府 韓国を優遇対象国
から除外 正式決定

政府は2日の閣議で、輸出管理の優遇対象国から韓国を除外することを正式に決定しました。半導体の原材料など3つの品目に続く輸出管理の強化で、韓国は今月28日に優遇対象国から外れ、輸出管理を厳しくする対象が拡大されます。

政府は2日の閣議で、輸出管理を簡略化する優遇措置の対象国から韓国を除外する政令の改正を、正式に決定しました。

除外されると、工作機械や炭素繊維など軍事転用のおそれが高いとして厳しく規制されている品目を韓国に輸出する際は、原則として輸出の契約ごとに個別の許可が必要となります。

さらに、そのほか食料や木材などを除く幅広い品目についても、経済産業省が兵器に使われるおそれがあると判断した場合には個別の許可が必要になる可能性があります。

ただし、
▽輸出管理を厳格に行っている企業向けには例外として個別ではなく包括的な許可で手続きを簡略化する制度があることや、
▽優遇対象国から外れても、韓国向けの輸出は中国など向けとおおむね同じ扱いになるため、政府や企業の間では実際の貿易への影響は限定的だという見方もあります。

半導体の原材料など3つの品目に続いて輸出管理を強化する措置に対し、韓国側は強く反発し、撤回を求めてきましたが、政府は安全保障上必要な輸出管理の見直しだとしていて、韓国は今月28日に優遇対象国から外れることになります。

なお、経済産業省はこれまで優遇対象国を、いわゆる「ホワイト国」と呼んできましたが、輸出管理の対象国の分類を見直し、2日から従来のホワイト国の呼び方を「グループA」とすることを決めました。

専門家「報復の悪循環の危険性高まる」

政府が輸出管理の優遇対象国から韓国を除外する措置に踏み切ったことについて、日韓関係に詳しい静岡県立大学の奥薗秀樹准教授は「日本政府は『徴用』をめぐる判決とは別問題だとは言いながらも、韓国側が適切な措置を取らない以上、日本側から譲歩するつもりは一切ないんだという強いメッセージを送ることになる」と述べました。

一方、韓国側の受け止めについて、奥薗准教授は「G20大阪サミットの前まではムン・ジェイン(文在寅)政権は韓国の国内では経済政策の失敗などで批判を受けていた。そうした中で、日本政府が輸出優遇措置の撤廃という手段をとることで、ムン政権への風当たりが強まり方針転換せざるをえない状況になることを期待していた側面がある。ところが実際には正反対のことが起きていて、日本から仕掛けられた経済戦争というものに対して、一致団結してオールコリアで立ち向かうという雰囲気ができている」と指摘しました。

そのうえで「韓国側からみれば日本が『徴用』の問題で第二の報復措置を取ったと受け止めるのは間違いない。報復が報復を呼ぶ悪循環に陥ってしまう危険性がさらに高まると懸念せざるをえない」と述べました。

そして、奥薗准教授は、日韓の経済関係が相互に依存し合っていることを踏まえて「日韓双方の経済界が連携して共同でアクションを起こし、政治が動きやすい環境を作ることを期待したい」と述べました。

官房長官「日韓関係への影響を意図せず」

政府が輸出管理の優遇対象国から韓国を除外することを決定したことについて、菅官房長官は記者会見で、輸出管理を適切に実施するための運用の見直しであり、日韓関係に影響を与えることは意図していないという認識を示しました。

2日の閣議で決定した、輸出管理を簡略化する優遇措置の対象国から韓国を除外する政令の改正について、菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、禁輸措置ではなく、他のアジア各国と同様の扱いに戻すものだとしたうえで、世界のサプライチェーンに影響を与えることはないという認識を示しました。

そして、菅官房長官は「あくまでも、韓国の輸出管理制度や運用に不十分な点があることを踏まえて、輸出管理を適切に実施するための運用の見直しであり、日韓関係に影響を与えることは意図しておらず、ましてや対抗措置ではない」と述べました。

また、韓国のカン・ギョンファ(康京和)外相が今回の日本政府の決定をめぐり、対抗措置をとる可能性に言及していることについて、菅官房長官は「わが国の一貫した立場に基づき引き続き、韓国側に適切な対応を強く求めていく考えに変わりない」としたうえで、両国間の懸案について議論を進めていく考えを示しました。

