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制服ぬぎっぱなし、お弁当箱出さない、宿題やらない…子どもはいつになったら、“ちゃんとやる”?

学校から帰ってくると制服は脱ぎっぱなし。洗濯物を出さない。学校で使った水筒やお弁当箱を出さない。「やることを先にやって!」というと「あとでやるから」と言うけれど、結局やらない。そしてついに親のいうことは無視。本人は…ダラダラしている!

これは我が家のことか!?と思った人も多いのでは? 

いったいなぜ、子どもたちはダラダラするのでしょうか。子育て経験者や、小児神経学の専門家に話を聞いていくと子どもたちは必ずしも怠けているわけではないこと、そして原因は「思春期の脳」にもあることが分かってきました。

(ディレクター くぼまどか)

子どもは疲れている!?

神奈川で暮らすUさん(40代女性)は、2人の娘を育てています。今は大学生となった娘たちが思春期の頃は、学校から帰るとダラダラするばかりで、イライラが募っていたと言います。

Uさん

特に、長女はバレー部の部活を終えて帰宅するとすぐにソファーでダラダラ。私が「脱いだ靴をそろえて!」「お弁当箱出して!」と声をかけてもなかなかやらず、結局「早くやりなさい!」と大声で怒っていました。

長女

中学の時に部活本当にすごい忙しくて、「家くらいは」って思っちゃって。学校でこんなに疲れててつらい思いしてるから、家ぐらいはくつろぐ場所であってほしいって思っちゃってたから…

そんなある日、Uさんは、たまたま長女の部活での様子を見て、気持ちに変化が訪れたといいます。

Uさん

先輩とか、先生もすごい厳しい部活だったんで。きびきびと「ハイッハイッ」みたいな感じでやっているし。仲間と笑顔でがんばっているみたいなのを見ると、じーんとしちゃって。「なんかすごい頑張ってるな、あの子の世界で」と思って。


私は家でダラダラしているところだけ見てすごいイライラしてたけれど、そんな頑張ってるって認めないとダメだな…と。

Uさん

けれど、また家でダラダラする姿をみて、またイライラして…そして、また翌週試合行って「頑張ってるから認めなくては!」と思う…みたいなことの繰り返しでした。

「家ではダラダラしているのは、部活で頑張っているからなのではないか」こうした気づきをきっかけに、お弁当を出さなくても、玄関で靴をそろえなくても、少しずつ許容できるようになったと、Uさんはいいます。

でも…いくら疲れていても、お弁当出すくらい、制服をかけるくらい、できるのでは!?

そのあとに、ゆっくりすればいいのに!とイライラを募らせている親御さんも多いかもしれません。

ところが、取材を進めると「子どもがダラダラを続ける」のには、さらなる理由があることが分かりました。お話を聞いたのは、小児神経学が専門の星野恭子さんです。

星野恭子さん 
瀬川記念小児神経学クリニック 理事長
発達障害のある子どもの診察や家庭生活の指導を行う

「やることを先にやる」は「できない」

くぼディレクター

「学校から帰ったら制服をハンガーにかける、お弁当箱を出す、宿題をする…など、やることを先にやって、そのあとゆっくりしてほしい。でも、子どもはダラダラしてまったくやらない!」と悩む親の声がたくさん聞こえてきます。

星野さん

悩んでらっしゃる保護者の皆さんには、思春期の脳の仕組みを知ってほしいと思います。


思春期というのは脳の発達が目覚ましい時期です。特に脳の「前頭前野」という部分は、ちょうど8歳ぐらいから15歳ぐらいまでにぐっと発達する部分で、「理解」する機能と、「感情」をつかさどる機能などがありますが、それらが同時に発達しようとしている最中です。さらに脳内ではホルモンも大量に分泌され始めるため、脳が“混乱しているような状態”にあります。思春期の時期は体にも大きな変化が起きますが、脳の中も同じなのです。 


脳の発達、体の発達、そしてホルモンの影響。この3つがうまくバランスを取りながら、心身ともに成長をしてくれればいいのですが、そうはいきません!発達の過程の中で、自分でも自分の行動をコントロールしにくいような、アンバランスさが激しい時期だというふうに考えていただければと思います。

