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『らんまん』登場のあの餅は一体…!?

坂本龍馬と万太郎をつないだ高知・佐川の名物を取材
  • 2023年04月04日

今朝の『らんまん』に登場した、あのお餅。皆さん何だか分かりましたか?主人公・万太郎の地元の高知県佐川町で古くから親しまれたお餅なのですが、現状を取材すると意外なエピソードがありました。(高知放送局 記者 田中開)

龍馬と万太郎をつないだ餅

万太郎が龍馬に手渡したのは…

きのう放送が始まった、連続テレビ小説『らんまん』。
佐川町出身の植物学者・牧野富太郎博士が主人公のモデルになっています。

きょうの第2回で「この餅は何?」と思った方も多かったのではないでしょうか。
ディーン・フジオカさん演じる“天狗”こと坂本龍馬に、主人公・万太郎が差し出したのは、とある餅。それを見た龍馬は、嬉しそうにこう反応します。

「山椒餅!」
そう、山椒(さんしょう)餅です。
恥ずかしながら高知に配属されて6年目の私にとっても初耳のお餅でしたが、主人公の地元で取材を進めると、意外なエピソードに出会いました。

地元で親しまれた餅、のはずが…

訪れたのは、佐川町にある牧野博士の生家があった場所。
いまは「牧野富太郎ふるさと館」という資料館になっています。

町役場から「山椒餅といえばこの人!」と紹介された、和田優子さんに話を聞きました。和田さんは佐川町のNPO法人で町歩きガイドなどとして活躍しています。

和田優子さん
「山椒の粉を練り込んだお餅で、昔から佐川町ではおやつ感覚で親しまれていました。いまでは隣町の越知町などで山椒の生産が盛んですが、かつては佐川でも庭先で栽培したり、近くの山に採りに行ったりして作っていたそうです。牧野博士が子どものころも、よく食べていたんじゃないかな。……とは言っても、実は私、食べたことがなかったんですよ

和田さんによると、佐川で名産だった山椒餅も、町の和菓子店の閉店や、家庭で作る人が少なくなったことで、すっかり文化が廃れてしまっていたそうです。

そんな山椒餅を地元の名産として復活させたい。
和田さんは2006年に友人に声をかけて、グループで復活を模索し始めたそうです。
砂糖の配合や材料を変えながら、かつての味を知るお年寄りたちも懐かしむ山椒餅を作り上げました。

和田優子さん
「レシピすら分からなかったので、山椒餅を昔食べたことがあるという人を訪ねたり、お茶菓子としても人気だったと聞いて、茶道の先生に助言をもらったりして、試行錯誤しました」

苦労の末にできあがった山椒餅。試食用にとグループのみなさんが山椒餅を持ってきてくれたのですが、意外な話を聞くことになりました。

「実は山椒餅は3年前に作るのを止めてしまったんです。これは去年、『らんまん』の参考にしてもらうために少しだけ作って、冷凍していたものです」

どうして生産がストップ?

いただいた山椒餅は、山椒の爽やかな香りや辛さ、砂糖の優しい甘みのバランスが取れた、食べたことのない味の美味しいお餅でした。そして、もうひとつ気になったのが、山椒餅の「香ばしさ」です。

和田優子さん
「山椒餅の材料は普通使われるもち米や米粉ではなく、玄米を煎ってから石臼ですりつぶした特製の粉を使うので香ばしく仕上がるのです。色々と試行錯誤しましたが、その粉じゃないと山椒餅の本来の味が再現できなくて…」

しかし、山椒餅を作り続ける上でネックになったのも、この「香ばしさ」でした。
玄米を煎って石臼ですりつぶすのはとても労力のかかる作業。復活させたはよいものの、安定供給を目指して和田さんはじめグループ総出で取りかかっても中々追いつかないほどでした。メンバーの高齢化もあり、とうとう3年前、生産を断念していたのです。

田中「こんなに美味しいお餅がなくなるのは残念ですね…」

そう声をかけると、嬉しいことを打ち明けてくれました。

和田優子さん
「実は『らんまん』の放送に合わせて、少しずつでも生産を再開しようと思っているんですよ」

よみがえる山椒餅

放送直前のカウントダウンもお願いしました

ことし(2023年)4月24日は牧野富太郎博士の生誕から161年となる記念日。
佐川町では22日から3日間、「生誕祭」と称して様々なイベントが開かれます。和田さんたちは、このイベントの中日で山椒餅の販売を再開する計画を立てています。

和田優子さん
「せっかく佐川町が注目されるタイミングなので、牧野博士も食べたであろう郷土の味を多くの人に味わっていただき、佐川町や博士の人となりに親しんでもらう、きっかけになれたら嬉しいです」

今後も定期的にイベントなどで出店したいと意気込む和田さん。山椒餅を残していくためにも、若い人たちにもグループに参加してもらい、技術やレシピを受け継いでいきたいと話していました。

高知の食や文化も描く『らんまん』

第2回ではご馳走を囲んで大宴会の様子も

『らんまん』では高知を代表するさまざまな食や文化が登場しています。

大皿にさまざまな料理を豪快に盛り付ける「皿鉢(さわち)料理」もそのひとつ。
サバ寿司や煮物などのおかずだけでなく、ようかんなどの甘味も一緒に盛り合わせる郷土料理で、いまも高知では宴会の席などに重宝されます。

特に年末年始は県外から帰省する家族をもてなすため、各家庭で皿鉢料理を取り寄せることも多く、
高知放送局では、皿鉢づくりで賑わう年末の料理店を取材するのが毎年恒例となっています。
きょうの第2回でも、皿鉢を囲んでお酒を楽しむ、高知ならではの光景が描かれていましたよね。

海の幸を豪快に盛り付けた皿鉢も登場

いよいよ放送が始まった『らんまん』。
ドラマを通して、高知の食や文化にも注目が集まり、地域が元気になるきっかけになってほしいと思います。高知放送局では今後も『らんまん』にまつわる、高知ならではの話を紹介していきます。

  • 田中 開(ひらく)

    高知放送局 記者

    田中 開(ひらく)

    2018年入局
    初がつおが美味しい季節になりました 
    配属6年目、高知の食を楽しみ尽くします

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