沖縄 南大東島 けがから回復したダイトウオオコウモリ森に帰る
- 2024年02月20日
国の天然記念物で、沖縄県の南大東島と北大東島にのみ生息しているダイトウオオコウモリ。去年の11月に南大東島でけがをしているところを発見された若いメスが、沖縄本島で手当を受けて回復し、今月7日、島の森に帰されました。
(取材:沖縄局コンテンツセンター 市川可奈子カメラマン)
ダイトウオオコウモリとは
ダイトウオオコウモリは果実を主食とするオオコウモリの一種です。首から下が白っぽいのが特徴で体長は20センチほど。翼を広げると50センチ以上にもなります。
南大東島と北大東島に、あわせて約300~400頭が生息するとみられています。1973年には国の天然記念物に指定されました。島に人が住み始めたのは約120年前ですが、それより前から生息している唯一の哺乳類といわれています。
島ではTシャツやラム酒のラベルにデザインされるなど身近で愛される存在です。
集落の中でも見かけるダイトウオオコウモリですが、車と衝突したり、電線で感電したりして、死んだりけがをしたりする事故が南大東島だけでも去年1年間で5件発生しています。
また人が持ち込んで野生化したネコがコウモリを襲うケースもあるといいます。
去年の11月に南大東島で保護されたダイトウオオコウモリです。
去年の春ごろ生まれた若いメスで、集落の路上でけがをして飛べなくなっているところを住民に助けられました。
見つかったときには出血もあり、交通事故にあったとみられています。
島には獣医がおらず、治療できないため、翌朝に飛行機で沖縄本島に運ばれ、うるま市の動物病院で治療を受けました。
治療にあたった獣医は
ダイトウオオコウモリの治療にあたった、獣医師の長嶺 隆さんです。
沖縄の希少な生き物の保護に取り組んでいます。
長嶺さんのもとにはこれまでもけがをしたダイトウオオコウモリが運ばれてきましたが、その多くは搬送中に死んでしまったり、再び飛べるようになるまで回復できなかったりして、自然に帰すことができませんでした。
今回は島の人や航空会社、それに環境省などが連携して搬送できたことが素早い治療につながりました。そして保護されたコウモリは骨折がなかったこともあり、治療を受けることで無事回復できたのです。
ダイトウオオコウモリ、南大東島の森に帰る
およそ3か月の治療を経て、南大東島に帰ってきたダイトウオオコウモリ。
その姿を見ようと約100人が集まりました。
なかなか近くで見る機会のない子どもたちも興味津々です。
長嶺さんがおりから外に出すと、ダイトウオオコウモリは元気よく飛び立っていきました。
集まった人たちからは大きな拍手が起こりました。
島の人たちの手で救われてまた島に帰っていけるというのは、治療した側にとって、とてもやりがいのある結果になったなと思いました。
取材を終えて
元気になって帰っていくコウモリの姿を見て、島の人たちはとても喜んでいました。
南大東島ではけがをしたコウモリを見つけるとすぐに鳥獣保護員に連絡が届くなど、島の人たちの関心も高く、ダイトウオオコウモリが愛されていることを実感しました。
取材した獣医師の長嶺さんは、これからも役場や航空会社など関係機関と連携して保護に取り組んでいきたいと話していました。
ダイトウオオコウモリに限らず、沖縄の各地で数々の希少な生き物が交通事故や外来生物などによって生息が脅かされる現状があります。長嶺さんが語るように、人間の生活が原因となって野生生物がけがをしたりするのであれば、せめてもとに戻して自然に帰してあげたいという思いが少しでも広がっていけばと思います。