トランプ大統領 キム委員長
3回目会談 韓国大統領も

南北の軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)の韓国側の施設で行われていたトランプ大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長による3回目の首脳会談は終了しました。会談は50分余り行われました。
韓国メディアは、最初にトランプ大統領とキム委員長の会談が行われたあと、ムン・ジェイン(文在寅)大統領が合流し、史上初めて、アメリカ、韓国、北朝鮮の3か国の首脳が同じ場で面会したと伝えました。
米朝で交渉チーム設置 合意
トランプ大統領は、キム委員長と3度目の首脳会談のあと、韓国のムン大統領とともに報道陣の取材に応じ、「とてもいい会談だった。両国で交渉のチームを設置することで合意した。このチームが交渉の詳細を詰めていく。早く交渉をまとめることよりも包括的でよい合意を達成できるかどうかだ」と述べました。
そして「交渉チームは、これからの2~3週間で何ができるか、またはできないのか見極めることになる。チームはこれから数週間で会合を開き、動き出すだろう。」と話しました。
トランプ大統領「この2年半 とても平和だった」
さらにトランプ大統領は「私が就任した2年半前はとてもひどい状況だったが、この2年半とても平和だった。われわれの関係に基づき、何の兆候もなかった」と述べました。
ムン大統領「よい成果が目前に迫っている」
韓国のムン大統領は、トランプ大統領とキム委員長との会談のあと「トランプ大統領の大胆な提案で歴史的な出会いが成り立った。きょうの出会いを通じ、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和を構築するためのプロセスが大きなヤマ場を越えたと考える。全世界と南北の民族に大きな希望を与えた」と述べました。
そのうえで「早い時期に実務交渉に入ることに合意しただけでも、よい成果が目前に迫っていると考える」と述べ、今後に期待を示しました。
軍事境界線でキム委員長を見送る
会談を終えたトランプ大統領とキム委員長は、韓国のムン大統領とともに施設を出たあと、歩いて軍事境界線に向かい、午後4時53分ごろ、キム委員長と別れました。
軍事境界線で歴史的握手 でも非核化は…
かつて朝鮮戦争で戦い、長年対じしてきたアメリカと北朝鮮の首脳が軍事境界線で会い、握手するというのは、戦争から平和へという流れを印象づける非常に象徴的な意味があります。
歴代のアメリカ大統領は、近年はほぼ全員が南北の非武装地帯を訪問してきましたが、いずれも北朝鮮の脅威に対じするうえで米韓同盟の結束を訴えるためのものでした。
ところが今回は、これとは全く異なり、米朝の融和と対話のムードを印象づけることにねらいがあります。これは、キム・ジョンウン(金正恩)委員長との関係をつなぎとめたいトランプ大統領の強い意向のあらわれと言えます。
トランプ大統領は30日、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領との記者会見で「2年前は核実験が繰り返され、弾道ミサイルが相次いで発射されていたが、今はそれがなくなった」と述べ、この2年間で北朝鮮の情勢が大きく変わったのは自分の成果だと強調しました。
トランプ大統領としては、キム委員長と会談し良好な関係を維持することで、挑発行為を控えるよう暗に促すねらいもあります。
ことし2月にベトナムで行われた2回目の米朝首脳会談以降、非核化交渉は暗礁に乗り上げ、アメリカ政府の間には、米朝の関係が悪化すれば北朝鮮が再び挑発行為に出るのでは、という見方があります。
万が一、北朝鮮が挑発行為に戻れば、来年秋に大統領選挙を控えるトランプ大統領としては、みずからの成果を否定されかねない、という危機感もあるとみられます。
ただ、肝心の非核化交渉がこれで進展するかどうかは別問題です。会談した時間は短時間で、実質的に非核化について話を深める時間はなかったとみられます。非核化の進め方や制裁の解除をめぐる両者の立場には依然大きな開きがあり、今回の面会を経ても、今後、米朝の協議が大きく進展するかどうかは見通せない状況です。
トランプ大統領「今すぐキム委員長をホワイトハウスに」
トランプ大統領は、キム委員長との3回目の首脳会談のあと、報道陣から「キム委員長をアメリカに招待したのか」と問われると「そうだ。いずれかの時期に、物事がうまく進めばそうなるだろう」と述べ、今後の状況次第で招待することもあり得るとの考えを示しました。
そのうえで、「きょうは大きな一歩だった。とても長い話し合いができ、前向きな一日となった。きょうの出来事は韓国にとっても、北朝鮮にとっても、世界にとっても良いことだった」と述べ成果を強調しました。
韓国大統領府「戦争ない世の中のため 全力を結集」
韓国大統領府は、トランプ大統領とキム委員長との3回目の首脳会談に関連して声明を発表し、「きょうの南北米3首脳の出会いは歴史となった。立ち止まっていた米朝交渉にも弾みがつくと期待する。トランプ大統領とキム委員長の真摯(しんし)な努力を評価する」としています。
そのうえで「朝鮮半島の平和のための大胆な道のりが良い結果を結ぶよう、ムン大統領も最善を尽くしている。戦争のない世の中のために、すべての力を結集することを願う」として、韓国政府としても支援していく姿勢を示しました。
韓国市民 期待も心配も
トランプ大統領とキム委員長が会談したパンムンジョムから9キロほど離れた韓国側の統一大橋の入り口は、韓国軍の兵士が厳重に警備していました。
大勢の市民が集まり、米朝首脳会談のニュースが伝えられると、橋の向こうを熱心に眺めていました。
50代の韓国人男性は「トランプ大統領を一目見られるかと思って来ました。トランプ大統領とキム委員長、ムン大統領の間で対話が進み、平和になればいいと思う」と述べ、期待を示しました。
一方で30代の韓国人男性は「一時的に関係が改善するようなことはこれまでにもあった。今回の会談が一時的な盛り上がりとして終わるのではないかと心配している」と話していました。