国「関税の引き上げは
いかなる問題も解決できず」

アメリカが中国からの輸入品に対する関税を今月10日に大幅に引き上げる方針を明らかにしたことについて、中国外務省は「関税の引き上げはいかなる問題も解決できない」とけん制し、今月9日からワシントンで行う閣僚級の交渉で貿易摩擦の解消に向けて対話を進める姿勢を示しました。

アメリカの通商代表部は6日、中国からの2000億ドルの輸入品に対する関税を今月10日に引き上げる方針を明らかにし、ライトハイザー通商代表はアメリカのメディアに対し、先週の交渉で「中国がこれまでの合意内容を覆した」と批判しています。

これについて中国外務省の耿爽報道官は7日の記者会見で、「平等で双方にメリットがあることが合意の前提であり、関税の引き上げはいかなる問題も解決できない」と述べ、アメリカをけん制しました。

会見に先立って中国政府は今週9日からワシントンで行われる閣僚級の交渉に劉鶴副首相が出席すると正式に発表しました。

耿報道官は「交渉を行う中で双方に意見の違いがあるのは正常なことで、中国は問題を回避せず誠意を持って継続して協議していく」と強調しました。

中国はこれまでのところアメリカに対する強い批判を抑えていますが、アメリカが実際に関税を引き上げた場合、中国もアメリカからの輸入品の関税を引き上げる報復措置に踏み切るとみられ、貿易摩擦が再び激しくなるおそれもあります。

対立激化の背景と今後の焦点

アメリカのトランプ大統領は去年12月に行った中国の習近平国家主席との首脳会談で中国からの2000億ドルの輸入品への関税引き上げを一時棚上げすることを決め、貿易摩擦の解消を目指して交渉を続けてきました。

それ以来、トランプ大統領は繰り返し、「交渉は順調だ」と述べてきましたが今月5日、一転して、「交渉は遅すぎる」とツイッターに投稿して態度を一変させました。

理由についてアメリカ側は北京で先週1日まで開かれていた閣僚級の交渉で、中国の交渉姿勢に変化があったためと説明しています。

ライトハイザー通商代表はアメリカのメディアに対し先週の交渉で、「中国はこれまでの合意の内容を覆した」として、厳しく批判しました。

また中国との交渉が順調だとしてきたムニューシン財務長官も「先週末にかけて大きく後退した」としています。

一部の報道では中国に進出するアメリカ企業に対し、中国側は技術移転の強制を禁止する方向でいったん合意したのに、合意を撤回したと伝えられています。

このため2人は、今回の関税引き上げの方針は交渉を有利に進めるための「脅し」ではなく、交渉の行方に大きな懸念が生じたためだと説明しています。

一方、今後の焦点は、アメリカがこれまでに中国からの輸入品に上乗せしている関税を交渉が決着したあとも維持するかどうかについてです。

アメリカは一部の関税は交渉決着後も、合意が確実に実行されていると確認できるまで解除しない方針を示しているのに対し、中国は決着後は直ちにすべての関税を撤廃することを求めていて、溝が埋まっていません。

またアメリカが問題視している中国政府の国有企業に対する優遇措置の見直しでも、折り合いがついていません。

これらの焦点に中国が今回、合意内容を撤回したと言われる技術の強制移転の問題も加わって、交渉の道のりは険しくなっています。