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外国人と防災を考えよう!新プロジェクト始動!

  • 2024年05月08日

元日の能登半島地震、4月には四国で震度6弱。
「ことしは地震が多い気がして怖い…」と感じている方、多いかもしれません。
そんな状況に不安を感じているのは、地域の外国人も同じです。
全国で2番目に多い30万人ほどの外国人が暮らす愛知県。
これまで地域の外国人を取材してきたなかで「地震などの災害時、どう行動したらいいのか分からない」という声を多く聞きました。
そこで、NHK名古屋放送局では、今年度から「“外国人向け”の防災教室」を開催します。
「やさしい日本語」などを使って、分かりやすく日本の災害について伝えるだけでなく、災害時に身近な人に向けて「どんな言葉をかけたら、命を守れるか」を考えるものです。
4月中旬、外国人が多く住む愛知県豊橋市で、地震をテーマに「ミニ防災教室」を開催。
防災教室を通してどう感じたのか、率直な思いも聞いてきました。
(NHK名古屋 アナウンサー 澤田拓海)

“災害弱者”の外国人に情報を伝えるために

元日に発生した能登半島地震では、地域に暮らす外国人も被災。必要な情報が届かずに、
十分に支援を受け取れない状況に直面していました。私も能登半島のほぼ中央にある七尾市を取材しましたが、そこでは「言葉の壁」により、避難や支援物資の情報を十分に得られない、どう行動したらいいのか分からない、などの声を多く聞きました。
これは、去年6月に愛知県の豊橋市や豊川市を襲った記録的な大雨を取材した際、外国人が直面していた状況と同じでした。
取材を進めていくと、そこには、外国人が抱える「ストック情報」の不足という課題がありました。

「ストック情報」とは
災害時に発表される「フロー情報」と異なり、その前に蓄積されてきた知識や経験を指します。例えば、“沿岸で大きな揺れのあとには津波のおそれがある”とか、“大地震のあとには避難所が開設される”ということも含まれます。

「ストック情報」を補強し、防災について考える機会を

「ストック情報」のない外国人に、災害に備えてもらう機会を作るにはどうすればよいのか。
NHK名古屋放送局では、そのような課題の解決に少しでも貢献したいと、「やさしい日本語」などを使った「外国人向けの防災教室」を開催することにしました。
NHKでは、アナウンサーが中心となって、地域住民向けの防災教室をこれまで全国で開催してきました。主に災害時に身近な人の命を救うための「呼びかけ」を考えてもらおうという内容です。

一宮市で開催した防災教室

NHK名古屋放送局では、その防災教室の対象を外国人に拡大することになりました。
最初に開催場所として選んだのは、愛知県豊橋市。愛知県で2番目に多い2万人以上の外国人が暮らしています。
とはいえ「どこまで内容が伝わるのか」という課題もあったため、今回「ミニ防災教室」と題して、参加した外国人に内容について講評もしてもらうという形をとりました。
豊橋市国際交流協会や豊橋市に協力していただき、通訳ボランティアとして活動している方など、4人の外国人に参加してもらいました。

タリタさん(両親がブラジル人)   キムさん(ベトナム)
ノフィアニさん(インドネシア)    ミミさん(マレーシア)

さらに今回、「やさしい日本語」講師として活動し、防災士の資格を持つ八代明恵さんにも、モニターに協力していただきました。

八代さん

思わぬ災害リスクに驚く外国人たち

今回のテーマは「地震」。そもそも地震とは何か、地震や津波によって豊橋市にどのような被害があるのか、などについて説明しました。
その際、使用したのが「ハザードマップ」です。
皆さん、ちゃんと確認したことはありますか?
今回は「南海トラフ巨大地震」で想定される被害について解説しました。
まずは「豊橋市防災ガイドブック」に掲載されているマップをご覧ください。

豊橋市の津波浸水想定(理論上想定される最大のケース)

「南海トラフ巨大地震」で津波が豊橋市を襲った場合の最悪のケースを想定した地図です。
マグニチュード9クラス、豊橋市で震度7を観測するような地震が来た場合、三河湾側で
最大3メートルの津波太平洋側では最大19メートルもの津波がくるとされています。
これを見た外国人からは「そんな高い津波が来るなんて…」という反応が。

さらに参加者を驚かせたのは、津波が到達するまでの早さです。
三河湾側では、最短77分後という想定ですが、問題は太平洋側
最悪の場合、たったの「4分」「19メートル」もの津波が到達します。

ハザードマップを初めて見たという外国人も
真剣な表情で聞く参加者たち

自分の住んでいる災害リスクを把握した参加者たち。
地震という災害が“ジブンゴト”になっていったように感じました。

家族や友人を守るために呼びかけたい言葉は?

南海トラフ巨大地震が起きた場合の被害について学んだ外国人たち。
さっそく、身近な人たちを助けるためには、どんな言葉をかけたらいいかを
グループワークで考えてもらいました。

シンキングタイムは15分

そしていよいよ発表。

インドネシア出身のノフィアニさんは、川の近くに住んでいる友人に対し、こんな呼びかけを。

逃げるときに、川には絶対近づかないで!

津波が川を遡上(そじょう)する可能性を考え、このような呼びかけにしたとのこと。

また、家族が市内の山に近い場所に住んでいるというベトナム出身のキムさん。
 

地震で山や崖が崩れる可能性があるので、崖から離れて逃げて!

揺れに備えて、急な斜面などからは離れるという安全性を考慮した呼びかけでした。

皆さん、家族や友人がどんなところに住んでいるのかを考え、
津波以外の注意点も盛り込んだ多種多様な呼びかけを発表していました。

外国人に災害情報を伝えるには

「ミニ防災教室」後、参加した外国人に話を聞きました。

「ハザードマップの存在を知ることができてよかった」
「呼びかけを考える機会はこれまでなかったのでためになった」
「地震や津波の怖さを知ることができた」
などの好評意見があった一方、分かりづらい部分もあったという声もありました。
それらの課題は、私たちが地域の外国人に災害情報を伝えるうえで、ヒントになるものばかりでした。

両親がブラジル人だというタリタさんは

外国人に話すとき、敬語を使うと分かりづらくなります。
文章を短くして話すと分かりやすくなると思います。

また、マレーシア出身のミミさん

英語やアルファベットの表記もあった方がありがたいです。
英語は母語ではないが、東南アジアでは学校で習ったり、
アルファベットなら読めたりするので、
そのほうが分かりやすいかもしれません。

やさしい日本語講師の八代さんからも、アドバイスをいただきました。

「情報を“手に入れる”」などの比喩表現を思わず使ってしまいがちだが、
外国人にとっては理解が難しい。
「情報を得る、もらう」など、簡潔な表現をなるべく使うようにすると、
より説明が分かりやすくなると思います。

私も発見のあった防災教室となりました。
いただいた意見は、今後開催していく防災教室の内容や伝え方に役立てていきます。

災害を“ジブンゴト”にし、どのように避難行動につながる「ことば」を呼びかけるか。
「やさしい日本語」は、外国人だけでなく、小さな子どもたちに危険性を伝えるうえでも有効です。
皆さんも一緒に考えてみませんか?

  • 澤田拓海

    名古屋放送局アナウンサー

    澤田拓海

    「おはよう東海」キャスター
    「まるっと!」リポーター
    これまで防災や国際の話題を中心に取材

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