ページの本文へ

こうちWEB特集

  1. NHK高知
  2. こうちWEB特集
  3. 検証!冬の夜に避難タワーで生活

検証!冬の夜に避難タワーで生活

  • 2024年03月13日

東日本大震災と能登半島地震。いずれも寒い時期に発生し、被災者たちは、厳しい環境の中で避難生活を強いられました。そんな中、南海トラフ巨大地震への対策を進める黒潮町で最も“過酷”な事態を想定した訓練が行われました。(NHK高知放送局 記者 野本宗一郎)

南海トラフ巨大地震で全国最大の34メートルの津波が想定されている人口1万余りの高知県黒潮町です。

東日本大震災以降、津波避難タワーが6基設置され、津波から命を守る取り組みが進められてきました。しかし今、避難したあともどう命をつないでいくのか、新たな課題に直面しています。

能登半島地震で浮き彫りになった厳しい寒さへの対応です。

発生は元日の夕方。震度7の揺れが襲い、夜は氷点下となる中、その後、雪にも見舞われました。長引く避難生活で低体温症など「災害関連死」も懸念されていました。

いつどんな場面で起きるか分からない大災害。住民たちは“ある訓練”に臨みました。

想定したのは、冬の寒い時期に避難タワーで夜を過ごす“過酷”な避難生活です。

訓練を指導したのは、長年、住民たちと防災対策に取り組んできた九州大学の杉山高志准教授です。

午後7時の気温は7度。津波避難タワーに備えられている設備や備蓄で、実際に寒さをしのげるのか検証しました。

まず、住民たちは、冷たい風から身を守るため、テントを組み立て避難生活を体験します。

訓練の間、杉山さんたちは、特殊なカメラを使って温度の変化を観察します。

座っている冷たい床からどんどん熱が奪われている状態になります (杉山高志准教授)

そこで用意したのが、寝袋と断熱シート。
避難タワーに保管していた備蓄品で寒さをしのぎます。

テントの中もじかでしたら寒かったですが、マットを敷くと寒さはあまり感じませんでした。寝袋は特別でしたね。暖かかったです(訓練参加者)

長期間続くことも想定される避難生活。住民たちは体温が下がらないよう、風の侵入を防ぐ幕も下ろしました。

さらに「スウェーデントーチ」と呼ばれるたき火用の道具も持ち込みました。

こうした寒さ対策により、備えがない場合と比べて1番高い場所の温度は7度余り上昇しました。
訓練で効果のあったたき火用の道具を今後、避難タワーに保管していくことになりました。

(寒さが)全然違いますね。風の流れもないし、すごく過ごしやすい感じがします(訓練参加者)

テントなどもあるので家族で暖め合いながら過ごせればいいかなと思います(訓練参加者)

命を守るだけでなく、生き延びるために今からできることは何か。能登半島地震の教訓が、次の災害に備える住民たちの活動に生かされようとしています。

杉山准教授が提案する寒さ対策

寒さ対策や体温の維持管理の方法について関心が及ぶことは正直少ない。劣悪な環境の中でいかに生活できるかを考えることは非常に重要だ。(地震発生直後は)すぐに助けが入るとは限らないし、その中でどうやって助けを求めなくてもいい環境を自分たちで整えていくかということがこれから大事になっていくと思う(杉山高志准教授)

  • 野本宗一郎

    NHK高知放送局

    野本宗一郎

    2020年入局
    能登半島地震発生の被災地を取材。

ページトップに戻る