位継承儀式 パレードは
「センチュリー」で

ことし春の皇位継承に向けて、政府の式典委員会は、国事行為として行う儀式の次第概要などを決定し、4月30日の天皇陛下の退位と、翌5月1日に新天皇が初めて国民の代表に会う儀式の参列者は、衆参両院の議長など三権の長や地方公共団体の代表など330人余りとなりました。また10月の祝賀パレードで使用する車は、「トヨタ自動車」の「センチュリー」とすることが決まりました。

ことし春の皇位継承に向けて、政府は17日、式典委員会の会合を開き、憲法の定める国事行為として行う儀式の次第概要などを決定しました。

それによりますと、憲政史上初めて行われる天皇陛下の退位の儀式「退位礼正殿の儀」は4月30日の午後5時から5時10分までの予定で皇居・宮殿の「松の間」で行われます。

また新天皇が歴代天皇に伝わる剣や曲玉(まがたま)などを受け継ぐ「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」は翌5月1日の午前10時半から、それに続き新天皇が即位後初めて国民の代表に会う「即位後朝見の儀」は午前11時10分から、皇居・宮殿の「松の間」で、それぞれ10分の予定で行われます。

このうち「剣璽等承継の儀」で天皇陛下に「供奉(ぐぶ)」、つまり付き従う皇族は、前回と同様に成年の男性皇族のみとしています。

一方、参列者は男女の区別なく総理大臣など三権の長や国務大臣など26人としていて、憲政史上、初めて女性も参列する見通しとなりました。

また「退位礼正殿の儀」と「即位後朝見の儀」の参列者は三権の長、国務大臣、地方公共団体の代表など330人余りとするほか、5月1日には各府省庁で国旗を掲揚するとともに、地方公共団体、学校、企業などにも国旗掲揚の協力を求めるとしています。

一方、新天皇が即位を内外に宣言する儀式「即位礼正殿の儀」が行われる10月22日に実施されるパレード「祝賀御列の儀」で使用する車は、安全性や環境性能などを考慮して「トヨタ自動車」の「センチュリー」のオープンカーとすることが決まりました。

さらに「即位礼正殿の儀」の翌日の10月23日に、総理大臣夫妻の主催で開かれる晩さん会は、各国の要人を含むおよそ900人の参列者をもてなす接客や設備が必要だとして、東京 千代田区のホテルニューオータニで開催することになりました。

このほか、来月24日に東京 千代田区の国立劇場で開かれる天皇陛下の在位30年の記念式典の細目も決定し、福島県の内堀知事などが国民の代表としてあいさつするほか、歌手の三浦大知さんが、天皇陛下が作詞され皇后さまが作曲された歌を歌うことになりました。

会合の中で、菅官房長官は、来月24日に天皇陛下の在位30年の記念式典が開かれることを踏まえ、次回会合は3月をめどに開催する考えを示しました。
次回会合では「退位礼正殿の儀」などの、さらに詳細な内容などについて協議を行うということです。

首相「引き続きつつがなく整然と行われるよう検討」

安倍総理大臣は、式典委員会の会合で「きょう、次第概要と参列者を決定したが、引き続き、各式典が、つつがなく整然と行われるよう精力的に検討を進めていく」と述べました。

官房副長官「未成年皇族参列されないこと 踏襲が適当」

式典委員会の会合で、杉田官房副長官は「『剣璽等承継の儀』で女性皇族が供奉されないことは、基本方針を決定した式典準備委員会で確認している。各式典で、未成年の皇族が参列されないことについても踏襲することが適当だ」と述べ、各式典に出席する皇族は、前例を踏襲して成年に限ることが望ましいという認識を示しました。

パレードの車 決定の経緯

パレードで使用する車について、政府は、平成への代替わりの際に使った、イギリスのロールス・ロイス社製のものが廃車となっていたことから、前回の式典委員会の会合で、安全性や環境性能に優れ、沿道から様子が見やすく、他の行事でも使うことを前提に、新たにオープンカーを調達することを決めました。

