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茨城・つくば市 筑波大学ノンアルコール飲料で減酒!飲み過ぎを防ぐ方法とは

執筆者のアイコン画像丸山彩季(記者)
2023年12月27日 (水)

忘年会や新年会が増えてくる年末年始。

ついつい飲み過ぎてしまう、という方も多いのではないでしょうか?

厚生労働省は生活習慣病を高めるリスクのある1日あたりの飲酒量を示していて、男性はアルコール40グラム、女性では20グラムが基準になっています。

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20グラムの目安としては、▼アルコール度数5%のビールでは中瓶1本、▼アルコール度数15%の日本酒だと1合が目安だということです。
※リスクを高める飲酒量の基準であり「適量」ではありません。

 お酒を『ほどよく』楽しむにはどうしたらいいのか。

筑波大学ではノンアルコール飲料を活用して飲酒量を減らそうという研究を進めています。研究の現場や具体的な飲み方について取材しました。

(NHK水戸放送局 丸山彩季記者)

 

「断酒」から「減酒」へ

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健幸ライフスタイル開発センターの吉本尚センター長

筑波大学で長年、アルコール依存症などの研究に取り組んでいる健幸ライフスタイル開発センターの吉本尚センター長です。
2年前(2021年)、大学病院では国内初となる、「アルコール低減外来」を開設しました。アルコール依存症対策ではこれまで、全く酒を飲まない「断酒」が主流でしたが、酒の量を減らす「減酒」を推奨しています。 

県外から通院する50代の男性です。

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アルコール依存症になり、家庭内でトラブルを起こしてしまうなど悩んでいました。断酒は難しいものの、減酒なら継続しやすいと1年以上治療を続けています。

患者の男性
アルコールを減らして、お酒の飲み方を自分でコントロールできるようになりたいと訪ねました。飲酒量は実際減っていると思います。もし酒をやめるという話だと来なかったと思います。

アルコール依存症は潜在的な患者の数に対して、受診率が低い病気だと言われています。
「アル中」や「依存症」と言われたくないなど周囲の目を気にしたり、断酒を嫌がったりするのが主な理由だと吉本さんは指摘します。

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こうした現状があるなか、吉本さんは「断酒」ではなく酒の量を減らす「減酒」を看板に掲げ、依存症の患者だけでなくアルコールに悩む全ての人を対象とするには、まずは受診のしやすさが必要だと考えました。

治療のハードルが下がることで継続率にも成果が出始めていると言います。

吉本さん
従来の外来の継続率では半数の方は途中で受診をやめてしまうことがありました。我々の外来では受診途中でいなくなってしまう率が2割、従来型の断酒をメインとする外来よりも比較的継続して受診しやすい外来になっていると思います。

“ノンアルコール飲料”で生活習慣にも変化

厚生労働省によりますと、アルコール依存症が疑われる人は全国におよそ300万人いると推計されています。
依存症になる前に、より簡単な方法で酒とのつきあい方を見直すことができないかー。

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吉本さんが目を付けたのがスーパーなどで売られている“ノンアルコール飲料”でした。 

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吉本さんらのグループの研究では、アルコール依存症ではない123人を対象に、アルコールだけを飲むグループとノンアルコール飲料を提供して自由に飲んでもらうグループに分けました。

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このうちノンアルコール飲料を提供したグループでは12週間の検証の結果、飲酒量が約30%減少したということです。さらにノンアルコール飲料の提供を終えたあとも8週間の調査を続け、飲酒量の減少が続いていることが確認されたと言います。吉本さんは、単純にノンアルコール飲料がアルコールに置き換わっただけでなく、酒の量が少なくても満足できることに気づくなど生活習慣に変化があったのではないかと分析しています。

吉本さん
お酒の量が減っても、これで自分の生活いけているんじゃないか、このままでもいいんじゃないかなということで生活習慣が変化したのではないかと思います。酒の量を自分で管理してコントロールしていく、そういったときにノンアルを活用して欲しいです。

 

「ほどよく」酒を楽しむには?

とはいえ、ついつい飲み過ぎてしまうという方も少なくないのではないでしょうか? 

飲み過ぎに気をつけながら、お酒とうまく付き合う方法を聞きました。 

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丸山記者
ノンアルコール飲料を飲む適切なタイミングはありますか?

 

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吉本さん
実際に研究に参加された方に聞くと、最初がいいという方は少しおなかが膨れてその後のアルコール量が減ると言う人がいました。途中で飲むと、アルコールを飲むスピードを抑えられる、チェイサーの役割で休む時間ができるので酔いにくくなるという声もありました。最後にノンアル使う方はもうちょっとだけ飲みたいという方がノンアルに切り替えることでうまくいくようです。

 

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このほか、飲酒量などの記録をつけて“見える化”するのも効果的だということです。 

吉本さん
ダイエットと一緒なんですけど、体重が減った、お酒が増えたなど目に見えるようになると、それだけでもお酒の量が減ることが分かっています。

吉本さんは、健康に配慮した飲酒の方法を、今後も支援していきたいと考えています。 

吉本さん
お酒の量を減らしてみたいなとか、見直してみたいけど何をしたらいいのかなとか、自分でちょっと試してみたけどうまくいかないという方が結構いらっしゃる。研究のデータを出して根拠のある方法として、背中をちょっと押してあげることで変化が起きやすいと思います。

実は過剰なアルコール摂取は世界的な課題の1つで、国連の持続可能な達成目標(SDGs)にも含まれています。

過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、「ノンアルコール飲料」が挙げられますが、吉本さんによりますと、これまでノンアルコール飲料の提供が及ぼす飲酒量への影響についての研究データはなかったということです。 

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吉本さんは▼性別による効果の違いや▼少量のアルコールが入っている「アルコールテイスト飲料」といった商品についても効果が出るか、研究していきたいと話していました。

コロナ禍による在宅勤務、また5類移行による外出機会の増加といった社会の変化によって飲酒が増えたという方もいると思います。

年末年始のこの時期に、改めてお酒とのつきあい方を見直して見てはいかがでしょうか?

 

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