用」新日鉄住金の資産
差し押さえ認める

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる裁判で、新日鉄住金に賠償を命じる判決が韓国で確定したことを受け、原告側が求めていた新日鉄住金の韓国にある資産の差し押さえを裁判所が認める決定を出しました。この問題で日本政府は、企業に不利益が生じる事態になれば、直ちに対応策をとる考えを示していて、日韓関係が一層悪化することは避けられない見通しです。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐっては、去年10月、韓国の最高裁判所で、新日鉄住金に賠償を命じる判決が確定したことを受け、原告側は先月、裁判所に対し、新日鉄住金の韓国にある資産の差し押さえを認めるよう申し立てました。

これについて、原告側は8日、韓国のテグ(大邱)地方裁判所ポハン(浦項)支部が、今月3日、申し立てを認める決定を出したことを明らかにしました。

原告側は、差し押さえが認められたのは、新日鉄住金と、韓国最大の鉄鋼メーカー「ポスコ」との合弁会社の株式のうち、8万1000株余りだと説明しています。

新日鉄住金側は、裁判所に異議を申し立てることも可能ですが、今回の決定が通達され次第、株式の売却などができなくなります。

一方、原告側は、これまでのところ株式の売却に向けた手続きはとっていませんが、新日鉄住金が賠償に関する協議に応じなければ、手続きに入るしかないとしています。

この問題で日本政府は、企業に不利益が生じる事態になれば、直ちに対応策をとる考えを示していて、日韓関係が一層悪化することは避けられない見通しです。

韓国の裁判所の決定について、新日鉄住金は「韓国の裁判所から通知が来ていないので、内容は確認していません。引き続き日本政府とも協議しながら適切に対応していきます」とコメントしています。

日本政府 不利益生じるか見極めて対応

韓国の裁判所が新日鉄住金の資産の差し押さえを認める決定を出したことを受けて、日本政府は、企業側に不利益が生じるかどうかを見極めたうえで、対応策をとる方針です。

日韓の間の請求権の問題をめぐっては、日本政府は、1965年に締結した日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みだとしていて、韓国政府に対し、日本企業の側に不利益が及ばないよう適切な対応を求めています。

原告側が新日鉄住金の韓国にある資産の差し押さえを裁判所に申し立てたことに対して、安倍総理大臣は、極めて遺憾だとしたうえで、国際法に基づく具体的な措置の検討を関係省庁に指示していて、河野外務大臣も「日本企業に不利益が生じることになれば、直ちにとるべき手段をとらなければならない」と述べています。

日本政府は、今後、差し押さえられた資産の扱いなどを見極めたうえで、対応策をとる方針です。

具体的には、日韓請求権協定に基づく2国間協議を要請し、協議によって解決できない場合には第三国も交えた仲裁委員会の開催に加え、国際司法裁判所への提訴も視野に厳しく対応することを検討しています。