宮崎の老舗ボウリング場 時代の移り変わり 社長の思いとは?
- 2023年07月12日
宮崎にまつわる懐かしい思い出でつながる「#みやざきノスタル部」。
最盛期は宮崎県内に30以上あったボウリング場ですが、残っているのは5つのみとなっています。
厳しい経営環境で頑張っているボウリング場の社長にインタビューしました。懐かしい映像とともに振り返ります。
宮崎市・老舗ボウリング場のいま
話をうかがったのは社長の藤元良一さん。取材当日は、平日の午後1時すぎでしたが、たくさんの方がボウリングを楽しんでいました。目立つのは元気なお年寄りの方々。昼間のボウリング教室がきっかけでそのままハマったという人が多いそうです。
今はお昼の時間帯は、健康ボウラーが多いんですよ。
子どもたちがいなくなって夫婦だけとか、65歳から新しい友達ができるのがいいふれあいになっているそうです。
ボウリングブームと経営難
宮崎駅にほど近いこの場所にボウリング場ができたのは、ボウリングブームの真っ只中の1972年でした。手がけたのは藤元さんの父・良喬(よしたか)さん。元々あった木材を加工する製材所を閉じて、異業種に参入しました。
しかし、オイルショックをきっかけにすぐにブームは去り、藤元さんが20代で入社したときには既に経営が厳しい状態だったといいます。
藤元さんは企業などの団体向けにボウリングの懇親会などを企画。知り合いにチラシを配ってまわったといいます。
あのときは若いからね。はじかれてもどうでもよかったから、まずは先輩から声をかけにいきました。「まだボウリングやってるの?」って言われて「団体で来てくださいよ!」って。
さらに負債を減らすため藤元さんはある決断をします。それは製材所時代から大切に育ててきた山の木を売ることでした。
祖父や父が植えて育てた山の木を申し訳ないけど切らせてくれとお願いしました。
それでお金になったお札を見ることなく、そのまま銀行に返済して元金を減らしていくという作業を1年くらいしました。山には本当に感謝をしています。
コンピュータの導入と客層の変化
その一方で、ボウリング場には新しい技術も積極的に取り入れます。初心者には難しかった手書きのスコアの計算にコンピュータを導入したのです。
何が変わったって女性のお客さんが増えました。それからファミリーが増えてお年寄りが増えました。投げるだけであとはハイタッチをすればいいから(笑)、そういう明るいボウリングに変わったと思います。
しかし、2000年代に社会的な問題となったアスベストが天井に使われていたことなどから、藤元さんはまたしても大きな決断をします。およそ15億円をかけて4階建てのビルに建て替えたのです。そのときに、経営の柱として、地域住民から要望の多かった温泉施設をテナントとして誘致しました。
結局ボウリングというものだけでは、新たに建物を建てても採算は絶対にあわない。
でもボウリングのお客さんもいっぱい会員がいたからボウリングはしたいなって思って、ボウリング+アルファを考えました。
新型コロナと温泉チェーンの撤退
2020年には新型コロナが直撃します。ボウリング場はキャンセルが相次ぎ、温泉施設の利用客も前の年度に比べて40%減少しました。さらに追い打ちをかけるように、温泉設備が耐用年数を迎えるなか、テナントとして入っていた温泉チェーンが撤退を決めたのです。
続けていくにはフランチャイズとして自ら経営しなければならず、そのためにはさらに投資をして設備を更新する必要がありました。
さらに追い銭をしないといけない。でもやらないと倒産してしまう。やっても倒産する可能性はあるけど、やるしか道はないと思いました。
企業の役割の1つに「社会的貢献」があると思うんです。人々にどれだけうちの会社が「幸せ」を売っているか、親子が来て楽しそうにご飯を食べていれば、この施設が社会に貢献しているってことになると思うんですよね。
朝イチでお年寄りたちが20人ぐらい必ず朝風呂に入りに来るんですよね。楽しそうにみんなで話しながら待ってるんですよ。そういうこともこの施設が持っている「社会に対する役割」ができているのかなって。
明るく働き続けるために
コロナ禍のなか、一昨年温泉施設をリニューアルし、自ら経営に乗り出した藤元さん。
地域の企業人としてリスクを背負っても明るく働き続けるその人生。私たちにこんなヒントをくれました。
あまり自分自身を追い込まないことですよね。
せっかちに考えずに「時を稼ぐ」部分が大事だと思うんです。そうしながら、自分の考えを広くするほうがいいのかなと思います。私は人に頼ってばっかりですけど、みんなで作っていくことは楽しいですよ。
社会のため、そしてボウリングを楽しみたいという人のためにここまでやってきた藤元さん。辛いことがあっても人のためになっていると思えば、辛くないし頑張れると話してくれました。