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沖縄発 高校最強女子、世界に挑む!

~ウエイトリフティング・比嘉 成さん~
  • 2023年11月24日

沖縄県立本部高校3年、比嘉 成さん。
ウエイトリフティング女子59キロ級で日本高校記録を次々と更新する注目の選手です。
同年代の国内大会では敵なしの成さん、今月メキシコで開催された世界ジュニア選手権では初出場で3位に入る快挙を成し遂げました!
この大会に向けた成さんの日々を取材しました。
(取材:沖縄局コンテンツセンター 市川可奈子カメラマン)

挑戦、世界ジュニア

「ガシャァンンンッ!・・・・・・ガシャァンンンッ!」
沖縄本島北部の本部町にある県立本部高校。
その一角にあるウエイトリフティング部の部室から、鉄を激しくぶつけるような音が聞こえてきます。

音の主は比嘉 成さん、本部高校の3年生でウエイトリフティング女子59キロ級の日本高校記録保持者です。

10月に開かれた大会ではバーベルを一気に頭上に上げる「スナッチ」で95kg、
一度肩まで持ち上げてから頭上に上げる「ジャーク」で109kg、
トータルで204kgを成功させ、
3つすべてで自身が持つ日本高校記録を更新したばかり。

世界大会でのさらなる進化をめざし、理想のフォームを求めて何度もバーベルを上げては下ろす練習を繰り返していました。
ガシャンという音は、持ち上げたバーベルを下ろすときの音。数秒おきに何度も部室に響いていました。

記録が向上して、また日本高校新記録とかジュニア新記録を目指せるということが本当にとても楽しくて。世界ジュニアでしっかり記録を出したいと思っています

強さの秘密は独自のフォーム。

 

成さんのフォームをチェックする敏彦さん
身ぶりを交えて指導

成さんを指導するのは父の敏彦さんです。
オリンピック選手も育てたことがある敏彦さん。
成さんが3歳の時から指導してふたりで技術を磨いてきました。

成さんについて、敏彦さんは、

とにかく負けずぎらいですね。厳しく指導すると目に涙を浮かべながら一生懸命やってくれます。そこが長所だと思います。

絶対の信頼でつながったふたり。二人三脚で世界を目指します!

 

成さんの強さの秘訣は、敏彦さんとともに作り上げた独自のフォーム。
一度後ろに体を傾け、自分にバーベルを引き寄せた後、
その反動を使ってバーベルを前に振り回すようにして持ち上げます。
このフォームで次々と記録を更新してきました。

しかしこのフォーム、反動を使うので重い重量をあげられますが、
バランスをとるのが非常に難しくなります。
幼いころから技術を磨いてきた成さんだからこそできる独自のフォームです。

筋力がない中でも少しでも重い重量を持てるようなフォームを模索しています。それに成が少しずつかみ合ってきて成績につながっているのかなと。

弟たちや後輩の存在も力に変えて。

世界に挑む成さんの姿は、弟や後輩たちの目標になっています。

成さんのトレーニングを見つめる弟の歩さん

 

中学1年生の弟、歩さん
中学3年生の弟、功さん

 

みんな金メダル!

成さんに刺激を受けた弟や後輩たちも九州や全国の大会で次々に優勝。
力をつけていく弟たちが励みになり、成さんは自宅に戻ってからもトレーニングを続けます。

やっぱりあっちに1kg超されても、次は自分がその上をと。
そして自分がやったら弟たちはその上をねらってくるので、切磋琢磨しながらできているのがとても楽しいです。

挑戦!世界ジュニア選手権

目指すはメキシコで開催される世界ジュニア選手権。
新型コロナの影響で3年間国際大会に出場できなかった成さんにとっては念願の舞台です。

世界ジュニアとなるといろんな国の選手が来ます。自分より強い選手がたくさんいると思うので、そこで自分がどれだけその選手たちと戦えるのかっていうのをまず知りたいなと思います。

 

フォームを鏡に映して

世界大会に向けて、フォームの見直しにも余念がありません。
徹底するのは、力まかせにならずに、体全体を使ってバーベルを持ち上げること。
 

しかし理想のフォームはなかなかつかめません。
敏彦さんからは何度もダメ出しが。
「どうしても力が入っている。(体全体を使って)もっと振り回して」。
「残念だな、ダメ。振り回さないと」。

厳しく見つめる敏彦さんのアドバイスを受けながら、感覚をつかみます。

こうした練習を繰り返すことでフォームが安定し、この1年でスナッチは5㎏、ジャークは14㎏、記録が伸びました。

日本代表として

大会出場を前に、日本を代表するという意識も高まってきました。

いつもは日本マークの刺繍入りじゃないんですけど、世界ジュニアで日本代表として出るのでつけてみようかなと思って。

日本代表・比嘉 成として

ようやく挑める世界の舞台、その先には、オリンピック出場を見据えています。

もっと世界で戦えないとオリンピックには届かないので、オリンピックに出るための第1歩の国際試合として、世界ジュニアではしっかり1本1本大切に、自分の今持ってる力を十分発揮してメダルを獲得できるように頑張りたいと思います!

 

そして、世界ジュニア選手権

今月17日、成さんはメキシコで行われた世界ジュニア選手権女子59キロ級に出場しました。
バーベルを一気に頭上に上げる「スナッチ」は90kg、
いったん肩まで上げたあと頭の上にあげる「ジャーク」では106kgの合計196kgを上げ、初めて挑戦した世界ジュニアで銅メダルに輝きました。

【提供:比嘉 成さん】

メダル獲得を目標にしていた世界ジュニアで3位という成績でしたが、6本の試技のうち3本しか成功できず、記録も自己ベストには及びませんでした。
成さんにとって世界の厳しさを感じる大会にもなりました。

「3位に入れてすごくうれしいですが、今回は重量も本数も納得いく試技をすることができませんでした。やはり世界の人と戦うには1本1本が大事で、成功させることが大切だと改めて感じました」

それから4日後の今月21日、成さんと敏彦さんは沖縄に戻りました。

那覇空港では祝福の横断幕を掲げた学校関係者の出迎えを受け、
成さんはうれしそうに花束を抱えて、記念写真におさまりました。

大会を振り返って敏彦さんは、

メダルを取ることはなかなかできないのでこの結果は大変うれしい。
今までのやり方に間違いはないので、しっかり継続していけたらまた違う色のメダルが見えてくると思う。頑張ってまた違う色のメダルを取ってほしい

そして成さんのまなざしは次の大きな目標に向かっています。

まだあまり世界の大会に慣れてないので、経験をたくさん積みたい。
(5年後の)ロサンゼルスオリンピックに向けて、もっと国際大会に出場できるように頑張っていきたいです。


【取材後記】
世界ジュニアの直前1ヶ月の練習の様子を取材しました。
成さんは大会に向け、緊張しているのかと思いましたが、思いのほかリラックスしていて、いい状態で集中できているようでした。
父の敏彦さんと積み重ねてきた練習に自信を持って世界ジュニアに臨めたことが好成績につながったのではないかと思います。
今後も比嘉 成さんの活躍を応援していきます。


 

  • 市川可奈子

    沖縄放送局コンテンツセンター カメラマン

    市川可奈子

    前任地は大阪放送局、沖縄局に赴任して丸2年たちました。最近はダイビングにはまっています。

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