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55年続く“松山名物” 俳句ポストに魅せられて

  • 2024年02月13日

松山市内の観光スポットや市内電車で見かける、「俳都松山俳句ポスト」。
昭和43年に松山城長者原で第1号が設置されて以来、年々数を増やし、今は松山市内80か所以上に設置されています。3か月に1度、ポストから句が回収され、著名俳人が優秀句を選考。松山市のホームページなどで結果を発表しています。
句を選んでいる選者、そして句を寄せている小学生、俳句ポストに魅せられた方々を取材しました。

(NHK松山放送局 捧詠一)

俳句ポスト 選句の現場に密着

俳句ポストの選者を務める、戒能多喜江(かいのう たきえ)さん、85歳。俳句雑誌「渋柿」の松山渋柿会会長を務め、俳句ポストの選者も担っています。1月下旬のある日、取材に伺うと、1800もの俳句の中から出来栄えのよい句を選んでいました。

戒能さん
「簡単ではないですよね。結構、時間もかかりますし。頭も使わないとできません」

選んでいるのは、去年秋に寄せられた俳句。この時期は戒能さんが選考を担当します。

俳句ポストに寄せられた手書きの句は、松山市の職員がデータ化し、俳句以外の情報をふせて選者に渡します。

俳句の選考用紙。よく見ると、俳句の上に丸印や矢印が書いてあります。これは一体?

「矢印は、ずーっと『1人の方が詠んだ句』ということ。20句くらい出している方もおいでたと思います」

選ばれるのは、特選が3句。入選が20句。
戒能さんは、2週間ほどをかけて何度も句を吟味します。

この日、戒能さんが心をひかれたのは、人の温かみを感じる一句でした。

「『ねんねこや列車見送る小さな手』という句。ねんねこを着て、赤ちゃんをおんぶしてね、列車を見送ってくれよる。そういう感じがもう、なんとも言えん。この『小さな手』いうところが気に入った。私としては」

思いがこもった一句一句。戒能さんは、選者としての仕事に大きなやりがいを感じているといいます。

「"すごいな、こういう言い方があるんやな"というような珍しい表現。そういうのに出会うと、"これは見習いたい"と思う。まだまだこれから勉強していきたいなと思います」

人々に愛されて55年 続く歴史

ずらっと並んだ、歴代の特選・入選を掲載した句集。
俳句ポストに集まった句の選考は、のべ300回以上にわたって行われてきました。

現在、松山市内では80か所以上にポストが置かれ、県内外から多くの句が寄せられています。

こちらは、50年前に撮影された俳句ポストの映像です。

当時から、たくさんの句が投函されていた様子がうかがえます。

「今日を17音に残す」 8歳がつむぐ一句は?

松山市に暮らす西村蒼生(にしむら あおい)くんも、俳句ポストに魅せられた1人です。
蒼生くんは2年前から、俳句ポストに句を寄せるようになり、これまでに20句ほどを投句してきました。

この日、行きつけの俳句ポストへ案内してくれました。

蒼生くん
「ここに俳句ポストがあったから、『やってみよっかな』って思って。それでやり始めた」

家の近所にある、秋山兄弟生誕地。ここでよく遊ぶうちに、俳句を書くようになったといいます。

「うめの花見ながらすすむ遠足だ」
蒼生くんが、去年の春に詠んだ一句です。

「縦割り遠足っていうのがあってね、松山城も登ったんよ。そしたら梅の花がいっぱい咲いててね、だからそれを句にした。書くと、おぼえてる、ずっと」

俳句にすると、その日の思い出を忘れずに残すことができる。蒼生くんは、遊ぶ中で気づいた景色や出来事を、17音にしたためます。

「これあれだ、クロマツって言ってね、これで引っ張って、崩れたほうが負けっていうゲーム」

クロマツの葉で遊んでいた蒼生くん。一句、考え始めました。

「あと2音が決まらん!・・・・・決まった!」

どうやら、一句仕上がったみたい。どんな句が完成したかな?

「『クロマツがしょうはいきまる冬の雲』。遊んでて、クロマツで勝ったり負けたりして、で、いま曇ってるから"冬の雲"ってした」

「目標は、えー、俳句ポスト、500枚書く!1000句書く!大学3年生まで終わらんかも~!」

人々の、今日という日が17音につむがれて。

俳句ポストは、1人1人の思いを、今日も静かに受け止めています。

特集の内容は、下の動画でご覧いただけます。

取材を終えて

去年夏に、東京から松山に異動しました。松山で暮らしてみると、市内電車や大街道などで俳句ポストを発見。とても興味深く、その世界をのぞかせていただきました。選者の戒能さんは、寝床についても、「あの句の方がいいかな、やっぱりあっちかも」と悩むそうで、俳句への、そして詠み人への熱い思いが心に響きました。取材時に一句したためてくれた蒼生くんは、一句完成すると、その後スイッチが入ったようで二句三句と量産。どれも素敵な句で、松山育ちの言葉への感度の高さに驚きました。多くの人が魅せられる、俳句ポストの世界。引き続き、見つめていきたいと思います。

  • 捧詠一

    捧詠一

    2023年8月に松山に赴任。新潟県出身。俳句甲子園や俳句ポストの取材を通じて、一句詠む楽しさを実感。俳句愛あふれる人々の取材にまい進中。

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