白内障は一般的に手術で治療をする

白内障の治療には、点眼薬による治療と手術があります。
点眼薬は初期の白内障の進行を遅らせるのが目的で、水晶体の濁りを取ることはできません。進行した場合、治療としては手術が行われるのが一般的です。
手術の時期については、日常生活に影響するような自覚症状(みえにくさ)があり、その原因が白内障であると診断されているなら、手術に踏み切ってもよいでしょう。両目とも白内障になることが多いですが、程度には左右差があることもあります。その場合には、まず片方の目の手術を行い、一定期間をあけてから、もう一方の目の手術が行われます。手術にかかる時間は目の状態によって異なりますが、通常20分程度です。
白内障の手術後、視力が回復する期間は人によって異なります。翌日からよく見える場合もあれば、1週間以上かけて徐々に見えるようになる場合もあります。
手術で入れる眼内レンズの選び方
白内障の手術では、水晶体の前嚢(ぜんのう)の一部と後嚢(こうのう)を残して皮質と核だけを取り除き、そこに「眼内レンズ」を入れます。眼内レンズは、レンズ部分の直径が6mmほどで、両側についたループで水晶体の中に固定されます。
健康な目の場合、遠くを見るときに水晶体は薄くなり、近くを見るときは厚くなるというように、水晶体の厚みを変えてピントを調節しています。
しかし、水晶体の代わりに入れる眼内レンズは、厚みが変わらないのでピントを調節することができません。そのため、「どこにピントが合う眼内レンズを選ぶか」が大切になってきます。眼内レンズには、「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」があり、白内障の手術には主に単焦点レンズが使われています。

単焦点レンズ

白内障の手術で使われる眼内レンズは、基本的に1か所だけにピントが合う単焦点レンズです。単焦点レンズは「遠く(2m以上)」「中間(60cm~1.5m))」「近く(50cm以下)」の3つに分けられ、どこがはっきり見えるレンズにするかを選びます。
車の運転やスポーツをする機会が多い人は、遠くがはっきり見えるレンズがよいでしょう。テレビを見たり、料理をしたりするときには、中間の距離がはっきり見えるレンズが便利です。読書やパソコンの作業には、近くにピントが合うレンズが勧められます。
例えば、近くにピントが合うレンズを選んだ場合、中間の距離や遠くの物を見るときには、眼鏡が必要になります。
多焦点レンズ

多焦点レンズは、「遠く・中間・近く」「遠くと中間」というように、複数の所にピントが合う眼内レンズです。ただし、コントラストが甘い(くっきりとみえない)、暗いところで細かい文字が見えにくい、見え方になじまないことがある、健康保険が適用されないため費用が高い、といった短所があります。
頻度は少ないものの、多焦点レンズを入れたけれど、うまくなじまず生活に支障をきたすような場合は、レンズを入れ替える手術をすることもあります。
白内障の手術の手順
白内障の手術はすべて顕微鏡を使って行われます。

①まず、目に局所麻酔をします。
麻酔といっても、主には点眼薬、つまり目薬なので痛くはありません。点眼薬がしみる程度です。

②水晶体を包む袋(水晶体嚢[のう])の前面に丸く切れ目を入れます。

③水晶体嚢の切れ目から器具を入れ、濁った水晶体を超音波で砕きながら吸引して取り除きます。

④空になった水晶体嚢の中に「眼内レンズ」という人工のレンズを入れ、固定します。
ここまで、手術は20分ほどで終わります。

最近では、日帰りで手術を受ける人も増えています。ただし、日帰り手術が可能かどうかは、白内障の進行の程度、合併症、全身の状態などによって変わってくるので、医師とよく相談して決めてください。
出典:厚生労働省第6NDBオープンデータ
手術中は何が見えている?
白内障の手術は局所麻酔で行うため、意識もあり、目も見えている状態で行います。
怖いと思う人もいるかもしれませんが、手術中は顕微鏡の光がまぶしく、ピントが合わないので、通常はメスや器具がはっきり見えるということはありません。患者さんの中には「いろいろな色がキラキラした、きれいな光が見えた」という人がいます。目に水を流しながら手術をしているため、その水に光が反射して、色がキラキラして見えるのかもしれません。
白内障の手術を受けた中川万代さんは、手術中に見えた世界を絵に描きました。

中川万代(なかがわかずよ)さんが描いた油絵
中川さん
「手術中は目の前にオーロラのような光が広がっていて本当にきれいでした。手術が終わると、遠くの山のゴツゴツした隆起まではっきり見えるようになって、霧が晴れたみたいでとても嬉しいです!手術を受けるかどうか迷っている人がいたら、早く受けたほうがいいよと言いたいです」
白内障の手術の効果 視力改善だけでなく得られるメリット
眼内レンズで乱視、近視が矯正可能
眼内レンズの機能は多様化しています。単焦点眼内レンズ、多焦点眼内レンズともに、乱視を矯正するレンズが登場し、白内障の治療とともに乱視も治すことが可能になっています。近視がある人も、眼内レンズで矯正できるため、コンタクトレンズを使っている人は、コンタクトレンズなしで生活ができるようになります。