アフガンの邦人など退避へ
自衛隊機2機が日本を出発

アフガニスタンに残る日本人や大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを国外に退避させるため、現地に派遣される航空自衛隊の輸送機2機が、周辺国に向かうため、24日、日本を出発しました。

愛知県の航空自衛隊小牧基地に所属するC130輸送機2機は、首都・カブールの空港と周辺国の間を往復し、国外退避を希望する日本人や、日本大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを実際に輸送する任務に当たります。

2機は24日午前、埼玉県の入間基地に到着し、隊員が必要な物資などを積み込みました。

そして、輸送の任務に当たる統合任務部隊の指揮官を務める金古真一空将が派遣される隊員に対し「遠い地での任務で不安を抱えている者もいるかもしれないが、それぞれが役割を果たし、任務を完遂することを期待している」と訓示しました。

このあと隊員たちは輸送機に乗り込み、午後1時半ごろ、入間基地を離陸して沖縄の那覇基地に向かいました。

そして、2機は那覇基地で給油などを行ったあと活動拠点となる周辺国に向かうため、午後7時半ごろに相次いで日本を出発しました。

日本時間の25日にも、現地に到着する予定だということです。

一方、24日未明にはC2輸送機1機が隊員や拠点の整備などに必要な物資を運ぶため、鳥取県の美保基地を飛び立ち、日本時間の24日夜、周辺国に到着しました。

今回、派遣される隊員は、陸上自衛隊と航空自衛隊を合わせておよそ260人にのぼるということで、自衛隊は、早ければ今週中にも退避を希望する人たちの輸送を始めたいとしています。

加藤官房長官 銃撃戦も安全は確保されている

アフガニスタンの首都カブールの空港のゲートで銃撃戦があったことをめぐり、加藤官房長官は、空港の中ではアメリカ軍が安全確保を行っているなどとして、現地の邦人などを退避させる自衛隊機による輸送の安全は確保されているという認識を重ねて示しました。

アフガニスタンからの出国を希望する現地の邦人などを退避させるため、自衛隊機が日本を出発する中、首都カブールの空港のゲートで23日に銃撃戦があり、アフガニスタン人1人が死亡しました。

これについて、加藤官房長官は記者会見で「空港のゲートの外だと思うが、銃撃戦があったとの報道は承知している」と述べました。

そのうえで「空港の中では、アメリカ軍が安全確保や周辺区域の航空管制を行い、航空機の離着陸も正常に行われていると聞いている。タリバンについても、空港からの人員輸送を妨害する動きは、今のところ見られていない」と述べ、現地の邦人などを退避させる自衛隊機による輸送の安全は確保されているという認識を重ねて示しました。

政府 米軍撤退までの期間に限る方針

アフガニスタンに残る日本人などの退避に関連し、政府は自民党の会合で、安全性を確保するため、アメリカ軍の撤退までの期間に限って自衛隊機による輸送を行う方針を明らかにしました。

アフガニスタン情勢の悪化を受け、政府は、現地に残る日本人や大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを退避させる方針で、航空自衛隊の輸送機を現地に派遣し、今週中にも輸送を開始したいとしています。

これを受けて、自民党の外交や国防関係の合同会議が開かれ、出席者からは、現地の治安情勢に加え、退避させる対象者の範囲や具体的な輸送方法などについて質問が出されました。

これに対し、政府の担当者は、アフガニスタン人スタッフの家族も一定の条件で対象となると説明したうえで、退避作業の安全性を確保するため、空港までは自力で移動するよう求めることや、アメリカ軍が現地から撤退するまでの期間に限って輸送を行う方針を明らかにしました。

また担当者は、自衛隊機でアフガニスタンの周辺国にいったん退避させたあと、民間のチャーター機で日本などへ輸送することも明らかにしました。

バイデン大統領 アフガン撤退期限延長せず 複数メディアが報道

アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退期限について、アメリカの複数のメディアはバイデン大統領が今月31日としている期限を延長しない方針を固めたと報じました。バイデン大統領は期限の延長も検討していましたが、退避が加速していることなどから予定どおりの撤退を目指すものと見られます。

アメリカの複数のメディアは24日、政府高官の話として今月31日としているアフガニスタンからのアメリカ軍の撤退期限についてバイデン大統領が延長しない方針を固めたと伝えました。

アフガニスタンでは武装勢力タリバンを恐れて国外へ逃れようとする人々が首都カブールの国際空港に殺到しアメリカ人や通訳などの地元の協力者の退避に時間がかかっていることなどからバイデン大統領は撤退期限の延長も検討していましたが、タリバンは延長は認められないと反発しています。

ただ、アメリカ軍が本格的に支援を始めた今月14日以降、退避した人の数は5万8000人をこえ、23日からの24時間では2万人以上が出国するなど退避は急速に進んでいて、バイデン大統領としては当初の計画どおり、今月31日までに撤退することを決めたとみられます。

一方、カブールの空港周辺では銃撃戦で死者が出るなど治安が悪化していて、予定どおり撤退できるかは予断を許さない状況です。

タリバン 日本人などの自衛隊機輸送「問題ない」

アフガニスタンの武装勢力タリバンは、NHKの取材に対し、現地の日本人などを退避させるための自衛隊機による輸送について、問題はないという認識を示しました。

アフガニスタンでは、タリバンが権力を掌握したことから、首都カブールの空港周辺は国外へ逃れようとする多くの人たちで混乱していて、各国が軍用機を派遣して、自国民や協力者などの退避を進めています。

