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日立市・東海村 車暴走事件-証言「狙っている感じでした」

執筆者のアイコン画像喜多美結(記者)
2023年12月22日 (金)

今月(12月)6日、茨城県の日立市役所前の広場と東海村役場に相次いで車が突っ込み、このうち、日立市の事件では、障害福祉施設のイベントに車が突っ込んで、3人が重軽傷を負いました。

このイベントに参加していた施設の関係者がNHKの取材に応じ、当時の緊迫した状況を話してくれました。

20231220k_1.jpg事件があったのは今月6日午後1時前、日立市の市役所前の広場に黒い車が突っ込み、1人が骨を折る大けがをし、2人が軽いけがをしました。

アクセルふかす音が

20231220k_2.jpgこの日、日立市役所前の広場では、市内の11の障害者福祉施設が参加して施設の利用者が作った雑貨などを販売するイベントが開かれていました。

20231220k_3.jpg日立市の施設で就労支援を担当している主任の字原 正幸さんは、テントのブースで施設の利用者5人とともに販売をしていました。異変があったのは、お昼の休憩のあと、販売を再開しようと施設の利用者と一緒に準備をしていたときでした。

20231220k_4.jpg就労支援事業所 まゆみの里 主任  字原正幸さん
車のアクセルをふかす音が聞こえまして不審に思いました。駐車場の方まで暴走して、そこで1回車が止まりました。

販売品がはじけ飛んだ

20231220k_5.jpg字原さんの証言をもとに作成した施設のテントの配置図です。最初に敷地に入ってきた車は周囲のものを壊しながらまっすぐ進んだといいます。 

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就労支援事業所 まゆみの里主任  字原正幸さん
暴走した時には、たくさんのテントや販売品など、いろんなものがはじけ飛びました。『危ない』とか、『キャー』といういろんな声が混ざった悲鳴が聞こえました。最初はみんなぼう然としてましたね。何が起きたのっていう状態でした。

 

助けようと集まった人めがけて

20231220k_7.jpgそして字原さんの記憶では、暴走した場所の近くには倒れていた人が3人いたといいます。車は1度止まりましたが、20秒ほどで動き出し、今度は方向転換しました。そして、倒れた人を助けようと集まった人たちの方を向いたといいます。

 

就労支援事業所 まゆみの里主任  字原正幸さん
車はアクセル全開で、ひかれた人を助けようと集まっている人に、めがけてくるような感じで突進していきました。初速があまりにも違うのでさすがにみんなびっくりして、逃げろっていって逃げました。肌感覚ですけど、時速40キロか、50キロはあって速い印象でした

 

突っ込まれていたら何人死んでいたか

20231220k_8.jpgそして暴走した車は、字原さんの隣の施設のテントにぶつかっていったといいます。

就労支援事業所 まゆみの里 主任  字原正幸さん
たまたま、右側にそれてくれたからよかったんですけど、私たちに突っ込まれていたら何人死んでいたかも分かりません。そのときは恐怖しか感じませんでした。死んでもおかしくないと思いました。

また、この時、字原さんの施設の利用者が、運転手の表情をみていました。

就労支援事業所 まゆみの里 主任  字原正幸さん
施設の利用者さんだったんですけども、運転手は、何か狙いを定めるような感じで真顔でなんかこう迫ってきたと言っていました。

20231220k_9.jpgこのイベントの広場には、当時、客を含めおよそ50人がいたとみられています。 

“買ってくれた人の笑顔をみられる貴重な場”

20231220k_10.jpgテントには、クリスマスリースやキーホルダーなど、障害のある人たちが自身の就労につなげたいと製作した品々が並んでいました。字原さんの施設では、利用者たちが意欲や集中力の持続が難しい自身の障害と向き合いながらこの日の販売会に向けてこつこつと作り続けてきたといいます。

就労支援事業所 まゆみの里 主任  字原正幸さん
みんなは、今回のイベントに参加することが一つの目標でした。自分が作ったものが売れて商品を買う人の笑顔をみることができる貴重な場で、当日参加した利用者はふだんは施設の中で作業しているので、外に出られるイベントをとても楽しみにしていました。

 

“強い憤り” 負けない気持ちを見せていきたい

20231220k_11.jpg字原さんは施設の利用者たちの思いを踏みにじり、恐怖を与えた行為は許せないといいます。

就労支援事業所 まゆみの里 主任  字原正幸さん
車の暴走は何かを狙っていく感じでした。だから、人をひこうとしてるんだという感じがしました。事件の真相がどうであれ、社会で自立できるよう皆さん頑張って日々、この日のために作ってきたものをすべて壊されたことはとにかく悔しいし、とても強い憤りを感じます。今回の事件でイベントに参加したくないと話す利用者もいます。でも、こういった事件に負けないぞという気持ちをこれからも見せていきたいと思っています。

 

 

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