島第一原発 汚染水処理
方法など各国大使館に説明

福島第一原子力発電所にたまり続ける放射性物質を含む水の処理に韓国が強い関心を示す中、政府は4日、韓国を含む各国の大使館向けに説明会を開き、国の有識者会議で議論している処理の方法などを説明し、理解を求めました。

政府が外務省で開いた説明会には、韓国を含む22の国と地域の大使館などから担当者が出席し、冒頭に撮影の時間をもうけたあとは非公開で行われました。

説明会で政府は、福島第一原発から発生するトリチウムなどの放射性物質を含む水を保管するタンクは、このままであれば3年後の2022年夏ごろに満杯になるという見通しを示しました。

そのうえで水の処理について、薄めて海洋に放出する案やタンクを増やす案など、国の有識者会議で議論していることを説明したということです。

韓国を含む出席者の個別の発言内容は明らかにしていませんが、処理方法への懸念や抗議などの意見は出なかったということです。

政府は、東日本大震災のあと原発の状況などについて100回以上にわたって各国の大使館向けに説明を行っていますが、内容を公表したのは初めてです。

これについて政府は「透明性を高める機運が高まっているので、大使館向けに行っている説明会についてもしっかり広報することにした」と説明しています。

トリチウムなどを含む水の処理方法については韓国が強い関心を示して日本に対して説明を求め、日本政府は先月27日、「検討中で具体的な結論を出していない」などと文書で回答していますが、これまでのところ韓国側からの反応はないということです。

増える「トリチウム水」

メルトダウンを起こした福島第一原発の1号機から3号機では、中に残る核燃料を冷やすために水を入れ続けているほか、建屋の山側からの地下水の流入もあり、今も毎日170トン前後の汚染水が発生しています。

回収して放射性物質を取り除く処理をしていますが、トリチウムなどの一部の放射性物質が残ってしまうため、これまで構内に1000基近くのタンクを造り、先月22日時点でおよそ115万トンを保管しています。

トリチウムなど含んだ水は日々増え、東京電力は先月、現状の計画のままでは3年後にタンクが満杯になる見通しを示しました。

また原発構内には今後、廃炉のための別の施設をつくる必要もあり、トリチウムを含んだ水をためるタンクを増設する用地確保が難しくなるとしています。

どのように処分する?

最終的な処分の方針を決めることになっている国はこうした状況を踏まえ、これまでに放射性物質の濃度を下げて海に放出する案、加熱して蒸発させる案、地下深くに埋設する案などを示してきました。

しかし、これらの案はいずれも海や大気など環境中に放出するもので、住民参加の公聴会などで風評被害を心配する声が相次ぎました。

このため国は先月、有識者会議を開き、新たな選択肢として、タンクを増設し長期に保管し続ける方法も検討していくことを決め、今後、議論を進めることになりました。

「トリチウム」とは

扱いに苦慮するトリチウムを含んだ水。

トリチウムは大気中の水蒸気や雨水など自然界にも存在する放射性物質で、水から分離して取り除くのが難しいのが特徴です。

健康への影響について国は、トリチウムは弱い放射線を出す物質で、体内に取り込んだときに起こる内部被ばくの量も放射性セシウムと比べて十分に低いなどとしていて、これまで健康影響は確認されていないとしています。

トリチウムは運転をしている原子力発電所からも発生します。

このため国は基準を定めていて、国内では1リットル当たり6万ベクレルという基準値以下であることを確認したうえで海に放出しています。

海外でも各国で基準などを定めて海などに放出されているということです。

見えない解決策

こうしたトリチウムの性質などから、原子力規制委員会は、基準以下に薄めて海へ放出することが科学的に合理的な処分方法だとする見解を示しています。

しかしその一方で、事故から8年半がたち、漁業や農業、観光といった福島県の産業に復興の兆しや道筋が見えてきた中で、再び風評被害が起きることへの心配の声は根強いものがあり、現時点で解決の糸口は見えていません。