脳が“混乱しているような状態”に

前頭前野の発達は、15歳から20歳まででピークを終えると言われています。ピークを終えると、先のことを見通して判断し、効率よく行動を起こすことができます。

しかし中高生のうちは、この機能は発達途中の段階。「先にやったほうがいい」と理解できても、自分で優先順位をつけて「行動を起こす」ことは難しいのです。

くぼディレクター

中学生や高校生は、親と対等に話ができるようになり始めますから、「大人と同じ」と思ってしまいがちですが、そうではないんですね…。

星野さん

そうなんです。親は、「もう中学生だし、親が言っていることは分かるでしょう。分かっているんだったらやりなさい!」というふうに思ってしまうと思うんですけれど。


『そこができない』と言うのが、まさに思春期です。

さらに、前頭前野が発達し感情をつかさどる機能が成長することで、「自我」も大きくなり始めます。ただし、感情をコントロールするのはまだ難しいので、例えば親が「これをやりなさい。あれをやりなさい」と指示したり、その理由を正論で言ったりすると、「いやだ!」「うざい」「ほっといて!」となるわけです。

子どもに言い返されると、イライラするし、グサっとくるんですけども、子どもたちがそのような言動をとってきた時には「うちの子は成長しているんだな」と思ってください。「脳が混乱している時期なんだな、発達しようとしているんだな」とちょっと余裕をもって、一歩引くような気持ちで子どもを観察して、理解してあげるような気持ちで、お子さんを見ていただけるといいかなと思います。

脳が発達途中の思春期… それでは、親はどうすれば?

子どもの脳が発達段階にあることを理解したとしても、やっぱり親からすると、子どもにはさっさと準備を済ませて、睡眠時間を確保してほしい…。日々忙しいのに目の前でダラダラされるとイライラしてしまう…。そこで、親はどうすればいいのか、星野さんに聞きました。

①「全部を求めず、やってほしいことを3つくらいに絞る」

まず、思春期の子どもに「全てをきちんとこなすこと」を求めても、それはできないとお考えください。お勧めしたいのは「やってほしいこと」を3つくらいに整理することです。

私がクリニックで出会う保護者の皆さんは、子どもにどう接するか悩んでいる方も多いのですが、子どもにやってほしいことは何かと聞くと、7つも8つもあるんです。でも、そもそも脳が混乱しているような状態では、やらなくてはならないことが7つも8つもあっても、子どもの脳は優先順位をつけて行動に移すことはできません。3つくらいが、限界だと思います。

たとえば・・・

「脱いだ制服をちゃんとハンガーにかけてほしい」
「カバンの中に入っているゴミを捨ててほしい」
「学校で使ったお弁当箱を出しほしい」

保護者からしたら「お弁当箱を出せて当たり前だから、もっとたくさんのことをやってほしい」など、3つの目標はとてつもなく低いレベルに感じるかもしれません。でも、そこは、親とは脳の発達が違うことを思い出して一歩引いて!子どもが試行錯誤するのをあたたかく見守りましょう。

反抗期なので素直に反抗せず、親から見てもわかりにくいのですが、子どもは「これはできた」「これはできなかった」と自分で考えられるようになります。すると、その後、子ども自身のタイミングで4つ目5つ目をやる場合も多いです。それは、子ども自身で「じゃあ、これもやった方がいいのかな」と、自分で考えられるようになっているからでしょう。もちろん、毎日このようにうまくいくわけではありません。


子どもたちの発達のスピードというのは、一人一人全然違います。すぐに結果を求めずに、今の時点で「うちの子だけできていない」とか思わないで、少し長い目で、お子さんを信じるような気持ちで3つ決めてみてください。

②「小さなことでも、できたら褒める」

星野さん

褒めることは、特に成長期の脳には、とてもいいことです。人は、ほめられると脳の中で「ドーパミン」という物質が活性化して、やる気が起きたり、ものごとが判断できるようになったりするからです。


とはいっても、褒めるのって意外と難しいですよね…!クリニックにいらっしゃる保護者のみなさんからは「子どもが思春期で、反抗的な態度を取るので、ほめづらい…」という声をよく聞きます。


でも大丈夫です。大げさにほめなくても「ありがとね」とか「できたね」とか、さりげない言い方でもOK。朝、「おはよう」って言われたら「あれ、なんか今日元気ね」とか「お弁当箱出してくれて助かる〜」のような、軽い一言でも。

