アフガニスタン選手団
東京パラ参加断念 空港閉鎖

今月24日に開幕する東京パラリンピックに参加する予定だったアフガニスタンの選手団が、現地の政権が事実上崩壊したことを受けて大会の参加を断念したことをIPC=国際パラリンピック委員会が明らかにしました。

アフガニスタンでは反政府武装勢力のタリバンが国内のほぼすべての州都を支配下に置くとともに首都カブールに進攻し、大統領が出国して政権が事実上、崩壊しました。

こうしたことを受けてアフガニスタンのパラリンピック委員会が東京パラリンピックの選手団の参加を断念したことをIPCが明らかにしました。

IPCのスペンス広報部長は「残念ながらアフガニンスタンで進行中の深刻な状況によってすべての空港が閉鎖されており、東京への渡航手段がありません。この困難な時期にチームと関係者の安全と健康が保たれることを願います」とコメントしています。

東京パラリンピックにはおよそ160の国と地域から選手4400人が参加する予定ですが、これまでに北朝鮮と南太平洋の島国バヌアツが不参加を明らかにしていました。

アフガニスタン タリバンが首都カブールの統制強める

反政府武装勢力タリバンの進攻で政権が事実上崩壊したアフガニスタンの首都カブールでは、タリバンの戦闘員がパトロールや検問を行って統制を強めています。
タリバンは生命や財産を守ると呼びかけていますが、国外に逃れようと大勢の市民が空港に押し寄せるなどかつてのような抑圧的な統治への不安と警戒が広がっています。

アフガニスタンでは、20年前のアメリカ同時多発テロ事件を受けて軍事作戦を続けてきたアメリカ軍が今月末までの撤退を進める中、反政府武装勢力タリバンが攻勢を強め、15日、首都カブールに進攻し、ガニ大統領の出国によって、政権は事実上、崩壊しました。

一夜明けたカブールの中心部では、姿を消した治安部隊に代わり、武器を手にしたタリバンの戦闘員がパトロールや検問を行う姿が見られ、統制を強めています。

市内で飲食の屋台を営む男性は「人々が外出しないので、治安は悪化していないが、みんな戦々恐々としている。人々には90年代のタリバンの悪い記憶が刻まれている。国を離れたいが、金がないのでここにとどまるしかない」と話していました。

一方、カブールの国際空港には国外へ逃れようと16日も大勢の市民が押し寄せ、混乱のなかで複数の死者が伝えられるなど、緊迫した状況となっています。

タリバンは「生命や財産、名誉は侵害されることはない」として市民に平静を呼びかけていますが、かつてのような厳格なイスラム法に基づく抑圧的な統治への不安と警戒が広がっています。

カブール 空港に市民殺到 死者の情報も

アフガニスタンの首都カブールにある国際空港では国外への脱出を試みているとみられる大勢の市民らが駐機場にまで押し寄せる事態になっていて、ロイター通信などは、混乱の中で複数の死者が出ていると伝えています。

16日、首都カブールの国際空港で撮影された映像では、大勢の市民らが駐機場に押し寄せ、機内に乗り込もうとボーディングブリッジによじ登る姿が確認できます。

さらに別の映像では、離陸しようと滑走路を移動するアメリカの軍用機の周りを多くの人が走り、中には機体にしがみつく人もいる様子が確認できます。

また、ロイター通信などは、アメリカ軍が市民を制止するために威嚇射撃を行ったと伝えています。

空港では、詳しい状況は分かっていないものの、混乱の中で複数の死者が出ていると伝えられています。

米軍「カブール空港で応戦 武装した2人死亡」

アメリカ国防総省のカービー報道官は16日午前、記者団の取材に対し、アフガニスタンの首都カブールの国際空港で武装した人物が相次いで現地のアメリカ軍の部隊に発砲しこれに応戦した結果、武装した人物2人が死亡したと明らかにしました。

死亡したのがタリバンの戦闘員かどうかは確認できていないとしています。

また国際空港では多くの人が滑走路に押し寄せていることから軍用機や民間機の離着陸を止めているとし、速やかに航空業務を再開できるよう安全確保に取り組んでいると説明しました。

一方、アメリカ兵1人が現地で負傷したとの情報があり、国防総省が確認を急いでいるとしています。

「アフガニスタン空軍機を撃墜」隣国ウズベキスタン

ウズベキスタンの国防省は、国境を接するアフガニスタンの空軍機が15日にウズベキスタンの領空を侵犯しようとしたとして、機体を撃墜したとロシアの国営通信に明らかにしました。

機体はウズベキスタン南部に墜落し、乗員2人がけがをしたということです。

また16日には、アフガニスタンと国境を接するタジキスタン南西部の空港にアフガニスタンの兵士、あわせて100人以上を乗せた複数の航空機が着陸し、タジキスタン外務省は「SOSの信号を受信したため、空港への着陸を許可した」と説明しています。

反政府武装勢力タリバンが、首都カブールに進攻するなか、アフガニスタンからの脱出を図る人が相次いでいて、隣国のウズベキスタンやタジキスタンに逃れようとした可能性があるとみられます。
英ジョンソン首相 「オンラインでG7会議 開催を」
イギリスのジョンソン首相は16日、フランスのマクロン大統領とアフガニスタンの現状をめぐって電話で会談し、G7=主要7か国の首脳による会議を近くオンラインで開催したいとの考えを示しました。

また、将来的にタリバン政権を承認するかどうかについては各国が一致して対応する必要性があるとあらためて強調しました。

 

国連安保理緊急会合 人道状況に懸念表明

アフガニスタン情勢をめぐり国連の安全保障理事会では緊急の会合が開かれ、各国は現地の人道状況について一様に懸念を表明しました。

一方で、アメリカ軍の現地からの撤退についてロシアや中国が混乱を招いたとして批判し、各国の立場の違いも表面化しています。

アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが首都カブールに進攻し、政権が事実上崩壊したことを受け、安保理では16日、緊急の会合が開かれました。

冒頭、国連のグテーレス事務総長が、「人命の保護と人道支援のため、タリバンとすべての当事者に最大限の自制を強く求める」と述べたのに続いて、アフガニスタンのイサクザイ国連大使が、内戦に陥るのを防ぐため国際社会に支援を訴えました。

このあと各国が発言し、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、「すべてのアフガニスタン市民、とりわけ女性やマイノリティーの人権と自由が尊重されなければならない」と述べ、タリバンに対して市民を迫害しないよう、強く求めました。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は「外国軍の撤退が発表されるとたちまち暴力と犠牲者の数が増えた」と述べたほか、中国の耿爽国連次席大使も、「現在の混乱は外国軍との歴史に密接に関係している」と述べ、いずれも名指しは避けながらもアメリカ軍の撤退を進めたバイデン政権を批判しました。

会合のあと安保理は、暴力の即時停止と市民の人権を守るよう求める報道機関向けの声明を発表しましたが、タリバンとの関係やアメリカ軍の撤退をめぐって各国の立場の違いも表面化し、今後国際社会としてどこまで一致して対応できるのか問われることになります。