ンカー攻撃「間違いなく
イランが行った」米大統領

中東のホルムズ海峡付近で2隻のタンカーが攻撃を受けたことについて、アメリカのトランプ大統領はアメリカ軍が公開した映像から「イランが行ったのは明らかだ」と述べ、関与を否定するイランとの溝がさらに深まっています。

中東のホルムズ海峡付近のオマーン湾を航行していた2隻のタンカーが攻撃された事件について、アメリカはイランが行ったものだとして非難し、イランの「革命防衛隊」が爆弾を取り外す様子をとらえたとする映像を公開しました。

トランプ大統領は14日、アメリカのテレビ番組「FOX・アンド・フレンズ」の電話インタビューで、イランの攻撃とした理由を聞かれたのに対し「間違いなくイランが行ったものだ。映像にボートが映っていた」と述べ、公開した映像などからイランの攻撃だったのは明らかだと強調しました。

イランは攻撃への関与を全面的に否定し、アメリカ側の見方に対しても「事実や状況に基づく証拠は全くない」と批判しています。

核合意の対応などをめぐって緊張が続く両国の溝はさらに深まっています。

一方でトランプ大統領は14日、安倍総理大臣との電話会談でイランとの対話の努力に感謝の意を伝えるとともに、今回の事件の背景についても意見を交わしたとしています。

船舶の位置情報を公開しているウェブサイト「マリントラフィック」によりますと、日本時間の15日午前7時現在、2隻のタンカーはいずれもオマーン湾の海上にあり、東京の国華産業が運航する「コクカ・カレイジャス」はおよそ100キロ先のUAE=アラブ首長国連邦の港に向けて自力で航行し、ノルウェーのタンカー「フロント・アルタイル」は、えい航先のイラン南部の港までおよそ300キロの距離にあります。

英外相もイラン関与は「ほぼ間違いない」

イギリスのハント外相は、14日、声明で「民間の船を標的にすることは国際規範に違反する」と非難しました。

そして国家が関与しなければできない攻撃だとし、イランの革命防衛隊が関係する組織の攻撃であることは「ほぼ間違いない」と結論づけたとしています。

そのうえで「イランは地域の不安定化を招くあらゆる行為を直ちにやめるべきだ」とし、イギリスは国際社会と協力して緊張緩和の方策を模索していくとする姿勢を強調しました。

EU「必要なのは緊張でなく安定」

EU=ヨーロッパ連合の報道官は14日の記者会見で、「情報の収集と状況の分析を進めている。これまでも言ってきたとおり、地域の緊張ではなく安定が必要だ」と述べ、事件にどの国が関与しているのかについては慎重に見極める必要があるとする考えを示しました。

そのうえで来週行われる加盟国の外相会議で、今回の事件について議論することになるという見通しを示しました。

EUはイランの核合意を仲介したいきさつがあることから、アメリカが離脱したあともイランを核合意の枠組みにとどめたいと考えていて、今回の発言もイランを刺激することを避けるねらいがあるものとみられます。

ロシア「性急な結論控えるべき」

ロシア外務省は14日、コメントを発表し、攻撃を受けたタンカーのうち「フロント・アルタイル」からロシア人の乗組員11人が無事救出されたことについて「救出を支援してくれたイラン当局に感謝する」と謝意を示しました。

そのうえで「その背後に誰がいようと、今回の攻撃を断固として非難する」としています。

しかし、その一方で誰が攻撃したかについては「性急な結論は控えるべきだ。徹底的かつ公正な国際調査が終了するまで、誰かを責めることはあってはならない」とコメントし、イランが関与したとするアメリカなどの見方は根拠に欠けると、暗に批判しています。

フランスは立場示さず

フランスの外務省は14日、コメントを発表し、イランが関与したとするアメリカなどの見方について「早急に何が起きたか明らかにしなければならない」と述べるにとどめ、立場を示しませんでした。

そして「一連の事件はすでにこの地域で高まる緊張をさらに強めるものだ。すべての関係国に自制と緊張の緩和を図るよう訴える」と述べて関係国に幅広く冷静な対応を呼びかけています。

国連は安保理の独立した調査に期待

国連のグテーレス事務総長は「タンカー攻撃の責任が誰にあるのか明確にしなければならない。真相解明は独立した機関によって初めて可能になる」と述べて、安全保障理事会が調査機関の設立に向けて協議を始めることに期待を示しました。

これはグテーレス事務総長がニューヨークの国連本部で14日、アラブ連盟のアブルゲイト事務総長と行った共同記者会見で述べたもので、アメリカ側の情報だけで判断すべきではないという立場を示したものともなります。

また、「全面的な衝突は何としても避けなければならない。私は常に調停に乗り出す準備がある」として、アメリカとイランの仲介に前向きな姿勢を示す一方で、「現時点で対話のメカニズムは見えない」とも述べ、両国の対立が深まっていることに強い懸念をにじませました。