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石鎚山で無断伐採 四国の固有種も被害

  • 2024年04月16日

西日本最高峰で国定公園にも指定されている石鎚山(いしづちさん)で、無断で複数の木の枝が切られ、岩に塗料で矢印が描かれているのが見つかり、林野庁愛媛森林管理署の職員などが現地調査を行いました。警察などにも相談していて、今後の対応を協議することにしています。
特集の内容はNHKプラスで配信中の4月11日(木)放送の「ひめポン!」(NHKGTV午後6時10分~)でご覧いただけます。

画像をクリックすると見逃し配信が見られます!見逃し配信は4/18(木) 午後6:59 まで

4月2日から3日にかけて、石鎚山の山小屋のスタッフが山頂から東側の登山道に生えている樹木の枝が複数切られていたり、塗料で岩に登山ルートを示すように矢印が描かれていたりするのを見つけました。

このほか枝にオレンジ色のテープが巻きつけられている木もあり、スタッフが警察と関係機関に連絡しました。

無断伐採 四国の固有種にも被害

これをうけて4月10日、国有林や山を管理する愛媛森林管理署と県自然保護課の職員などが現地調査を行いました。

調査の様子

調査では、四国固有の樹木で愛媛県レッドデータブックで「準絶滅危惧」に指定されている「シコクシラベ」のほか、「シャクナゲ」「ツツジ」など50本ほどの木の枝が切られていて、被害はおよそ500メートルにわたっていたことが分かりました。

切られた「シコクシラベ」の枝

このうち、標高1850メートルほどの現場では「シャクナゲ」の枝が切られていました。現地調査に同行した山小屋のスタッフによりますと、初夏にはシャクナゲの花が咲いて、まるでトンネルのようになる場所だったということです。

切りとられたシャクナゲ

愛媛森林管理署は、登山者が道を歩きやすくするために木を切ったとみていて、森林法などに違反する可能性もあることから、警察や県などと相談して今後の対応を協議することにしています。

林野庁愛媛森林管理署 藤平康則 署長

藤平康則 署長
「貴重な原生林が残る地域で枝が切られたのは非常に残念です。今後さらに保全地域であることの周知に取り組んでまいりますが、利用者される登山者にも、理解していただいたうえで登山をしてほしいです。」

現場の山域は

石鎚山の山頂部

今回、無断で木の伐採がされたり、目印がつけられたりしていた場所を確認します。オレンジの線が一般の登山道です。そして、青い線が被害が確認された場所で、山頂から東に伸びる尾根の上にあたります。標高はおよそ1700メートルから1900メートルほどです。

ここは切り立った岩場が続くため、難易度が高く、一般の登山道に比べて危険も伴います

登山の安全に関わる問題

石鎚山に詳しい地元の山岳ガイドは、こうした場所に勝手に道を切り開くことは、登山者が迷い込んで遭難を誘発するおそれがあり「人の命に関わる問題だ」と指摘しています。

山岳ガイド 松本智広さん

「登山経験の浅い方が迷い込むと、滑落や道迷いなどの事故につながるおそれがある。登山者が歩きやすいように道を整備したつもりかもしれないが、勝手にルートを開いてしまうのはやめていただきたいです」

山岳ガイドの松本さんは、関係機関の依頼を受けて石鎚山の登山道整備を行っています。また、この山域の登山用地図の監修もしていますが、今回の現場は地図にも掲載がない熟練の登山者が挑戦するようなルートで、一般の登山者が不用意に迷い込まないように、あえて道の整備もしていない場所だということです。

愛媛森林管理署では、一般の登山者が誤って立ち入ることがないよう、注意を呼びかける看板を設置することにしています。

被害は過去にも

取材を続けると、これまでも同様の被害が続いていることがわかりました。
愛媛森林管理署の管内では、確認されているだけでも、2022年に無断で樹木を伐採した事案が2件ありました。このうち1件は、石鎚山系の別の山で広範囲にわたって「シコクシラベ」が切られていました。また、2023年には高山植物の盗掘もあったということです。

2022年6月撮影

取材後記

今回の被害は、ただ石鎚山の貴重な植物が無断で伐採されたというだけではありませんでした。
勝手に登山ルートを開く行為は「登山者の安全」そのものにも関わってくる問題であることがわかりました。

また、経験を積んだ登山者の中には「地図とコンパスを持って、手つかずの自然を行く」という楽しみ方をする人もいます。そうした登山者にとってはその機会を奪われることにもなります。

より多くの人が、それぞれの経験や目的に応じて、安全に登山を楽しむためにも、個人の都合で自然を傷つけることはしてはならないと感じました。


特集の内容はNHKプラス配信終了後、下記の動画でご覧いただけます。

登山道整備の課題についての記事はこちらからも

  • 岡部馨

    岡部馨

    NHK山岳取材班のカメラマン。「えひめふる里山歩き」のコーナーを担当。

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