出産育児一時金の財源 75歳以上の後期高齢者も負担へ 閣議決定

ことし4月から50万円に引き上げられる出産育児一時金の財源を、現役世代だけでなく、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度からも捻出するため、保険料の上限額を引き上げることを盛り込んだ健康保険法などの改正案が、10日の閣議で決定されました。

ことし4月から50万円に引き上げられる出産育児一時金の財源は、これまで原則、現役世代が負担していましたが、10日に閣議決定された改正案では、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度からも捻出するとしています。

このため、後期高齢者医療制度の加入者が所得などに応じて支払う保険料の上限額を2024年度と25年度に段階的に引き上げます。

具体的には、今の上限66万円から、
▽2024年度には73万円、
▽2025年度には80万円に引き上げられます。

また、65歳から74歳までの前期高齢者の医療費を現役世代が支援する仕組みを変更することも盛り込まれ、大企業の従業員などが加入する健康保険組合の負担を増やす一方、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の負担は減らすとしています。

法案の背景と詳細

閣議決定された、全世代で支え合う社会保障制度を実現させるための法案の背景と詳細です。

【出産育児一時金全世代負担】

出産前後の家計の負担を軽減するために創設された「出産育児一時金」は、ことし4月から、現在の原則42万円から50万円に引き上げることが決まっています。

一時金の財源のほとんどは、74歳以下の現役世代が加入する医療保険の保険料でまかなわれていて、2019年度は3800億円余りが支給されました。

この財源について、より幅広い世代も含めて社会全体で負担を分け合うため、2024年度から後期高齢者医療制度からも捻出することになります。
▽2024年度と2025年度は全体の3.5%を負担し、
▽2026年度以降の負担率については、改めて設定するとしています。

【後期高齢者の保険料見直し】

後期高齢者医療制度は、75歳以上のおよそ1890万人が加入しています。

財源は、患者の窓口負担を除いて、
▽およそ5割は公費
▽およそ4割は現役世代が支払う保険料からの支援
▽およそ1割は加入者が支払う保険料
で、まかなわれています。

高齢者の医療費増加に伴い、現役世代の負担が重くなっていることから、今回の法案では、比較的収入が高い高齢者に応分の負担を求めています。

保険料が増えるのは、
▽2024年度からは年収211万円を超える人
▽2025年度からは年収153万円を超える人で、
最終的には、加入者全体の4割が対象になります。

【国民健康保険】

このほか今回の法案では、子育て世帯の負担を軽減するため、自営業者などが加入する国民健康保険の保険料について、来年1月からは、出産前後の4か月間免除する措置を創設します。
費用は、
▽国が2分の1
▽都道府県と市区町村が4分の1ずつを負担します。

加藤厚生労働相「能力に応じて負担をお願い」

加藤厚生労働大臣は記者会見で「高齢者全員に一律に負担をお願いするわけではなく、低所得者には、負担の増加が生じないようにしている。現役世代の負担軽減を図るため、能力に応じて負担してもらう形で必要な見直しを行った」と述べました。