関ヶ原「天下分け目」は「線路分け目」 その2 謀反?“逆走”する列車
- 2023年12月18日
「どうする家康」関ヶ原の戦いにちなんでお伝えしているシリーズの2回目。
「天下分け目」とも称される戦いが繰り広げられたまさにその場所にあるのが、JR東海道本線 関ヶ原駅です。
大河ドラマでの「関ヶ原の戦い」では、合戦の最中、いかに多くの仲間を集めるか、さまざまな策略も描かれましたが、なんと、関ヶ原を行く列車の中にも、まるで「謀反」のように怪しい動き(?)を、見せるものがあるのです。
壮大なヒント(?)が駅近くに
今回も舞台は、東海道本線 関ヶ原駅。
線路をまたぐ「こ線橋」には「古戦橋」の文字。シャレかもしれませんが、まさに、ここは古戦場の中にある駅です。
駅から続く道には、関ヶ原の戦いを時系列で追った看板が。その途中「続々と背反」。
これが「関ヶ原の戦い」の予想以上に早い決着につながったとも言われています。
実は、この「関ヶ原」を行く列車の中に、あたかも背反したかのように走り去る列車があるのです!
日本の鉄道は「左側」通行
それが見られるのは平日の朝のみ。早朝と深夜のものは残念ながら写真ではわかりません。。。
ということで、関ヶ原に朝駆け!
まず、皆さんに知っていただきたいのは、日本の鉄道は、複線では「左側」通行だということです。もちろん、駅構内や複々線など、線路の多いところでは、その限りではありません。
関ヶ原を行くのは日本の大動脈・東海道本線。「複線」です。
上り列車のみがここを走るのは、前回その①の記事参考👇
※一度こちらを読んでおいていただけると、この先が多少わかりやすくなる・・・はずです!
貨物列車も 上り列車のみがここを走るのは、前回その①の記事参考。
やはり「左側」通行です。
そのルールを破り?逆走、いや背反かのような動きとは????
“逆走”列車 現る!
朝7時すぎ。東海道本線は、名古屋方面へ、ラッシュ輸送を担う列車が増える時間帯です。
ここで動きを凝視します。
関ヶ原駅を出て名古屋へ向かう、新快速・豊橋行。
関ヶ原駅へと向かう、普通・米原行。
「ん?」 関ヶ原から向かってくる列車がきたが。。。
逆走してる!!!
さきほどの新快速は隣の線路を走っていましたよね?
ついさっき、この線路を逆向きの列車が走っていましたよね?
仕掛け人は、あのシンタルイ
さすがに、背反して逆走したとしても、いまの日本の鉄道の信号システムでは、列車が急停止しますから、安心してください。
では、なぜ、このようなことが起こるのか?それは、前回の「シンタルイ」にヒントがあります。
一見、複線に見えるこの線路。実は、、、「単線だった」んです!
図解しましょう。関ヶ原の東側では、このような線路配置になっています。
元々、黒で示した上下線の複線でしたが、その後、下り線には、前回(その①)でお話した、急こう配を上るために青いルートが作られます。
つまり、上り線と下り線の関係はこのようになったのです。
しかし、垂井駅経由の下り列車を復活させるために、再び元の下り線を使用することに。
こちらは、垂井駅を通ることから、通称「垂井線」と呼ばれ、この区間は単線で運用できるようにしたわけです。
単線ですから、上下線どちらの列車も走れてしまいます。現在は下りの普通列車はすべて「垂井線」を通る、まさに下り本線となりました。
つまり「通称・垂井線(単線)」と「東海道本線(複線のうちの上り線)」が並んでいる区間で、「下り線」の方は、「垂井線」の単線なので堂々と“逆走”できたというわけです。
それを示すように、信号機には、垂井線を表す「垂」の看板。信号機は、上り向き・下り向き、両方向に設置されています。
では、なぜ1日に数本だけ、そのような動きをするのか。
それは、ラッシュ対応に他なりません。岐阜県の西端、つまり東海地方の西端の「関ヶ原」からの名古屋方面への本数を確保するために、関ヶ原始発の列車が設けられています。下り線を走って関ヶ原駅に送り込んだ列車が、折り返し上り(名古屋方面)で出発しようとしても、新垂井線の線路に阻まれ、上り線に直接入ることができません。そのため、単線「垂井線」を一見逆走しているように走らせることで、関ヶ原始発の列車を運転していたのです。次の垂井駅の手前には、「垂井線」から上り線に渡れるポイントが設置され、ここを通れば上り線にて合流できます。
実は早朝にも「関ヶ原発」、夜には「関ヶ原行」が運転されているのですが、明るい時間にこういった動きが見るのは、現在はこの電車が唯一です。
前回(その①)でお話したように、蒸気機関車の頃の難所を解消しようとできた仕組みがこの令和の時代になっても残っているなんて、、、ロマンですね。。。
「線路分け目」の関ケ原。
次回は【すべてお見通し!家康の陣】についてご紹介します。
別井敬之アナの「戦国×鉄道」シリーズ。「伊賀越え」編もどうぞ