愛媛県今治市大三島の“神の山”~鷲ヶ頭山~
- 2024年03月28日
愛媛県内の身近な里山の魅力を紹介する「えひめふる里山歩き」。
このコーナーでは、おすすめの山の情報を募集しています。
今回届いたメッセージがこちらです。
ということで、その「鷲ヶ頭山」に山登りが大好きな 永井伸一アナウンサーが登りました。
(NHK松山放送局 永井伸一 アナウンサー/岡部 馨 カメラマン)
特集の内容はNHKプラスで配信中の「ひめポン!」(NHKGTV午後6時10分~)でご覧いただけます。
前編(3月25日(月)放送)
後編(3月26日(火)放送)
今治 大三島・鷲ヶ頭山(わしがとうさん)
瀬戸内海に浮かぶ今治市の大三島。
その島で最も高いのが標高436mの「鷲ヶ頭山」です。山頂にある鉄塔が目印です。
今回のルートです。ふもとの「大山祇神社」を起点に、まず一つ目のピーク「安神山」に登ります。そこから尾根伝いに「鷲ヶ頭山」を目指します。一般の登山道とは別に、鎖場がある難易度の高い道もあり、今回はその鎖場に挑戦する計画です。
ご案内頂くのは、登山ガイドの重川真粧美さんです。鷲ヶ頭山の魅力を聞きました。
ここ大三島は島全体が神様の島なんです。かつて鷲ヶ頭山はそのご神体になる山だったそうですよ。だから昔は神の山って言われていたそうです。それと、なんといっても景色ですね。とっても景色がいい山です。
日本総鎮守・大山祇神社
最初に訪ねたのは「大山祇神社」です。
日本全体を守る神様 “日本総鎮守”として古くから信仰を集めてきました。そして、鷲ヶ頭山はかつて大山祇神社のご神体だったともいわれ、神社と深い関わりがある山なんです。
神社の参道を進んでいくと、本殿の正面に大きなクスノキがあります。樹齢2600年と伝わる「乎知命御手植の楠」(おちのみことおてうえのくすのき)です。国の天然記念物にも指定されています。
ここは、いわれがありましてね。
息を止めて、クスノキの周りを3度回ると願い事がかなうんだそうですよ。
せっかくなので挑戦してみることに。
大きく息を吸って、息を止めたままダッシュで3周!
登山の前からかなりキツい準備運動です。
「登山の安全」と「山頂からの景色」さらに「すてきな出会い」もお願いしちゃいました。
神様!願い事が多くてすみません!!
石鎚山より難しい!? 安神山の鎖場に挑戦!
神社の裏手からいよいよ登山開始です。
少し進むと道が2つに分かれました。どちらの道も安神山に続いていますが、左は一般の登山道で、途中には展望台があります。そして、右に進むと、厳しい、厳しい「鎖場」が待ち受けます。
安神山には2か所の鎖場があり、いずれも50メートルほどの長さがあります。重川さんによると、かなりの難関ルートなんだとか。以前ご紹介した「石鎚山」の鎖場は有名ですが、それよりも難しいそうです。
ここは標高は低いですが足場がないので、石鎚山の鎖場よりかなりハードです。
わたくし永井、じつは登山歴30年以上で、富士山や冬の北アルプスにも登ったことがあるんです。
県内屈指の難関ルート、ここは腕試しといきたいと思います。
足場の悪い場所では「三点支持」
ここで登山のワンポイント。「三点支持」のおさらいです。これまでこのコーナーでも紹介してきましたが、足場の悪い場所では両手両足の4点のうち動かしていいのは1つだけ。3点でしっかりと体を支えて行動してください。
ヘルメットをかぶって鎖場にとりついてみると、本当に足場がありません。鎖にしがみついて、腕の力で登っていく感じです。後ろを振り返えると、大山祇神社が見えたり、海が見えたりと、とても眺めがいいんですが、正直、景色を楽しむほどの余裕はありません。とにかく必死でした。
2つ目の鎖を登り切ると最初のピーク、安神山です。
そこで迎えてくれたのは、満開の桜。ほのかにいい香りがしていました。
ストックの使い方
安神山から鷲ヶ頭山にかけては、起伏のある尾根歩きが続きます。
こうした道でおすすめしたいのがストックです。
ここでもうひとつ、登山のワンポイント。
ストックにはどんな効果があるのか、登山ガイドの重川さんに聞きました。
ストックを上手に使うと、ひざや腰の負担が軽くなります。
疲れやけがのリスクを抑えることができますよ。
使い方の注意点。まずは体に合わせた長さの調節が大切です。
ストックを突いた時、ひじの角度が直角になる長さが目安です。
また、握り方にもコツがあるそうです。
ストラップに手を通して、上から握り込むようにすると楽に持つことができます。
続いて、歩き方です。
左は悪い例です。ストックを前に突くと、姿勢が崩れて疲れの原因になります。
右がお手本。写真ように、ストックは踏み出した足のそばに軽く突いて、後方に押し出すように歩いてください。
不思議な岩が並ぶ道
ストックの使い方を確認したところで、登山再開です。
尾根伝いに進んでいくと、ひときわ存在感のある岩が見えてきました。空に向かって高く突き出た「エボシ岩」です。登山道にはこうした奇岩がいくつもあり、自然の不思議を感じました。
見晴らしのいい尾根に、時折心地よい風が吹き抜けていきます。安神山から鷲ヶ頭山まではおよそ45分。よく整備された登山道が続きます。
そして、最後の最後にキツい階段が。足にズシンとくる急傾斜です。
重川さんもいろいろガイドされてますけど、その中でも急な方ですよね?
