日ロ共同記者発表
安倍首相発言 全文

親愛なるプーチン大統領。改めて大統領の訪日を歓迎します。ここ大阪市は、君の故郷であるサンクトぺテルブルク市の姉妹都市であり、また君がサンクトペテルブルグ副市長だった時に訪れた町です。大統領にはゆかりの深いこの場所で、迎えられたことをうれしく思います。

先ほど、北極LNG2への日本企業の参加が正式に決定しました。ロシアが進める北極地域の開発と、わが国のエネルギー安定供給に貢献する協力が成立したことを歓迎します。また、ハバロフスクに日本の経験と技術を生かした予防医療診断センターを設立するため、日ロ双方が投資を決定しました。

私が8項目の協力プランを提案して以来、3年間で200を超えるプロジェクトが生み出されており、今後ともこのような互恵的な協力をさらに拡大していきます。

2023年までに、相互訪問者をそれぞれ少なくとも20万人、計40万人にするという目標を、日ロで共有しました。経済関係をより緊密にし、地方間や大学間など、さまざまな交流を増やしていきたいと思います。そして、大成功のうちに閉幕した、「日ロ交流年」の閉会式の場で、私から史上初めてとなる「日ロ地域交流年」を来年から開始することを発表しました。

大阪市とサンクトペテルブルク市は来年で姉妹都市40周年を迎えます。こうした交流が一層深まることはもちろん、両国の新たな交流が各地で生まれていく事でしょう。さらに日ロ間の交流を一層後押しするものとして、9月から8項目の協力プランに関与するロシア企業関係者などを対象に、新たに査証緩和を行います。これはロシアのみを対象とした措置です。またロシアの465校の大学生などを対象とした査証手続きの簡素化を決定しました。両国関係の次世代を担う若者の交流の拡大を後押しします。

先月末の日ロ2+2をはじめ防衛当局間、海上警備当局間で、さまざまな交流が行われており、安全保障分野でも両国の信頼醸成が深まっていることを歓迎します。また、日ロ両国は麻薬、サイバー、マネーロンダリングといった、非伝統的かつグローバルな課題への対応でも、協力を進めていきます。

私とプーチン大統領は、2018年11月にシンガポールにおいて共に表明した、1956年共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させるとの決意のもとで、精力的に平和条約交渉が行われていることを歓迎し、引き続き、交渉を進めていくことで一致しました。また、本日、長門で表明した平和条約問題を解決する、みずからの真摯(しんし)な決意を改めて確認し、四島における共同経済活動の実施に向けた進展を歓迎することで一致しました。これを日ロ双方で合意した文書として発表します。

四島における共同経済活動については、プロジェクトの実施に向けた作業が活発に行われています。本日、プーチン大統領とは観光およびごみ処理の2件のビジネスモデルに一致し、これらについて本年秋にも、観光パイロットツアーや、日ロのごみ処理の専門家の往来などのパイロットプロジェクトを実施することで一致しました。また、共同経済活動の実施のための人の移動の枠組みや法的課題について、議論が深まっていることを歓迎します。

元島民の方々のための人道的措置についても、着実に協力を進めています。プーチン大統領との間で、本年の航空機墓参を8月または9月に実施することで一致しました。昨年11月のシンガポールでの首脳会談での合意以降、かつてない頻度で平和条約交渉が行われています。本日は、私とプーチン大統領との間でこうした交渉の経過や今後の展望を含め、率直に議論を行いました。

戦後70年以上残された困難な問題について、立場の隔たりを克服するのは簡単ではありません。しかし、乗り越えるべき課題の輪郭は明確になってきています。私とプーチン大統領は、日ロ関係強化の戦略的重要性と平和条約締結が、それを、大きく、後押しすることを誰よりも深く理解しています。

そのために、着実に歩みを進めていかなければなりません。それを、可能にするのは私とプーチン大統領の強い決意です。そのことを本日、プーチン大統領との間で確認をしました。日ロ両国は、私とプーチン大統領との間で引き続き着実に前進していくことができると信じています。ありがとうございました。スパシーバ。