年収200万円未満 約半数
非正規公務員アンケート

全国の自治体で働く「非正規公務員」の現状について、現場で働く人などでつくるグループが1200人余りにアンケート調査を行った結果、年収が200万円未満と答えたのはおよそ半数に上ったことがわかりました。「給与額が低い」「将来が不安」などと待遇改善を求める声が相次いでいて、調査を行ったグループは「非正規公務員の現状を多くの人に知ってほしい」と訴えています。

全国の自治体で1年の契約を繰り返し働く「非正規公務員」は、保育士や図書館司書など住民サービスを支える多くの業務を担っていますが、正規職員と仕事の内容が同じでも毎月の給料が低いなど、待遇改善が課題となっています。

こうした現状について、現場で働く人たちなどで作るグループがことし4月から6月にかけてインターネットでアンケート調査を行い、1252人から回答を得ました。

それによりますと、去年の年収について「200万円未満」と回答したのは661人、率にして52.8%とおよそ半数に上りました。

「250万円未満」と答えたのは76.6%(959人)でした。

1週間の所定勤務時間は「30時間以上40時間未満」が45.3%(567人)と最も多くなっています。

1人暮らしや家族と同居する人も含めて自分の収入が家計を主に支えていると答えたのは35.2%(440人)でした。

また今の職場での勤務年数を聞いたところ、
▽「6年から10年」が21.1%(264人)、
▽「11年から15年」が9.8%(123人)、
▽「16年以上」が7%(88人)となっています。

有期雇用の非正規労働者が5年を超えて働いた場合、無期雇用に切り替えることを企業に義務づける「無期転換ルール」は、自治体職員に適用されないため、契約を繰り返し更新し働き続ける人が相次いでいるのが実態です。

日頃感じていることを聞いたところ、
▽「給与額が低い」が42%、
▽「将来への不安」が34%、
▽「やりがい搾取」が22%などとなっていて、
待遇の改善を求める声が相次いでいるということです。

自治体で働く「非正規公務員」の待遇改善を進めるために、去年4月からボーナスや退職手当などを支給できる新たな制度が始まりましたが、業務の内容が変わらないのに勤務時間が短くなり、収入が減ったなどという声が相次いでいます。

記者会見した、調査を行ったグループの渡辺百合子代表は「住民生活に身近なサービスを支え窓口業務などを担うのは、その多くが非正規の公務員です。こうした現状を多くの人に知ってもらいたい」と話していました。

「住民の相談受ける私たちが意欲持って働ける環境を」

関西地方の自治体で「非正規公務員」として働き続ける50代の女性は、女性や障害のある人などの就労相談にあたっています。

女性は10年以上、現在勤務する自治体で働いていて、1週間の所定勤務時間はおよそ30時間です。

女性は「正規職員は数年で部署を異動しますが、非正規は異動がなく、継続的な支援ができるため、行政サービスを支えるというやりがいはあります。しかし、契約は1年間で契約を更新するために、毎年、履歴書を出す必要があり、いつか契約を更新されず雇い止めにされるのではないかと不安を感じています」と話しています。

去年4月から「非正規公務員」にボーナスなどの支給をできるようにする「会計年度任用職員制度」が始まり、女性は待遇が改善されると期待したといます。

しかし、この女性の場合、制度の移行に伴い、ボーナスは支給されるようになりましたが、月々の給料が3万円ほど減額されたため、年収は変わらないといいます。

さらに新型コロナウイルスの影響で業務量は大幅に増えたといいます。

女性の部署では、これまでの就労支援の業務に加えて、住まいを失うおそれがある人を対象にした給付金の申請受付や審査を担当しています。

女性によりますと、同じ部署で働く職員のおよそ8割は非正規で、業務量は感染拡大前と比べて2倍以上になったといいます。

ことし6月の収入は残業代も含めても手取りで20万円ほどでした。

女性は「コロナ禍で生活そのものに関わる相談も増え、責任とプレッシャーだけが増えました。住民によりよいサービスを提供するためには、相談を受ける私たち非正規が意欲を持って働ける環境が必要です。今の待遇で行政が成り立っているのは、非正規公務員のやりがい、ボランタリーなところに支えられていると思いますが、それだけに頼りすぎていると感じます。待遇の改善を進めることができないと、今後、行政サービスが維持できるかが不安に思います」と話していました。