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松山市出身 俳人 神野紗希さんが選ぶ「ことしの記憶を詠んだ俳句」

  • 2023年12月04日

12月の「俳句でポン」では、兼題『ことしの記憶を詠んだ俳句』に全国から222句寄せられました。松山市出身の俳人神野紗希さん選の俳句を解説とともに紹介していきます。
※愛媛県で平日夕方に放送中の番組「ひめポン!」のコーナー「俳句でポン!」でお伝えした内容を掲載しています。

特選

人生に俳句以前と以後セロリ
高知県 毬雨水佳

神野さん

「人生のターニングポイントはさまざまですが、俳句と出会う以前と以後で人生が大きく変わった実感を簡潔に詠んでくださいました。俳句は世界の見方を変え、人生が変わります。最後に飄々と置かれた「セロリ」も、今を楽しんでいる軽やかさがあります」

番組紹介句(神野さん選10句)

個人的な出来事を詠んだ5句

神無月四年振りなる同窓会 (新居浜市 KAZUピー)
卒業や千百七十グラムだった子よ (新居浜市 そまり)
初耳の猫の寝言や夕月夜 (松山市 空郷 阿房人)
新しく出来た句友や冬ぬくし (八幡浜市 紅まどんな)
絵日記の西瓜すいか割る吾よ外は雪(長野県 藤 雪陽)

 

「一句目、四年ぶりなのはコロナ明けだからでしょうね。今年ならではの感慨です。二句目、あんなに小さく生まれた子も、成長して卒業を迎えた、子どもの成長も大切な記録です。三句目のようなささやかな発見も楽しいですし、五句目のように夏の絵日記を見返す場面を描写することで、一年を振り返るということそのものを詠むのも面白い視点でした」

世界に目を向けた5句

大谷の長きバットや夏燕つばめ (広島県 長月憂)
ガザの地に泉を掘ってあげたしと  (西条市 砂山恵子)
オリーブの実病院は瓦礫がれきになった  (愛知県 みやこわすれ)
チャンネルを変えれば平和の霜夜かな (宇和島市 ちとせ)
すべての子へ温き布団と良き夢を  (東京都 深山むらさき)

 

「一句目、大谷選手の活躍が目覚ましかった一年でしたね。夏燕の軌跡が、のびやかな打球を感じさせます。二句目から五句目は、ガザやウクライナを思っての作。今回、戦火へ目を向けた句がほかにも多く寄せられました。泉やオリーブ、布団などに、どうか命をつなぐ安らぎを、という祈りがこもっています」

添削

春日の伊予路五年ぶりのサブスリー (松山市 カツさん)

五年ぶりの春日の伊予路サブスリー

✏添削のポイント
「サブスリーとはマラソン用語で、フルマラソンを三時間切りで走ることを指すそうです。上五は字余りしてもわりと許されるんですが、後半のリズムががたがたしているのを整えたいですね。
〈五年ぶりの春日の伊予路サブスリー〉
こうすると、後半の75がリズムを作ってくれます。前後の語順を入れ替えると、しらべがまとまることも多いので、入れ替えて推敲してみてください」

秋の潮友に教わり竿さおを振る (松山市 梶原菫)


〈友に教わり秋潮へ竿を振る〉

✏添削のポイント
「このままでもシンプルにできているのですが、やや単調に情報が並んでいる感じもします。これも語順を入れ替えてみましょう。
〈友に教わり秋潮へ竿を振る〉
俳句は575というけれど、全体で17音くらいでリズムがよければ、わりと自由なんですね。推敲した形は755、入りに勢いが出るので、釣りの竿を振る勢いともリズムが合いそうです」

佳作

鎮魂の花にはあらず向日葵ひまわりよ (宇和島市 木原 恵子)
凍る夜や火のごと赤きネイル塗る (松山市 ちゃんこ)
戦禍の中子等泣き叫ぶ師走まじか (松山市 ゆうゆう)
おおかみの眼の中の吾見る吾よ (東京都 迫久鯨)
まぼろしの野戦病院天の川 (今治市 松本 だりあ)
花冷やカバの「まんぷく」転園す (松山市 久保田凡)
あの猛暑生き抜いて来て独り言 (今治市 茜)

次の兼題は?

次回の「俳句でポン!」の放送は2024年1月15日(月)の予定です。
「静けさを生かした俳句」を皆さんから募集しています。
冬は静かな季節。静かさをどう詠むか、どんな場所に静かさを感じるか。感覚を生かした皆さんの俳句をお待ちしています。
締め切りは12月22日(金)の午後7時です。おまちしております。

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