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松山市出身 俳人 神野紗希さんが選ぶ「移動手段を詠んだ俳句」

  • 2024年02月05日

兼題『移動手段を詠んだ俳句』に全国から306句寄せられました。松山市出身の俳人神野紗希さん選の俳句を解説とともに紹介していきます。
※愛媛県で平日夕方に放送中の番組「ひめポン!」のコーナー「俳句でポン!」でお伝えした内容を掲載しています。

特選

早春の免許返納かぜやさし
伊予郡砥部町 とべのひさの

神野さん

「この句からわかるポイントは【変化を肯定的に受けとめる】です。年を重ねて免許返納することは、不便になるとマイナスに捉えられることもありますが、この句は早春の明るさや「かぜやさし」によって、優しく肯定しています。変化してゆく人生を、肯定的に受け止める姿勢に、俳人としてのしなやかな強さを感じました」

番組紹介句(神野さん選10句)

【愛媛ならではの風景を詠んだ5句】
坊ちやん電車降り来道後の湯の熱し (長野県 杏乃みずな)
風光る「しまなみ」よ空飛ぶペダル (今治市 はるかん)
水仙花歩き遍路の空に月 (八幡浜市 菊池ココ)
大試験三津の渡しで迎ふ母 (松山市 いもとまと)
軽トラのダッシュボードに蜜柑二個  (松山市 定位置)

「一句目は坊っちゃん列車、道後温泉の温度の高さも実感がありますね。二句目はしまなみ海道です。自転車だからこそ風を感じるということで、春の季語『風光る』が効いています。四句目は三津の渡しだから舟。渡し舟のこちら側で、試験を終えたお子さんを待つ母、移動するのは人間なので、そこに人生のドラマも生まれます」

【冬の厳しさと隣り合う5句】
赤本を枕に凍つる夜のフェリー (東京都 深山むらさき)
粉雪の舞う駐輪場船欠航 (今治市 たかひさ)
バス停に小さき雪だるまと二人 (鬼北町 ことら)
寒の内寝息優しき夜行バス (西予市 お京)
この土砂を超えて運べよ雪は降る (宇和島市 木原 恵子)
 

「一句目、寒い寒いフェリーに乗って、受験に向かうのでしょう。問題集の赤本を枕にするという描写もリアルです。五句目は能登の被災地への思いですね。厳しい雪が降る中、一刻も早く必要な救助や物資をどうか運んでほしいという願い、私も祈る気持ちです。雪や寒さの中で、移動手段は、やさしさや救いともなりうるのだと気づかされる5句でした」

添削

お父さん新幹線ですぐ会える (松山市 けいた)

お父さんに会えるよ春の新幹線

✏添削のポイント
「単身赴任のお父さんを思う若い作者の句です。四国に新幹線が出来たらお父さんにもすぐ会えるのに、と希望を詠んでくれました。さらに季語を足して、気持ちを表してみましょう。
〈お父さんに会えるよ春の新幹線〉
春は希望あふれる季節です。季節に希望を託してみると、そんな未来がより近づくよう」

長靴と菜の花そろそろ 日の出前  (東温市 みつお)

朝霜に濡れる長靴菜の花黄

✏添削のポイント
「みつおさん、今回、初めて俳句を作ってくださったとのこと。毎朝の犬の散歩では、朝の霜で濡れるため、長靴を履いているとのこと。朝の霜の冷たさや菜の花の嬉しさを、感覚的に足してみましょう。
〈朝霜に濡れる長靴菜の花黄〉
具体的に朝霜を示したほうが、ひんやりした朝の空気も迫ってきますね。菜の花も「黄」と色を足すとより鮮やかです。五感を大切に描写を考えると、臨場感が出てきます」

佳作

出港の凍晴に消ゆ汽笛かな (松山市 窪田 大晴(中2))
軽トラのヒーター妻は手を翳し (久万高原町 青雪)
東風吹く福岡行き航空券(チケット)買はむ (大洲市 山根円壱)
台風や今日の最後の渡船出づ (今治市 もひー)
砂漠ゆく駱駝の上の朧月 (新居浜市 越智勝利)
ペダル漕ぐ老医者の背に春の風 (大阪府 島田和子)
初夢や銀河鉄道零時発 (松山市 大野 玲子)
凩のホーム復旧電車発つ (兵庫県 播磨陽子)
リハビリの散歩は犬と息白し (西予市 しのしの)
機窓下の花やわらかしマイタウン (松山市 直線的)


次回の「俳句でポン!」の放送は、3月4日(月)の放送予定です。
次回は2023年度『特選の特選』を放送します。そのため、次回の兼題はありません。代わりに神野さんに教えて欲しい、俳句づくりの疑問や質問にお答えいただきます。ぜひお寄せください。
応募は、ひめポン!のホームページからお願いします。
締め切りは2月22日(木)の午後7時です。お待ちしています。

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