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松山市出身 俳人 神野紗希さんが選ぶ「旅を詠んだ俳句」

  • 2023年11月07日

兼題「旅を詠んだ俳句」に、全国から257句寄せられました。松山市出身の俳人神野紗希さんが選んだ俳句を、解説とともに紹介します。     
※愛媛県で平日夕方に放送中の番組「ひめポン!」のコーナー「俳句でポン!」でお伝えした内容を掲載しています。

特選

ての暖炉の図書館へかん
愛南町  升屋

 

神野さん

「北海道の置戸町(おけとちょう)の図書館には暖炉があるそうでここでアルバイトしながら、カーリングを観るのが、升屋さんの夢だそうです。暖炉の図書館で過ごす時間は、きっととってもゆたかです。どこへ、どんな旅がしたいか。旅のプランを通して、その人の大切にしている価値観や生き方を、表現することもできるんですね」

番組紹介句(神野さん選10句)

地名を詠みこんだ5句

どちらから?愛媛です!知床の夏 (松山市 うずら豆)
鞆の浦待つという字の似合ふ秋 (大洲市 モモリン)
指汚すマンゴージュース澳門マカオく (今治市 あいむ李景)
もやよどむ枯木の底にアウシュヴィツ (松山市 森 小畝)
実家なきわれ松山へ帰省せむ (千葉県 水須ぽっぽ)

 

「一句目、愛媛と知床、具体的な地名が、はるかまでやってきた感慨を強めますね。マカオやアウシュビッツは海外です。靄の枯木といった景物が、その土地の空気感や記憶を引き出します。投句した森さんは「枯木の奥底に潜む、狂気、恐怖と沈黙を肌で感じ取り、戦慄を覚えます」とおっしゃっています。五句目は千葉の方です。ご実家はすでに無くなったのだけれど、その代わり、お正月や夏休みに俳句のイベントで松山へ来ることが増えたそうです。新しく帰省先ができたようで嬉しい、と書き添えてくださいました」

旅先の経験を詠んだ5句

駅弁や旅の車窓を青葉光 (松山市 久保田凡)
朝市の柚餅子ゆべしの味見「こりゃいける」 (石川県 HNKAGA)
駅前のじゃこ天あちち寒の入 (愛知県  栗田すずさん)
風邪薬妻買ひ走るハネムーン (松山市 晴樹)
そば道に同行二人の秋北斗  (松山市 萌美路)

 

「一句目は電車に乗って食べる駅弁。二句目は旅先の朝市で地元の特産品を楽しむ様子でしょう。三句目は揚げたてのじゃこ天がとっても美味しそう、「あちち」に臨場感があります。四句目は新婚旅行で風邪をひいてしまったんですね、薬を買いに走ってくれたパートナーの愛を感じます。エピソードを具体的・感覚的に書くことで、旅の時間がいきいきと伝わります」

添削

新涼の鎖塚ガイドの開拓史(宇和島市 木原恵子)

開拓の史や新涼の鎖塚

✏添削のポイント
「鎖塚は、北海道開拓における過酷な囚人労働を物語る史跡で、鎖につながれたまま酷使されて亡くなった仲間に、そのまま土をかけた塚です。ここに「ガイド」が入ってくると、観光のレジャー感が強くなり、歴史の厳しさが遠のいてしまいます。語順を入れ替えて、〈開拓の史や新涼の鎖塚〉としてみましょう。歴史の時間に直接つながることで、より深く思いをはせることができます」

美観焼けいたはり輝く栴檀せんだんの実 (西条市 元祖tоtо)

倉敷や栴檀の実に照る夕日
還暦祝い栴檀の実に照る夕日

 

✏添削のポイント
「倉敷美観地区でお子さんたちから還暦祝い。夕日に輝く木の実に感激して詠まれたそうです。その状況が分かる言葉を、俳句本体に加えてみましょう。
〈倉敷や栴檀の実に照る夕日〉と地名を入れると景色が見えますね。あるいは、〈還暦祝い栴檀の実に照る夕日〉とシチュエーションを足すと気持ちが見えますね。状況を具体的に書くことで、何に感動したのか、気持ちもより伝わります」
 

佳作

フィンランドはもう秋サーモンサンドむ (松山市 ちゃんこ)
四国から二度乗り換えてねぶた客 (新居浜市 越智勝利)
オリーブの影をいびつにマラガく (神奈川県横浜市 巴里乃嬬)
旅の朝ビュッフェの秋果美しく (四国中央市 星月彩也華)
秋宵の終着駅へゆっくりと (今治市 松本 だりあ)

次の兼題は?

次回の「俳句でポン!」の放送は12月4日(月)の予定です。
「ことしの記憶を詠んだ俳句」を皆さんから募集しています。個人的なことから社会的なことまで、なんでもかまいません。俳句を通して、ともに一年を振り返ってみましょう。
締め切りは11月24日(金)午後7時です。おまちしております。

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