麻生財務相「べつに売らないと言ってない」

麻生副総理兼財務大臣は閣議のあとの記者会見で「輸入したものをちゃんと消費しているか、どこかへ流出していないかというような話を、韓国がきちんと説明できないといけない。そういった意味で『きちんとしたものにしてください』という話であって、べつに『売らない』と言っているのではない。ちゃんと明らかにしてもらえばいいだけの話だ」と述べました。

岩屋防衛相「GSOMIAは重要」

岩屋防衛大臣は閣議のあとの記者会見で、韓国内で日本と韓国が締結している安全保障上の機密情報を共有・保護するための協定=GSOMIAの破棄を求める声が出ていることをめぐり、「協定は地域の平和と安全に寄与するものだ。北朝鮮のミサイル等の発射事案が続くなか、なおさら重要だと思っており、行うべき連携はしっかりとやっていきたい」と述べました。

そのうえで岩屋大臣は「韓国側には大局的な判断をして頂けると期待している」と述べました。

柴山文科相「草の根レベルの交流続けるべき」

柴山文部科学大臣は記者会見で「青少年の交流事業もいくつか中止や延期の連絡があるということは承知している。文部科学省としては、日韓両政府の関係が困難な状況にあっても、将来のために相互理解の基盤となる青少年交流や自治体間の交流は草の根レベルでの取り組みとして続けていくべきだ」と述べました。

立民 福山氏「対話と議論求める」

立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し「日韓関係の悪化が安全保障などに影響を与えようとしていることを、非常に憂慮している。日本政府の説明に一定の理があると判断しているが、日韓関係は非常に重要なので、両政府に対し、対話と透明性の高い議論を真摯(しんし)に行い、事態の悪化が進まないよう求めたい」と述べました。

公明 斉藤氏「話し合いのチャンネル維持を」

公明党の斉藤幹事長は記者団に、「政府の対応を支持する。韓国には安全保障上の輸出管理をしっかり行う体制を作ってもらいたい。今回の措置はあくまでも貿易管理のルール上の問題で、日韓関係が悪いこととは直接関係ないが、日韓の間に横たわっている問題について、解決に向けた話し合いのチャンネルをこれからも維持していくことが大事だ」と述べました。

共産 志位氏「撤回して冷静な話し合いを」

共産党の志位委員長は「『徴用工』問題という政治的紛争を解決する手段として貿易問題を使うのは、政経分離に反する道理のないものだ。閣議決定を強行したことは極めて遺憾であり、撤回し、韓国政府との冷静な話し合いにより解決を図ることを求める」という談話を発表しました。

維新 松井氏「安全保障上 見直し当然」

日本維新の会の松井代表は記者団に「韓国が貿易管理の責任を放棄していることに対して、日本の安全保障上、ホワイト国から除外するのは当然だ。隣国なので、ある程度の情もあるから今まで特別扱いしていたのだろうが、やはり安全保障に大きな懸念が出る場合に見直すのは日本国民を守るために当然だ」と述べました。

社民 吉川氏「報復の連鎖は両国にマイナス」

社民党の吉川幹事長は「報復の連鎖は両国にとってマイナスにしかならず、これ以上深刻化させてはならない。『徴用』をめぐる問題の政治的対立の解決のために貿易上の措置で報復するのは適切とは言えない。両国政府に対し冷静かつ賢明な対応を求め、対話を開始するよう求める」という談話を発表しました。

韓国メディアも速報

韓国のメディアは相次いで速報で伝えました。

公共放送のKBSは、日本の閣議に合わせて午前10時から特別番組を放送し、総理大臣官邸前からの中継も交えて日本の動きを細かく伝えています。

そして「韓国の中小企業は代わりの輸入元を探すなど、難しい状況になる。韓国だけでなく、日本側も被害を受けることになるだろう」と伝えています。

韓国の通信社、連合ニュースは「韓国側も、日韓両国の安全保障上の機密情報を共有・保護するための協定の「GSOMIA」の中断を検討するなど強い対応をする方針で、両国の関係は1965年の国交正常化以降最悪の局面に進みそうだ」としています。