめぐる不透明な関係

電力会社と自治体との間の不透明なお金の流れは福井県の自治体をはじめ、原発が立地する自治体の多くでたびたび、問題となってきました。

その代表的なものが、電力会社が自治体に行う寄付金です。
匿名や公式な文書に会社名が掲載されないなどして、お金の流れが明らかにならないケースがこれまでも多く指摘されてきました。

例えば、2014年には、原発が集中立地する福井県敦賀市に対して、日本原子力発電が寄付した、およそ15億円が公式な文書に記載されていなかったことが問題となりました。
寄付は原発が立地する敦賀半島の道路整備に使われたということですが、このときは電力会社側から、市に社名を公にしないことを要望し、市もそれを了承していました。

また、2006年から2007年にかけて、福井県美浜町では電力会社2社から合わせて9億円余りの匿名の寄付が寄せられたことがわかりました。
当時の山口町長は「寄付金は町から要望したりしたもので、町民のために使いたい」と取材に対して話していましたが2社のうち、関西電力は、「具体的なコメントは差し控えたい」としていました。

このように電力会社と自治体の間には、もちつもたれつの関係ができあがっていて、オープンな形で寄付を行うケースも見られ、島根県松江市では、島根原発3号機の増設に市が同意する意向を島根県に回答したあとの2000年7月、中国電力から寄付金の申し出を受けたということです。
松江市では、島根原発2号機の増設の際にも中国電力から6億5000万円の寄付を受けたとしています。当時、松江市の担当者は、寄付金について「中国電力側が松江市の地域振興に理解を示したものだと思う」と話していました。

自治体と電力会社のお金をめぐる関係について、原子力政策に詳しい多摩大学大学院田坂広志名誉教授は「電力会社と自治体のお金の関係の始まりは原発という危険な施設を受け入れた見返りとして、電力会社が地元にお金を出し、地域振興や経済発展などに使ってもらおうという考え方だ。自治体に出される原発の交付金などの政策も、この考え方にそっているといえ、ある意味、構造的な課題を抱えているといえる。こうした中で不透明なお金の流れが発生すると、誰にもわからないところで利権関係が生まれやすくなる。利権関係が生まれると、行政が原子力政策や安全性の判断をする場合に、公正で適切な判断ができなくなるおそれがある。原発だけでなく、放射性廃棄物の施設など、すべての原子力施設で、こうした問題は起きる可能性があり、しっかりと対策を考える必要があるのではないか」と指摘しています。