この夏 7年ぶり全国に節電要請 需給ひっ迫で「注意報」新設も

政府はこの夏の電力需給のひっ迫に備えるため、関係閣僚会議を開催しました。
家庭や企業に対して数値目標付きの節電までは求めないものの、7年ぶりに全国に10ある電力管内すべてに対して節電要請を行います。

この夏の電力需給は10年に一度の厳しい暑さを想定した場合、東北、東京、中部の各電力管内では安定供給に必要な予備率が3.1%と非常に厳しい見通しになっています。

こうした状況を踏まえ、政府は7日、電力需給のひっ迫に備え対策をまとめるため関係閣僚会議を5年ぶりに開催しました。

対策では電力会社に対しては、休止中の火力発電所の再稼働やLNG=液化天然ガスなど燃料の追加調達を促します。

そして、再生可能エネルギーによる電源の最大限の稼働を図るとともに、安全性の確保された原子力発電を最大限活用することなども盛り込んでいます。

また、家庭や企業に対しては数値目標付きの節電までは求めないものの、全国に10ある電力管内すべてに対して節電要請を行います。節電要請を行うのは2015年度以来、7年ぶりとなります。また、産業界や自治体には緊急時の連絡体制を確立するよう呼びかけました。

さらに、電力需給がひっ迫する可能性がある場合には、いち早くその可能性を知らせる「電力需給ひっ迫注意報」を新たに設けます。

ことしの冬は2012年度以降で電力需給が最も厳しい見通しとなっています。このため、法律に基づき、企業などに対して電力消費を抑えるよう求める使用制限令の検討を進めるほか、万が一に備え、計画停電の準備も進めるとしています。

電力需給 なぜひっ迫?

電力需給はなぜひっ迫するのでしょうか。

要因には火力発電所の供給力が落ちていることがあります。太陽光発電の導入拡大で火力発電は出力を落とす必要があり、稼働率が低下して採算が悪化。発電所の老朽化とあいまって休止や廃止が相次ぎました。
さらにことし3月、東北地方で震度6強の揺れを観測した地震で、首都圏に電力を送る火力発電所の設備が壊れ、現在も復旧の見通しがたっていないことも影響しています。

新たに「電力需給ひっ迫注意報」

電力需給がひっ迫するおそれがある場合、経済産業省は節電の必要性を呼びかけるために「電力需給ひっ迫注意報」を新たに設けます。

背景にはことし3月、東京電力管内で「電力需給ひっ迫警報」が初めて出されましたが、発令が前日の午後9時すぎと遅く、家庭や企業の間で節電に取り組むのが遅れたという批判が相次いだことがあります。このため経済産業省として少しでも早く節電の必要性を周知しようと注意報を設けることにしたのです。

その仕組みです。

【電力需給ひっ迫準備情報】
ピーク時の電力需要に対する供給の余力・予備率が5%を下回ると予想される場合、前々日の午後6時をめどに経済産業省のホームページなどで注意を呼びかけることにしています。

【電力需給ひっ迫注意報】
そして、前日の段階でも予備率が5%を下回ると予想される場合、午後4時をめどに「電力需給ひっ迫注意報」を発令します。

【電力需給ひっ迫警報】
さらに、予備率が3%を下回ると予想された場合には、対策を強化するため「電力需給ひっ迫警報」を発令し、一層の節電を呼びかけることにしています。

大規模な停電防ぐため さまざまな対応

大規模な停電を防ぐためにはさまざまな対応があります。

このうち、数値目標付きの節電要請は国が節電率を設定して、家庭や企業に呼びかけるもので罰則はありません。
過去には▽2012年度の夏と冬、▽2013年度の冬に行われています。

また、電気使用制限令は電気事業法に基づいて、経済産業省が電力の消費量が多い企業などに一定期間、電力の使用を抑えるよう求めるものです。対象の企業は工場の稼働時間をずらすなど対応が迫られることになり、違反すれば罰金が科されることもあります。

一方、罰金がある分、例外規定を設けるなどの事務負担も大きくなり、担当者によると、発令まで数か月の準備が必要になるということです。

東日本大震災があった2011年の7月から9月にかけて電気使用制限令が出されましたが、それ以降、実施されたことはありません。それでもなお大規模な停電のおそれがある場合、政府と電力会社は計画停電を実施することになります。

計画停電は大手電力会社があらかじめ定めた日時やエリアで電力の供給を一時的に停止し、人為的に停電を起こすものです。東日本大震災が起きた直後、2011年3月に実施したことがあります。ただ、国民生活や経済活動に大きな影響を与えるため、経済産業省としては原則的には実施しない方針を掲げています。