急ですよ!距離的には短いですけど、斜度では一番、二番を争うんじゃないかな。
ゆっくり、心して登りましょう。
鷲ヶ頭山 山頂は
きつい階段を上りきると鷲ヶ頭山に到着です。重川さんとハイタッチで喜びを分かち合いました。そして山頂からはこの景色。瀬戸内の島々を一望です。大山祇神社で神様にたくさんお願いしたかいがありました。
こんな看板も見つけました。表は『ワシga父サン』。裏には『ウチha母サン』。
一生懸命登った後にちょっと笑わしてくれるなんて、なんか素敵な山じゃないですか。
鎖場があって、最後の急坂があって、最後には瀬戸内の絶景。
標高の割に、とても登りがいのある山でした。
本当に中身が濃い山でしたね。楽しんでいただいてよかったです。
鷲ヶ頭山の目印 山頂の鉄塔
おや、これうちじゃないですか。いつも皆さんにちゃんと電波を届けています!
ところで、遠くからも目立つ山頂の鉄塔。実はこれ「放送用のアンテナ」なんです。
なぜこんな場所にアンテナがあるのか、NHK松山放送局の技術職員に話を聞きました。
鷲ヶ頭山は瀬戸内の島の中でも比較的標高が高く、周囲の見通しがよく利くことから放送用のアンテナを設置しています。ここからは大三島や周辺の島々に電波を出しています。鷲ヶ頭山は地域の放送を守るために欠かせない場所なんです。
なるほど、なんといってもこの景色ですからね、アンテナの設置に適しているのも納得です!
ご当地ラーメンで取り組む地域課題
山から降りるとちょうどお昼どき。
気になるお店を見つけてしまいました。
猪骨ラーメン?
これは気になりますねー。
出てきたのはイノシシの骨でスープをとった塩ラーメン。
もちろんチャーシューもイノシシの肉を使っています。
あっさりしているけど、味わいはけっこう濃厚で、スープと麺のツルツル感が一緒になるとまたいい。チャーシューも肉のうまみが、ギュッと凝縮していておいしかったです。
このラーメン、じつは地域の課題解決にも一役買っているんです。
店主の吉井涼さんです。9年前、地域おこし協力隊として大三島に移住してきました。
吉井さんが取り組んだのは、島で課題だったイノシシによる農作物被害です。
みかんや野菜を食い荒らしたり、畑を掘り返したりすることから、駆除の対象になっている島のイノシシを有効利用できないかと考え、試行錯誤の末にイノシシを使ったラーメンを完成させました。
イノシシによる被害が本当にひどくて、農業をやめてしまう人もいるほどなんです。どんどん捕って数を減らすしかないんですが、イノシシをラーメンの材料として活用し、お金に変えていくことが、農作物の被害を減らす活動の一助になればいいなと思ってお店をやっています。
卒業記念の「里山ハイク」
大三島の鷲ヶ頭山、じつに登りがいのある山でした。
実はわたくし、この春で松山放送局を卒業して、4月から金沢放送局に参ります。
そんな卒業の気持ちも込めて、最後に1句読んでみました。
「春がすみ頂登り伊予おもう」
特集の内容はNHKプラス配信後、下記の動画でご覧いただけます。
■前編
■後編
鷲ヶ頭山について
所在地:愛媛県今治市大三島
標高 :鷲ヶ頭山 436m
(備考)
大三島は「しまなみ海道」で今治市の中心部と結ばれています。
そして、大山祇神社前までは、今治駅前や松山市駅などからバスが出ています。
今回は鎖場があるルートを選びましたが、鎖場の無い一般の登山道では大山祇神社から山頂までおよそ2時間で登ることができます。
また、安神山の鎖場はとても難易度が高いルートです。今回は登山ガイドの指導のもとで取材を行いました。挑戦する場合は十分な装備を整えて、山に詳しい方と登ってください。
「えひめふる里山歩き」のコーナーでは、皆さんおすすめの里山の情報を募集しています。その理由と画像もあれば、こちらのリンクからお送りください。