防衛費増額で「復興特別所得税」徴収 20年程度延長案検討

防衛費増額の財源を賄うための増税策をめぐり、自民党税制調査会の幹部が、東日本大震災からの復興予算に充てる「復興特別所得税」の徴収期間を20年程度延長する案を検討していることがわかりました。

防衛費の増額をめぐり、2027年度以降に不足する1兆円余りの財源を賄うため、岸田総理大臣の指示を受けて、自民党税制調査会の幹部が検討している増税策の案が判明しました。

それによりますと、3つの税目を組み合わせて財源を確保するとしていて、軸となる法人税は、納税額に一律に5%程度を上乗せし、7000億円から8000億円を確保するとしています。一方で中小企業の負担を軽減するため納税額のうち170万円は上乗せの対象から外すことを検討しています。

また、たばこ税を引き上げ、2000億円程度を確保する方針です。

さらに、東日本大震災からの復興予算に充てるため、2037年まで時限的に所得税に上乗せされる「復興特別所得税」から2000億円程度を活用するとしています。

そのうえで、活用によって復興予算の総額が減らないよう「復興特別所得税」の徴収期間を2050年代まで20年程度延長し、2050年代以降は防衛費への活用分だけ上乗せを続ける案となっています。

自民党の税制調査会は、13日から党所属の国会議員が広く参加して議論を始めますが、党内には増税に対する根強い反対意見もあり、どこまで具体的な案をまとめられるのかが焦点となります。

高市経済安保相 “十分な説明なく唐突感”

防衛費増額をめぐり、岸田総理大臣が与党に増税の検討を指示したことについて、高市経済安全保障担当大臣は12日記者団に対し、十分な説明がなく唐突感があったと指摘したうえで、増税の議論は来年末まで時間をかけて行うべきだという考えを示しました。

この中で、高市経済安全保障担当大臣は、岸田総理大臣による増税の検討の指示について「国家安全保障戦略はじめ3つの文書については、閣僚は概要も見せてもらっていない。内容や必要な金額が分かり、そのあと財源をどうするかが順番だと思うので唐突感があった」と指摘しました。

そのうえで、増税するとしても再来年度以降のことで時間は十分あり、議論は来年末までに時間をかけて行うべきだという考えを示しました。

また「閣内不一致」ではないかとの指摘には、「まだ閣内で結論が出たり、私自身が了解して署名をした事柄ではなく『閣内不一致』と呼ばれるものではない」と述べました。

さらに、増税が決まった場合の自身の進退を問われ「岸田総理が増税についてこれからどう判断するかわからないし、与党の税制調査会の議論を見守りたい」と述べました。

松野官房長官 “不足財源は増税で 首相考え 閣内で共有”

防衛費増額の財源をめぐり、高市経済安全保障担当大臣が「岸田総理大臣の真意が理解できない」などとツイッターで発信したことについて、松野官房長官は、12日不足する財源を増税で賄うという岸田総理大臣の考えは閣内でも共有されていると強調しました。

防衛費増額で不足する財源を賄うため、岸田総理大臣が与党に対し、増税の検討を指示したことについて、高市大臣はみずからのツイッターに「賃上げマインドを冷やす発言をこのタイミングで発信された岸田総理大臣の真意が理解できない」などと投稿しました。

これについて松野官房長官は、午前の記者会見で「記述は承知している。各閣僚とは日頃からさまざまなやり取りを行っているが、個々について答えることは控える」と述べました。

また記者団が「閣内不一致という認識か」と質問したのに対し「不足する財源は税制で協力をお願いしなければならないこと、財源確保の具体的内容を年末に一体的に決定することなどは、岸田総理大臣が述べているとおりで、閣内でも共有されている」と強調しました。