③「成長している部分を探して、認める」

また、保護者としては、日常の中で、つい「できていないこと」に注目しがちですが、視点を変えれば、「できていること」はあるはずです。たとえば、ニュースを見ているときに子どもが自分の意見をいうこともありますよね。そんな時に「そんな考え方もあるんだね」と伝えることで、子どもからすると「認めてくれた、耳を傾けてくれた」と思うこともあると思います。片づける、などの行動ばかりに注目するのではなく、他に成長している部分を見つけていく、という視点も大事だと思います。

褒めれば脳が発達し、理解をする機能も感情をつかさどる働きも活性化して、優先順位をつけて行動を起こすことができるようになっていきます。「やりなさい!」と命令するのではなく、「褒める」ことが大事なのです。

また、褒めることは『自己肯定感』を育てるためにも、とても大切です。少し大きな話になりますが、『自分というのは、生きていていい人間なんだ』『自分は、存在として意味があるんだ』と感じられることは、人が生きていく上で、とても大事なことだと思います。そのような気持ちは、認められたり、褒められたりすることで育まれます。褒められることで、子どもは自分を認められるようになり、「自尊心」「自己肯定感」が育っていくのです。

そもそも、小学校高学年から中学生、高校生の間は、まだ自己肯定感が確立されない時期です。ですから、この時期に親も意識して「褒める」ことは、「自分は生きていていいんだ」という気持ちにすらつながっている、という意識を持てるといいですよね。

ちなみに…

番組で取材したご家庭の子どもたちからも、もっと親に褒めてほしいという声がよく聞かれました。

Mさん(大学4年生)

中学校のころを振り返ると、親からあまり褒められていなかったな…と思います。部活で頑張っていて疲れていたので、家でダラダラしたい。でも「制服かけて」「靴揃えて」「お弁当箱だして」とうるさく言われてばかりで、私が言うこと聞かないとだんだんヒートアップしてきて、最終的には「早くやりなさいよ!」って怒鳴られていました。でも、部活での頑張りや、英語だけはすごく得意で成績が上位だったので、もっと、自分ができてるところは、ちゃんと認めて褒めてほしかったです。褒めてもらえていれば、できていないところを指摘されても、バランスが取れたんじゃないかな…って思います。

褒められるとやる気にもなるし、「褒められて伸びる」って言いますけど、もっと褒めてほしかったです。

Tさん(大学4年生)

私は結構、親に、褒めてもらっていたと思うんですが、それはあえて、学校であった良いことや自分が輝いた瞬間だけを親に報告して、「すごいでしょ」って話して、褒めてほしいという行動をとっていました。


今思えば、そうやって、自尊心を高めていってたのかなと思います。そんな行動をとったことで、親にたくさん褒めてもらってはいたんですけど、今でも、いくら褒められてもうれしいです。

視点を変えて、成長を見つける

④「時にはご褒美で“釣って”もいい」

脳が未発達なので、「やらなくてはならない」と分かっていても行動に結びつかないというのが思春期、ということは繰り返しお伝えしてきました。でも、思春期の子どもに、どうしてもやってほしいことがあれば・・・「ポイント制」にするとか、「何か月できたらご褒美をあげる」という方法も一つはあると思います。

ご褒美がないと動かなくなるのでは?と心配するかもしれませんが、子どもの脳が発達すれば、ご褒美がなくてもできるようになってきますので、「それまでの短い間」だと思っていただければいいと思います。全然やる気がないのに無理やりやらせるよりは、ご褒美があることで「え?じゃあ俺やろうかな」と、やる気をもって、やったりするわけですよね。そこで、できたときに「ありがとう」「助かるわ」と褒める言葉をかけると・・・先ほどもご説明したように脳が活性化し「もっとやろうかな」という思う場合もあります。

ちなみに、おとなになると「社会的報酬」といって、お金や物をもらうのではなく、「社会の役に立っている」ということでやる気が起きる場合もあります。でも、思春期の子どもたちは、まだそういう感情はなかなかわきにくいので、目の前の「物」とか「親が喜んでくれた」ということで自発的に動くきっかけになることも多いです。

でも将来的には、「物で釣る」ということをしなくても、脳が成長して自分で考えられるようになってきます。思春期の時期のひとつの手法として、試してみてもいいと思います。

⑤「怒る」はいざというときに

保護者が大きな声を出したり、怖い表情をして、本気で怒ると、それは子どもに伝わります。ですが、毎日怒っていたら、子どももそれに慣れてしまいます。「本気で怒る」というのは、「いざというとき」にとっておいていただきたいと思います。たとえば、命の危険があるときや、犯罪に巻き込まれる可能性があるときです。

