“防災学習列車”で子どもたちが津波を学ぶ
- 2024年04月02日
もし列車に乗っているときに大地震が起きたらどうしますか?南海トラフ巨大地震で全国で最も高い34メートルの高さの津波が想定されている高知県黒潮町などを通る鉄道の路線があります。将来、通学などでこの路線を利用する可能性のある地元の小学生たちが、列車に乗って津波からの避難などを学ぶ「防災学習列車」という催しが開かれました。
(高知くろしお支局 記者 澄田謙人)
全国で最も高い津波が想定される沿線
南海トラフ巨大地震で全国で最も高い34メートルの津波が想定されている高知県黒潮町を通る土佐くろしお鉄道の中村・宿毛線。
通学で列車を利用する地元の高校生に、南海トラフ巨大地震で津波が想定されていることについて聞きました。
怖いです
頭を守って列車が止まったら、すぐに外に出たいです
みんなが列車の中での避難のしかたを知っていく必要があるかと思っています
「防災学習列車」で津波など学ぶ
では、子どもたちの防災への意識を高めるにはどうすればいいのか。
3月3日、土佐くろしお鉄道の列車に乗りながら津波などについて学んでもらおうという「防災学習列車」が運行されました。黒潮町のほか、高知県西部の四万十市や宿毛市など沿線に住む小学生以下の子どもと保護者27人が参加しました。
鉄道会社によりますと参加者の中には、ふだん列車に乗る機会が少ない子どもも多いということです。
そして、列車が黒潮町に入ると町の職員がクイズなどを通して、津波からの避難の大切さを子どもたちに伝えました。
列車からの避難訓練や津波避難タワー見学も
このあと列車は、津波で浸水が想定されている土佐佐賀駅に到着しました。ここでは南海トラフ巨大地震が発生したという想定で列車から脱出する訓練が行われました。
子どもたちも、シューターやはしごを使って列車の外へ避難します。
さらに、子どもたちは駅からおよそ500メートル離れた津波避難タワーも見学しました。
7階建ての津波避難タワー。
中には、最上階を目指して一生懸命駆け上がる子どももいました。
疲れた
死ぬよりは疲れたほうがましだよ
津波避難タワーにのぼったあと、タワーに備蓄している災害時に使うテントに入りました。
昼食のときには実際に自分で非常食の缶詰を開けて食べました。
高知県西部の子どもたちは、けっこう列車で通学するので、
列車からの避難のしかたをわかっていたほうが、もしもの時にとても役立つと思う
いつ起きても自分で避難が出来るようになってくれたらなと思って。
それに一歩近づけたかなとは思う
四万十市地震防災課 岡村郁弥主事
災害のリスクばかりを語るのではなく、楽しみながら親子で自分ごととして考えてほしいというのが、この催しの意義の1つ。
南海トラフ巨大地震が発生したあとの復興をいまの子どもたちも担うことになると思う。そういった子どもたちに防災教育を行うことで、地域の防災力の向上や迅速な復興につなげていきたい。
鉄道会社側の備えは?
では、土佐くろしお鉄道は南海トラフ巨大地震に備えてどのような取り組みをしているのでしょうか。毎年、地震や津波を想定した避難訓練を行っていますが、さらなるハード面での津波対策は、財政面からもなかなか難しいのが現状です。こうした中、運転士みずからが避難マップをつくる取り組みもしています。ワンマン列車の場合、運転士が乗客の避難誘導にあたることも考えられるため、取り組んでいるということです。
土佐くろしお鉄道 岡村寛史 運転課長
地震が起きたあとも、原則として最寄り駅まで運行を続けることになっている。しかし、地震で線路がゆがみ、列車が途中で止まってしまった場合は、そこから避難場所に避難することになる。そうした状況に備えて書いたのが避難マップ。
年に1度、乗務員みずから避難場所までの経路を歩いて確認して、マップの情報を更新している。あらかじめ現場を見ておくことで、いざというときに運転士がスムーズに対応できる。
子どもの意識を高める防災教育を
津波による浸水が想定される区間を走る列車を将来使う可能性がある子どもたちの安全をどう守るか。
鉄道会社側の努力はもちろんですが、子どもたちの意識を高める防災教育の重要性が高まっています。