再び頂点を目指して 茨城・明秀日立 サッカー選手権大会に挑む
若本梨恵子(ディレクター)
2023年10月20日 (金)
茨城県勢として44年ぶりの頂点でした。
明秀日立のサッカー部は8月に行われたサッカーのインターハイで、静岡学園や青森山田など全国の強豪校を次々と撃破し、学校としても初の優勝を果たしました。
いったいどんなチームなのか。強さの秘けつはどこにあるのか。
全国高校サッカー選手権で、再び全国の頂点を目指すサッカー部を取材しました。
いば6で放送したリポートはこちら
「挑戦」合言葉に
明秀日立サッカー部はことしで創部27年。2012年に全国大会初出場を果たして以降、県内外から多くの生徒が集まり、現在は134人が所属しています。
チームを日本一に導いたのが39歳の萬場努監督(まんば・つとむ)です。23歳の若さで指導者の道へ進み、チームを率いて16年目になります。
合言葉は「挑戦」。
技術や体力だけではなく、「心の強さ」も育む指導を続けてきました。
インターハイでは1戦ずつたくましく成長していけた。根気強く戦う精神力もすごく充実していた。優勝して日本一になったことよりも、「6試合勝ち切ったぞ」ということのほうが喜びは本当に強かった
強さの秘けつ①フィジカル
萬場監督はチームに特別なエースはいないと話します。インターハイではチームの総合力で勝ち抜いてきました。その強みは激しいプレッシャーでボールを奪う力と、相手に当たり負けしないフィジカルの強さです。
強い体を作るのはグラウンドでの練習だけではありません。
どんぶりに山盛りのご飯は1食で800~1000グラム。これだけの量をぺろりと平らげます。部員の約7割が寮生活を送っていて、毎日の食事から試合の最後まで走り抜くスタミナを養います。
強さの秘けつ②独自の練習法
普段はセンターバックだけど最近はサイドバックをやることが多い
サッカー部では選手たちが得意とするポジションだけではなく、複数のポジションをこなせるよう練習を行っています。中には、インターハイではフォワードとして出場しましたが、今はサイドバックとして練習に取り組んでいるという選手もいました。選手同士が互いの立場を理解することで、試合中のどんな状況でも高いチームワークを発揮させようというのです。
萬場監督は自身が現役時代に複数ポジションを経験したことから、この練習法を取り入れているといいます。
試合はハプニングの連続なので、それに瞬時に対応するためにはプレーの幅がすごく大事だと思っている。フレキシブルな対応ができるようにと常に心掛けている
さらに選手の将来性にも目を向けています。
1つのポジションしかできないと、選手の強みにはならない。育成年代のうちに様々なポジションを経験させることは、すごく大事なこと。卒業後も自らの発想を持って行動できる人物になってほしいという思いがある
生徒たちの将来を思い、選手としてだけではなく人としての成長を促す指導を続けます。
大きな壁を乗り越えた先に…
チームをまとめるのは3年生で部長の若田部礼(わかたべ・らい)選手です。強い責任感を買われて抜擢されました。
サッカーに集中できる環境を自分たちが作れるようにしている。学校で課題が出た時に練習にでられないことがないようにみんなに促している
この春、チームは大きな壁にぶつかりました。関東大会の県予選でまさかの2回戦敗退。普段の部活動でも、用具がきちんと所定の場所に片づけられていないなど些細なことが積み重なり、チーム内に気のゆるみがあるとして、監督から2週間の活動停止を言い渡されました。
日々の練習の記録などをつけている若田部選手の当時のノートにも、この期間、練習メニューがなにも無かったことが記されています。
焦りはあった。ほかのチームは強くなっているのに「自分たちはどうしたらいいんだろう」という気持ちがあった
活動停止中の2週間、チームメートと何度も話し合い、サッカーとの向き合い方を見つめ直したといいます。
本当に「3年生がチーム全体を引っ張っていくんだぞ」という気持ちを持ってやろうと話し合いをしていた。それを乗り越えた先に(インターハイ優勝という)いい景色が見られたので、自分たちを見つめ直す経験をしてよかった
再び全国の頂点を目指して
サッカー部がチーム力の底上げに取り組む中、攻撃面で期待されている1人が地元、日立市出身の熊﨑瑛太選手(3年)です。インターハイでは準決勝で2得点の活躍を見せるも、決して満足はしていません。積極的なボール奪取からゴールを奪い、攻撃の要となることを目指しています。
自分のゴールでチームを勝たせたい。全国に挑戦して、もう1度日本一になりたい
自分たちがふんぞり返って「チャンピオンだ」なんて言えるような感覚は全然ない。一戦必勝だというのは本当に大事だと思っているので、まずは県内でしっかりと代表権を取る、その中で力を付けながら戦っていきたい
選手権大会に向け、監督や選手は「チャレンジャー精神を持って戦いたい」と話してくれました。
日本一になっても慢心せず、常に「挑戦」を続けるサッカー部。
次なる目標に向かって強く、そしてたくましく戦う姿を見てみたいと感じました。