"そもそも病気にならない"鹿嶋の挑戦
山崎空見(ディレクター)
2023年10月13日 (金)
人口10万人あたりの医師数が全国ワースト2位の茨城県。
全国平均253.66人に対し、茨城県は約53人下回る200.31人と医師不足が大きな課題となっています。さらに茨城の中を地域別で見ると、鹿行地域が101.06人と最も深刻です。
その鹿行地域にある鹿嶋市では、「そもそも病気にならない!」という新たな発想で市民の健康を守る取り組みが始まっています。
(取材:NHK水戸放送局 山崎空見ディレクター)
市民ひとりひとりの“健康意識”を高める
鹿嶋市で毎月開かれているスポーツイベント。
このイベントは市が保険会社の協力を得て始めたもので、市民は自由に参加できます。
会場では、血管年齢や握力などの測定も受けられ、市民に健康への意識を高めてもらいます。
年を取って体のことが分からなくなっていても、こういうとこで自主的に調べられるのはいいことだと思う。月1の健康診断みたいなもん。
ご年配の方でリピーターになっていただいている方もいます。そういった方々が楽しめる機会を今後も作っていきたいです。
医師不足の打開策は“そもそも病気にならない”
このようなイベント開催の背景にあるのが医師不足。
茨城の中でも医師不足が深刻な鹿嶋市ですが、一方で高齢化が進んでいて健康に不安を抱える市民が増えています。
鹿嶋市は、医師に頼らずに市民の健康を守ることを迫られているのです。
全国的に医師不足の中、鹿嶋市だけ医者を増やすというのは多分むずかしい。医者を充足できないのであれば、“そもそも病気にならない”仕組み・取り組みをやればいい。
毎日ウォーキング きっかけは“スマホのアプリ”
こうした発想によって市が今年度から進めているのが、市民に運動する習慣をつけてもらう取り組み。最近、ウォーキングを始めた青貫邦子さんです。
ウォーキングを始めたきっかけは、市が導入を推進しているスマホのアプリ。スマホを持って歩くと、歩数や消費カロリー・距離などのデータが確認できます。
アプリを活用したこのシステムは、歩数などの運動データが自動的に保険会社に送られます。そして、運動の継続を促すメッセージが定期的に届く仕組みです。利用料はかかりません。
また、スマホの操作に慣れていない高齢者のためのサポートも充実しています。青貫さんもアプリを使い始める時に丁寧な説明を受けて助かったそうです。
ちょっと見守られてる感じでうれしかったですね
さらに、歩数に応じたポイントをためていくと、ジュースなどと交換できるチケットがもらえ、ゲーム感覚で利用できます。
青貫さんはこのシステムのおかげでウォーキングを続けられていると言います。
毎日毎日のことなので、もう習慣化されました。いまでは病院にかかることもないし、風邪も引かなくなりました。自分で自分の健康を維持するのは大事かなって思うんですよね。『なんでも病院行っちゃえ』じゃなくて、自分で健康を守る!
課題は“利用者の少なさ”
しかし、このアプリの活用はまだ市民に広く普及していません。
市と保険会社は利用者への聞き取り調査をおこない、普及を進めるための方策を検討しています。
健康に関する取り組みも、楽しいとか面白いって重要な要素になってくるんですかね?
そうですね。あと、グラフ化されて自分の行動が一目で分かるというのはやはりいいですね。
グラフ化というところを、これから市がやっていく活動の中でどんどん市民に提供するようになると、もっとやっていただけるようになりますかね?
そう思いますね。
医師不足の解消が困難な中でいかに市民の健康を守るか、行政の手腕が問われています。
少しでもお医者様とか病院の負担を減らせるように、そもそも病気にならない人を増やしていく。それが市民の幸福につながっていくのであれば積極的に取り組んでいきたいと思います。