マイナンバートラブルさらに相次ぐ 岸田首相は陳謝

総務省は、地方公務員の年金などを運営する「地方職員共済組合」で、マイナンバーカードの取得者向けの専用サイト、「マイナポータル」を通じて、他人の年金情報を閲覧できるトラブルが1件確認されたと発表しました。

総務省によりますと、年金情報が閲覧できるトラブルがあったのは、地方公務員の年金などを運営する「地方職員共済組合」で、「マイナポータル」を通じて、元組合員の年金記録をほかの人が閲覧できた事案が1件確認され、先週、国に報告があったということです。

「マイナポータル」では、マイナンバーと年金情報がひも付けられていて、ログインすると、保険料を支払った期間や、受け取れる年金の見込額などが確認できるようになっています。

総務省などが閲覧できない措置をとった上で調査を進めていますが、共済組合が、年金情報をマイナンバーのシステムに入力する際に、誤ってほかの人にひも付けた人為的なミスが原因とみられるということです。

総務省は「閲覧された当事者に説明しおわびしたい。関係省庁と連携して、同様の事案がないか点検を急ぎたい」としています。

官房長官「総点検を行い再発防止と合わせて公表すべく対応」

松野官房長官は、12日午前の記者会見で「総務省とデジタル庁で詳しい事実関係を調査中だ。年金の支給額に影響はないと聞いているが、関連するデータの総点検を速やかに行い、再発防止策と合わせて公表すべく対応している」と述べました。

また河野デジタル大臣の処分について問われ、「総点検や再発防止に対応しているところであり、引き続き、マイナンバーカードの信頼確保やデジタル社会の実現に向け取り組むものと承知している」と述べるにとどめました。

岸田首相 マイナンバートラブル陳謝 健康保険証廃止に取り組む

岸田総理大臣は、衆議院決算行政監視委員会で、マイナンバーをめぐるトラブルやミスが相次いでいることを陳謝した上で、データやシステムを総点検し、来年秋の健康保険証の廃止に向け、取り組みを進めていく考えを示しました。一方、野党側が要求した河野デジタル大臣の更迭は拒否しました。

国会では12日午前、衆議院決算行政監視委員会で岸田総理大臣が出席して質疑が行われました。

岸田総理大臣は、マイナンバーをめぐるトラブルやミスが相次いでいることについて「マイナンバーカードが、デジタル社会のパスポートとして本格的に機能していくためには、個人情報の保護と国民の信頼確保が前提であり、重く受け止めている。国民に心配をかけていることを申し訳なく思っている」と陳謝しました。

立憲民主党の柚木道義氏は、マイナンバーカードと一体化した健康保険証について「国民皆保険のもとで、必要な時に必要な医療が受けられる体制を堅持するため、システムの緊急総点検と今の健康保険証の存続を強く要望したい」と訴えました。

これに対し、岸田総理大臣は「『データやシステムを総点検しろ』という指摘は当然で、政府として総点検を行うところだが、マイナンバーカードと保険証の一体化のメリットを着実に実現するためにも、医療現場のさまざまな課題を1つ1つ解決し、来年秋の健康保険証の廃止に向けて取り組んでいきたい」と述べました。

ただ、立憲民主党から河野デジタル大臣の更迭を求められたのに対し岸田総理大臣は「河野大臣にはマイナンバーカードの信頼確保などに取り組んでもらっており、引き続き職責を果たしてもらいたい」と拒否しました。

また、岸田総理大臣は、地方公務員の年金などを運営する「地方職員共済組合」で「マイナポータル」を通じて他人の年金情報を閲覧できるトラブルが1件確認されたことについて「詳しい事実関係を調査中だ。年金の支給額に影響することはないと報告を受けているが、速やかに関連するデータの総点検と再発防止策をあわせて公表するよう、関係大臣に指示をした」と述べました。

マイナ保険証に他人の情報登録 新たに約60件確認 厚労省調査

マイナンバーカードと一体化した健康保険証に他人の情報が登録されていたケースが新たにおよそ60件確認されたことが、厚生労働省の調査で分かりました。

マイナンバーカードと一体化した健康保険証に他人の情報が登録されていたケースは、去年11月までの調査で7312件確認されていて、厚生労働省は、健康保険を運営する組合に、ほかにもこうしたことが起きていないか、確認を要請していました。

その結果、報告があった分で去年12月から先月までの間に、他人の情報が登録されていたケースが新たにおよそ60件確認されたことが分かりました。

同じ期間に、名前や生年月日、医療費や処方された薬などの診療情報が閲覧されたケースも数件確認されているということです。

厚生労働省は、さらに調査を進めるとともに、健康保険を運営する組合に対し、これまで行っていたデータの入力作業でルールを守っていたか点検し、来月末までに報告するよう求めています。