こうした中、日本政府が現地の日本人などを退避させるため、自衛隊機を派遣したことについて、タリバンの報道担当のアハマディ氏は24日、NHKの取材に対し「退避については問題ない。日本が自分たちで調整して、自国民を退避させるのであれば、退避は認められる」と述べ、問題はないという認識を示しました。

一方、アメリカのバイデン政権は、民間人の退避は現地の治安の悪化などから時間がかかっているとして、今月末までとしているアメリカ軍の撤退期限の延長を検討していますが、タリバン側は、延長は受け入れられないと強くけん制しています。

タリバン「すべての退避は8月末までに終えるべき」

日本など各国がアフガニスタンから自国民などの退避作業を進める中武装勢力タリバンは、すべての退避は、アメリカ軍が撤退期限とする今月末までに終えるべきだとしてアメリカ側に改めて撤退期限を守るよう求めました。

アフガニスタンでは、今月末にアメリカ軍の撤退が迫る中、武装勢力タリバンが権力を掌握し、日本やアメリカなど各国が、自国民や協力者などの退避作業を進めています。

こうした中、アメリカ政府は、軍の撤退期限の延長を検討していますが、武装勢力タリバンの報道担当のムジャヒド氏は24日、記者会見し「すべての退避は8月末までに終えるべきだ」としてアメリカに改めて撤退期限を守るよう求めました。

また、首都カブールの空港では、24日も国外に逃れようと多くの人たちが詰めかけ、混乱が続いていて、ムジャヒド氏は「アメリカがアフガニスタン人の国外退避を促している」としアメリカを強く非難しました。

アメリカとタリバンの間の緊張が高まる中、アメリカメディアは24日、CIA=中央情報局のバーンズ長官がカブールを訪問し、タリバンのナンバー・ツーのバラダル師と極秘に会談したと伝えていて撤退期限の延長をめぐり協議したものとみられます。

日本政府に助け求めるアフガン人

アフガニスタンに残る日本人や大使館で働くアフガニスタン人スタッフなどを国外に退避させるため、航空自衛隊の輸送機が派遣される中、首都カブール近郊に住む、以前、日本に留学していたアフガニスタン人の男性が日本政府に助けを求める声をあげています。

この男性は5年ほど前に中国地方の国立大学に留学し、帰国後はアフガニスタン政府で働いていたため、いまはタリバンから追われる立場になっているということです。

男性は航空自衛隊の輸送機が派遣されることを知って、24日、タリバンの戦闘員に見つからないよう注意しながらカブール空港に向かったものの、空港の入り口は閉ざされ、アメリカのビザなどを持っている人以外は入れなかったと話しています。

男性はNHKの取材に対し、ほかの大勢の人々が空港の外で立往生する様子とともに「この映像は日本政府に救助を求めるための証拠です」と訴える動画を送り、助けを求めています。

ホワイトハウス報道官「予定どおりのペース」

アフガニスタン情勢をめぐるG7=主要7か国の首脳会議を受けてホワイトハウスのサキ報道官は声明を発表しました。

この中でサキ報道官は「首脳会議でバイデン大統領はわれわれの任務は目標の達成状況にもとづいて完了することになると伝えた。現時点では8月31日までに終えるペースで進んでいる」として地元の協力者などの退避が撤退期限までに終わるとの見通しを示しました。

そのうえで「8月31日までに任務が完了するかは退避する人々の空港へのアクセスなどタリバンと続けている調整しだいだ。バイデン大統領は国防総省と国務省に予定どおり進まなかった場合に備えた対応策を検討するよう指示した」として、期限までに撤退が完了しない場合を想定した対応も検討しているとしています。

英首相「退避を望む人々に安全な移動の保証を」

アフガニスタン情勢を巡るG7=主要7か国の首脳会議を受けて、議長国イギリスのジョンソン首相は、ツイッターでコメントを出しました。

その中でジョンソン首相は、武装勢力タリバンがアフガニスタンからの人々の退避を今月末までに終えるべきだとしている点について「G7としての第1条件は、8月31日以降も、アフガニスタンからの退避を望む人々に安全な移動を保証することだ」と述べて、退避を望む人々が安全に移動できるよう、タリバンに求めていく考えを示しました。

イギリスはこれまでにアフガニスタンから9000人を退避させたものの、首都カブールの国際空港の混乱で現在、退避が困難になっているとしています。

ドイツ外相「全員退避できない」

アメリカが今月末としているアフガニスタンからの軍の撤退期限が迫る中、ドイツのマース外相は24日、地元メディアに対し「残された日数では、軍によって全員を退避させることはできないだろう」と述べ、現地に残るドイツ人やアフガニスタン人の協力者などの退避を終えるには時間が足りないという認識を示しました。

そのうえで、マース外相は、軍の撤退期限がすぎたあと、現地に残された人たちをどのようにして国外に退避させることができるかアメリカやイギリスとともに検討を進めているとしています。

国連「人権の尊重を」

アフガニスタン情勢をめぐって国連の人権理事会は24日、特別会合を開きました。

この中で、バチェレ人権高等弁務官は「タリバンの支配下にある多くの地域で、国際人道法の重大な違反や人権侵害に関する、信頼できる報告がある」と述べて、女性が自由に移動することや、教育の機会が制限されたという報告があると指摘しました。

そのうえで「基本的なレッドラインは、タリバンが、女性や少女の移動や教育の自由を尊重するかだ」と述べ、タリバンが女性の権利を尊重するのか、注視していく考えを示しました。

人権理事会は会合で決議を採択し、この中で「女性や子ども、少数民族を含む、すべてのアフガニスタン人の人権の尊重を求める」としたうえで、人権侵害に対しては速やかな捜査と責任の追及が行われることが必要だと強調しました。