導体などの原材料
韓国への輸出規制強化

政府は、韓国に対する輸出の優遇措置を見直し、半導体や軍需物資の製造などに使われる原材料について輸出の規制を強化します。「日韓の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるをえない状況だ」としていて、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などが背景にあると見られる異例の措置です。

経済産業省は、韓国に対して、安全保障上の友好国に与えている輸出管理の優遇措置を見直す方針を発表しました。

合わせて、高純度のフッ化水素、フッ化ポリイミド、それにレジストの3品目について輸出の際の規制を強化します。

これらの3品目は主に半導体などの製造に使われますが、軍需物資の製造にも使うこともできることから、手続きを簡素化していたこれまでの韓国への優遇措置を改め、今月4日からは輸出ごとに許可の申請が必要になります。

経済産業省によりますと、3品目はいずれも世界で日本企業のシェアが高く、韓国の大手メーカーも多く使用していて、今後は審査に時間がかかり韓国メーカーの生産に影響がおよぶとみられます。

日韓関係をめぐっては、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、日本政府は第三国を交えた仲裁委員会の開催を求めていますが、韓国側は応じておらず、日本政府は国際司法裁判所への提訴や対抗措置の実施なども検討する構えを見せています。

今回の規制強化について、経済産業省は、「日韓の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるをえない状況だ。信頼関係のもと、輸出管理に取り組むことが困難になっている」としていますが、対抗措置ではないとしています。

ただ、輸出管理上の優遇措置を見直すことは異例で、「徴用」をめぐる問題などが背景にあるとみられます。

韓国輸出規制の3品目とは

今回、輸出の規制が強化されるのは「高純度のフッ化水素」、「フッ化ポリイミド」、それに「レジスト」の3品目です。

メーカーなどによりますと、これらはデジタル家電向けの半導体の製造などに広く使われています。

このうち、「高純度のフッ化水素」は、半導体の基板を洗浄するのに使われ、「フッ化ポリイミド」は、テレビやスマートフォン向けの有機ELディスプレーなどに使われるということです。

また、「レジスト」は、半導体の基板に塗る感光液として、使われています。

関係者によりますと、「フッ化ポリイミド」と「レジスト」の2つの品目については、世界の生産量のうち日本企業が9割、「高純度のフッ化水素」は、およそ7割を占めると推計され、いずれも日本のシェアが極めて高くなっています。

輸出の優遇措置「ホワイト国」とは

安全保障上の友好国として輸出管理の優遇措置を与えられているのは、「ホワイト国」と呼ばれています。

外国為替法に基づいて、相手国との輸出が適切に管理できているとする国を経済産業省が政令で指定しています。ホワイト国は現在、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなど27か国に上ります。

ホワイト国に認定されれば安全保障上の脅威になるような先端技術などを輸出する際にも、優遇措置を受けて手続きが簡素化されます。

韓国は2004年に指定されましたが、経済産業省は韓国を外す方針で、今月24日まで一般に意見を募ることにしています。

日本はこれまでホワイト国の指定を見直したことはなく、韓国が除外されれば初めてのケースになります。

そして、実際に除外されると、今回の3品目に加えて、一部の工作機械や特殊な金属などほかの輸出品目にも規制強化の対象が広がることになります。