「あなたのことが本当に心配」「こんなことをしないでね」と伝えたいときにとっておけるといいと思います。

親が「一歩引く」というのは簡単ではないのかもしれません【ディレクター取材後記】

子どもの脳は未発達、だからこそ親は「一歩引いて見守る」という考え方を紹介しましたが、実際に日々子どもを育てている方たちを見ていると、なかなかこの「一歩引いて見守る」ということが難しいのではないかと、実は、感じています。

家庭では、保護者は、日々やることがたくさんありますよね。食事の準備、片付け、掃除、洗濯、自分の用事や子どもの学校の準備、テスト期間、習い事や進学のことなど、たくさんのことに目を向けなければなりません。毎日毎日、どうしても余裕がなくなってしまうもの。

そこで「一歩引く」ことを実現するために、どうすればいいか?子育て経験者たちの言葉を追加でいくつか紹介したいと思います。

23歳と、大学4年生の娘を育てたMさん

育児全力投球で、情熱を持って子育てをしていたので、『この子に、ちゃんとしてほしい』という強い思いを持っていて、思い通りにならないとイライラしていました。でも、子どもが思春期に入って、ぶつかるようになって、『親の考えや理想をおしつけてはいけないのではないか』と気づき、そのような気持ちを捨てるように努力しました。

26歳、大学4年生、高校3年生の3人の息子を育てたLさん

子どもは『自分のコピーのような、自分の考えをわかってくれる存在だ』と思っていました。でも違いました。息子に『お父さんとは時代も違うし、考え方も違う』と言われて、親自身の考え方も変えないといけない、と。親が一方的に育てるような感覚を捨てて、子どもの人生を支える脇役のような考え方に切り替えることが必要だったと思います。

ダラダラする子どもについては「あきらめるしかない!」という言葉を使っている保護者の方もいらっしゃいましたが、要するに、親子の関わり方に変化が必要なタイミングですよ、というサインなのかもしれない、と思います。

思春期に突入するのは10歳頃。小さい時から愛情いっぱいに手をかけて、目をかけてきたお子さんとの接し方を切り替えるというのは、そう簡単ではないことだと感じましたが、接し方を変えた家庭は、お子さんもそれを感じていて、いい関係を育んでいたように感じました。

また、星野さんによると、今回取り上げた「ダラダラする」という子どもの行動については、学校生活で緊張状態が続いて疲れているから、という原因のほかにも、睡眠時間が慢性的に足りていない、親には言えないストレスがある、病気のサイン、ということも考えられるということです。様子がおかしいと感じた場合には、医師に診察してもらうことも考えてほしいということです。

みんなのコメント(4件)

感想
1000
20代 女性
2024年5月2日
うちのお父さんがまさにこれで、弟にいつもダラダラするな!と怒りまくっています。解決法はないんだろうなーと諦めていましたが、このコラムを読んで、納得しました。このコラムをお父さんに送ってみます。
感想
シフォン
40代 女性
2024年4月28日
私の事?!と思った保護者の方 沢山いらっしゃるでしょうね!!
原因が分かって スッキリ!
3つに絞ること、小さな事でも 出来ている時に 誉める!!
やってみます。素敵なヒントをありがとうございました!!
感想
みちみち
50代 女性
2024年4月26日
まさに今わが家で直面している悩みです。制服を脱ぎ散らかしどころか、制服のままベッドに潜り込んでそのまま寝てしまうことも。疲れているんだな、と同情していると夜に起き出してスマホをいじってるのをみるとイラッと怒鳴ってしまったり。でもこれらが中学生の脳の特性だと知って少し気持ちが楽になりました。わが子は将来ろくな大人にならない、と自分の体調が悪くなるくらい悩んでいたので。ありがとうございます。
感想
迷える親羊
40代 女性
2024年4月26日
ちょうど10歳になる娘。
少しでもやらないといけない事を促すと「うるさい」と小声で舌打ちする我が子。
頭から火が出るほどイラッとして、娘以上に暴言を言ってしまう私…「こんなんじゃダメだな…」と思い悩む。
この記事を見て思い当たるところが多々あり、そういえば自分自身も思春期の頃そう思っていたなと忘れていた気持ちを思い出したりしました。
次に娘にイラッとしても、この記事の事を思い出して少し間を取ってみようと思います。
この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。