取受けたが不正ないと
説明」JOC竹田会長

フランスの裁判所がJOC=日本オリンピック委員会の竹田恒和会長について、来年の東京オリンピック・パラリンピックの招致をめぐる汚職に関わった疑いで、起訴するかどうかを判断するための手続きを始めたことが分かりました。

これはフランスの検察当局が11日、NHKの取材に対して明らかにしたものです。

それによりますと、JOCの竹田恒和会長について来年の東京オリンピック・パラリンピックの招致をめぐる汚職に関わった疑いで、フランスの裁判所が先月10日に、起訴するかどうかを判断するための手続き、「予審手続き」を始めたということです。

この日に予審判事がフランスで竹田会長本人を聴取したということで、今後も竹田会長の聴取を続ける見通しだとしています。

竹田会長をめぐっては、オリンピックの招致に絡んでフランスの検察当局が贈収賄などの疑いで少なくとも2016年から捜査していました。

具体的には、国際陸上競技連盟の前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの会社に、およそ2億2000万円が振り込まれていたことをめぐる捜査でした。

これについてJOCは「招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかった」とする調査結果を発表していました。

今回の「予審手続き」についてフランスの有力紙、ルモンドはこのシンガポールの会社への支払いが汚職の疑いにあたると伝えています。

フランスの「予審手続き」とは

フランスの「予審手続き」とは、検察の請求に基づき裁判所が容疑者を裁判にかけるかどうか審査する手続きです。

フランスでは「重大」または「複雑な」事件が起きた場合、検察による捜査の結果を受けて裁判所の予審判事が容疑者から話を聞いたり、証拠を精査したりして、犯罪の十分な証拠があるかどうか審査します。

予審判事は審査の過程で必要に応じて容疑者の身柄を拘束できるほか、捜索や押収、証人の尋問を行えるなど強力な権限を持っています。

審査の結果、犯罪の十分な証拠があると判断された場合には裁判が開かれますが、証拠が十分でなかったり、犯罪の疑いなしと判断されれば手続きは打ち切られて免訴され、裁判は開かれません。

竹田会長「聴取は事実 否定した」

竹田会長は「東京2020年招致活動に関し、その調査協力として担当判事のヒヤリングをフランス・パリにて受けました。招致委員会はコンサルタント契約に基づき正当な対価を支払ったものであり、贈賄にあたるような不正なことは何も行っていないことを私は説明いたしました。ヒヤリングにおいて新しい事実が判明したというようなこともありませんでした。東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてご支援いただいている国民の皆様に大変ご心配をおかけしておりますが、私は疑念を払拭(ふっしょく)するために、今後とも調査に協力するつもりです」とするコメントを発表しました。

竹田会長 五輪・パラ誘致で中心的役割

竹田会長は71歳。
馬術の選手としてオリンピックには1972年のミュンヘン大会と次のモントリオール大会に出場しました。

その後、JOCで選手強化などに携わり、常務理事を経て2001年から会長に就任し、2012年からはIOC=国際オリンピック委員会の委員も務めてきました。

東京オリンピック・パラリンピックの招致では当時の招致委員会トップの理事長を務めるなど中心的な役割を果たしました。

おととしにも任意で事情聴取

JOCの竹田会長をめぐっては、東京オリンピック・パラリンピックの招致に絡んでフランスの検察当局が贈収賄などの疑いで捜査に乗り出し、おととしにはフランスの要請に基づいて、東京地検特捜部が、竹田会長をはじめ招致委員会の関係者から任意で事情を聴いたことも明らかになっています。

具体的には、日本の銀行口座から、国際陸上競技連盟の前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの会社に、日本円でおよそ2億2000万円が振り込まれていたことをめぐる捜査でした。

これに関して竹田会長は「フランスの捜査に協力するということで、話をした。JOCの調査結果を話しただけだ」などと説明しました。

またJOCは「招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかった」とする調査結果を発表していました。

東京五輪・パラ組織委「コメント差し控える」

竹田恒和会長が副会長を務めている東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は「報道で初めて知ったので詳しい状況は分からず、この件についてのコメントは差し控えたい」としています。

小池東京都知事「動向見守る」

東京都の小池知事は都庁内で記者団に対し、「先ほど、第1報を伺っただけで、情報を十分に持ち合わせていない。今後、情報収集をしていきたいが、大変驚いている。困惑しており、今後の動向を見守っていきたい」と述べました。

また、来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックへの影響を問われたのに対し、「いま、何が、どういう形で行われているのか、確認をしていきたい。まず、そのことから始めたい」と述べました。

五輪招致をめぐる疑惑と経緯

2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致をめぐっては、WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会がロシアの一連の組織的なドーピングを調査していた中で、2016年1月、日本側が国際陸上競技連盟などに多額の協賛金を支払ったと疑惑が持ち上がりました。

その後、フランスの検察当局が捜査を開始し、5月には、日本の銀行口座から国際陸連のラミン・ディアク前会長の息子に関係すると見られるシンガポールの会社に、東京大会招致を名目に2回に分けて合わせておよそ2億2000万円が振り込まれたとして、贈収賄の疑いで捜査していると公表しました。

検察当局は、東京が開催都市に選ばれた2013年9月、ディアク前会長がIOC=国際オリンピック委員会の委員を務めていたため開催地の決定に影響力を行使できる立場にあった、と指摘していました。

一方、当時、招致委員会の理事長を務めていたJOCの竹田会長は振り込みを認めたうえで「招致計画づくり、ロビー活動など多岐にわたる招致活動のコンサルタント料で、正式な業務契約に基づく対価として行ったものだ。なんら疑惑をもたれるような支払いではない」などと主張していました。

そのうえでJOCは、シンガポールの会社との契約に違法性がなかったどうかを調べるため、弁護士2人と公認会計士1人からなる調査チームを5月25日に設置し、調査チームは契約に関わった当時の招致委員会のメンバーから聞き取りを行ったり、会社の実態をシンガポールで調べたりして、違法性の有無や実態解明につとめてきました。

そして調査チームは9月に調査結果を報告し、当時の招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかったと結論づけた一方で、手続きの透明性に問題があったと批判していました。