高校野球 宮崎農業 女子部員の最後の夏 ノックに込める思い
- 2023年07月10日
甲子園を目指す夏の全国高校野球宮崎大会。
開会式直後の開幕戦に臨んだ宮崎農業には、女子選手がいます。大好きな野球にひたむきに打ち込む姿を取材しました。（記者 新堀潮）
初戦を前に、追い込みをかける宮崎農業の選手たちの中に、ひときわ小柄な選手がいました。
３年生の蛯原絵里さん、チーム唯一の女子選手です。
女子１人だから練習についていけるか、そして周りからどう思われるのかが不安でした。
小学生からプロ野球が大好きでしたが、プレーは両親に心配され、中学はバスケ部に入りました。高校では野球部にマネージャーで入部しましたが気持ちを抑えられなくなり、去年、意を決して選手になりました。
見ているだけだと、やりたくなってしまったんです。
まったくの素人から選手になって、まだ１年。「決めたからには全力で打ち込む」と毎日３時間半の練習を休むことなく続けました。
今ではチームメイトからも認められる存在です。
川島央也 主将（3年）
彼女自身が本当に負けず嫌いで、男子選手と全く同じメニューをハンデをつけずにこなしています。すごい、本当にすごいです。
最初は練習に追いつけなくて、きつくて心が折れそうになったことがありました。でも負けたくなくて、とにかくみんなに必死に食らいついていく気持ちでやってきました。
高校最後の夏。大会の規定でベンチに入れない蛯原さんに、チームからプレゼントがありました。
大事な開幕戦、試合前のノッカーを任されたのです。
試合に出ることはできませんが、自分が練習してきたことが少しでも発揮できると思うとうれしいです。
本番を見据えて練習を重ねること１週間。
蛯原さんの気持ちを、ベンチ入りするメンバーもしっかり受け止めていました。
吉野琉衣 選手（3年）
１球１球を大切にして、蛯原さんのためにもがんばりたいです。
（開幕戦）絶対勝ちます！
みんなのおかげで、１年半プレーヤとして、マネージャーも含めて約２年間やってこれました。“絶対勝って”という気持ちで力強く、１球１球（選手が）全力で追えるような打球を打っていきたいです。
いよいよ当日！
そして迎えた7月8日。
開会式。
開幕戦を戦う宮崎農業は46校の1番最後に入場しました。
蛯原さんも、チームメイトと一緒に堂々の行進です。
そして迎えた試合前ノック。「初めての公式戦のグラウンドに緊張した」と蛯原さん、任された5球のうち、前に飛んだのは2球でした。スタンドからは温かい拍手が送られました。
試合は、相手にリードされる展開が続きましたが、蛯原さんはスタンドからひときわ大きな声援を送ります。
球場に響いていました
試合は、チームメイトの粘りで延長10回サヨナラ勝ち。劇的な幕切れでした。
最後に今までやってきたことが出せて、みんなで勝てたことがうれしい。勝った瞬間は泣きそうだったけれど、笑顔でいたかったので我慢しました。最後まで粘り強くプレーするみんなはとってもかっこよかったです。次も、あせらずに試合を運んで、また勝って校歌を歌いたいです。
川島央也 主将（3年）
スタンドからの声が届いて背中を押されました。目標のベスト8に向けて次の試合も自分たちの野球をやって勝ち切りたいし、自分たちが頑張っている姿を蛯原さんに見てほしいです。
そして、ノックについては。
きょうはがちがちで2球しか前に飛ばなかった。緊張しました。もう1回打てるチャンスがもらえたので、リベンジします。次の試合はミスなく1球1球打てるように頑張りたいです。
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宮崎放送局 記者
新堀潮
入局5年目
大学時代はソフトボール部でした