そして新年度予算案などに取得費用として8000万円を計上し、皇位継承式典事務局で選定を進めてきました。

そして事務局では、国内外の自動車メーカー6社に提案を打診しました。
その結果、
▽トヨタ自動車からは「センチュリー」、
▽日産自動車は「シーマ」、
▽ホンダは「レジェンド」、
▽イギリスのロールス・ロイス社は「ドーン」、
▽ドイツのメルセデス・ベンツは「S560カブリオレ」の提案がありました。
一方、ドイツのBMWからは提案がありませんでした。

これを踏まえ、事務局では、試験走行などを行ったうえで、儀式までに余裕を持って確実に納車される見込みがあることや、良好な整備・保守サービスを継続的に受けることができる体制が整えられていることなどを考慮して、最終的に「センチュリー」をオープンカーに改造することが適していると判断し、式典委員会も了承しました。

新しいオープンカーは、ことし9月に納車される予定だということです。

儀式で着用する服装も決定

式典委員会では、それぞれの儀式で着用する服装も決定されました。

このうち4月30日の「退位礼正殿の儀」では、男性は、黒無地のモーニングコートか紋付羽織はかま、またはこれに相当するものとしています。
女性は、ロングドレスやワンピースなどのデイドレス、白襟紋付き、またはこれに相当するものとしています。

一方、翌5月1日の「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」では、男性はえんび服や紋付羽織はかま、またはこれに相当するものとしていて、モーニングコートも認めるとしています。女性はロングドレス、白襟紋付、またはこれに相当するものとしています。

そして「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」では、勲章の受章者は着用するとしています。

政府関係者は、モーニングコートはえんび服より略式な服装だとしたうえで、えんび服では勲章をつけるものの、モーニングコートや和装では勲章を着用しないのが一般的だと話しています。

また、総理大臣の服装は、天皇陛下に合わせて決定される見通しです。

憲政史上初の女性参列

憲政史上初めて女性が参列することになった「剣璽等承継の儀」は、戦前の大日本帝国憲法下では「剣璽渡御の儀」という名称で、大正と昭和への代替わりの際に行われました。ただ、明治への代替わりの際は行われなかったということです。

大正への代替わり以降、儀式の際に新天皇に「供奉」、つまり付き従う皇族は今回と同様に、成年の男性皇族にかぎられました。

一方、三権の長など儀式の参列者は、男性に限定する明確な規定はなかったものの、女性の閣僚などがいなかったこともあって、大正への代替わり以降、女性が参列したことはないということです。

宮内庁長官「粛々と静かに執り行うのが適当」

式典委員会の会合で、山本宮内庁長官は「退位礼正殿の儀」での服装について、「退位の儀式は、いわばお見送りの場としての性格を有していることから、粛々と静かに執り行うのが適当だ。服装は、こうした趣旨を踏まえ、親任式にも用いられるような格式の高さと、えんび服とは異なり勲章などを着用せずにおめしになられるといった簡素さを併せ持つ、モーニングコートなどが適当だ」と述べました。

また、「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」での服装については「前回と異なり、前の天皇の崩御の直後に行われる儀式ではないため、服装は、毎年、元日に行われる慶事の『新年祝賀の儀』などと同様に、えんび服などとすることが適当だ」と述べました。

法制局長「政教分離の原則に反しない」

式典委員会の会合で、横畠法制局長官は「平成のお代替わりに伴って行われた式典は、昨年4月に閣議決定された基本方針にもあるように、現行憲法下において十分な検討がなされたうえで行われたものである」と述べました。

そのうえで、「剣璽等承継の儀」について「国事行為として行われるものであり、もとより宗教的意義を有するものではなく、憲法の定める象徴天皇の制度に沿うもので、政教分離の原則に反するものではない」と述べました。

また、退位礼正殿の儀について、「『剣璽等承継の儀』や『即位礼正殿の儀』と同様に、皇位とともに伝わるべき由緒あるものである剣璽や国璽、御璽を安置することに憲法上の問題はない」と述べました。