慢性骨髄性白血病の段階別の症状、検査、治療法について解説

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慢性だからといって油断は大敵

慢性骨髄性白血病とは

白血病には慢性のものと急性のものがあります。急性の場合は月単位、週単位でどんどん病状が進むので、すぐに治療を開始しなければなりません。それに対して慢性の白血病は、急性と比べるとゆっくりと進行します。しかし、進行が遅いからといって治療をしないと、確実に進行して、やがて急性化して大変なことになってしまいます。
慢性骨髄性白血病は、血液細胞の元となる「造血幹細胞」ががん化して、過剰に増えてしまう病気です。

「急性骨髄性白血病」について詳しくはこちら

慢性骨髄性白血病の症状(慢性期、移行期、急性期)

そうなると、特に白血球が必要以上に作られることになります。初めのうちは正常な白血球も十分に作られるので、症状はありません。この症状が出ない時期が「慢性期」で、5年程度続きます。しかし、月日が経つにつれて病状が進行してくると、正常な白血球だけでなく、異常な白血球を作り出すようになります。そうなると発熱や骨の痛み、腹部の膨満感などの症状が出始めます。この時期を「移行期」と呼びます。そして、さらに進行すると「急性期」になり、急性の白血病と同じような状態になります。
貧血や動悸、倦怠感などの症状が現れ、感染症にかかりやすくなり、熱が下がらなくなります。そして、鼻血や歯ぐきからの出血が止まらなくなり、ぶつけた記憶もないのに大きなあざができているということもあります。そうなってしまうと、治療はとても困難なものになってしまいます。慢性骨髄性白血病は「慢性期」のうちに発見、治療を開始することが肝心です。

慢性骨髄性白血病 診断のための検査

慢性骨髄性白血病 診断のための検査

慢性白血病の「慢性期」には、ほとんど症状がありません。そのため、健康診断などで白血球の増加を指摘されて血液内科を訪れ、病気がわかる人が大半を占めます。まず行うのが血液検査。白血球の数を調べます。8千以下が基準ですが、1万を超えた場合は要注意です。しかし基準内であっても、前回の検査より白血球が増えていたら注意すべきです。血液検査で疑わしい場合は、骨髄検査を行います。骨盤から骨髄液を採取し、顕微鏡で見て異常な白血球、「白血病細胞」がないか調べます。採取した骨髄液を使って染色体や遺伝子も調べます。

慢性骨髄性白血病の原因 染色体・遺伝子の異常

慢性骨髄性白血病の場合、原因は既にわかっています。フィラデルフィア染色体という特有の染色体の存在です。このフィラデルフィア染色体が確認され、それに伴う異常な遺伝子「Bcr-Abl」も発見されると、診断が確定します。

慢性骨髄性白血病の治療は通院で

急性と慢性では治療方針も異なります。急性の白血病は進行が早いため、すぐに入院して治療を始めますが、慢性の場合は、通院しながら、のみ薬で治療します。「分子標的薬」と呼ばれる、チロシンキナーゼ阻害薬です。薬を飲んで病状が進行するのを防ぐのが目的です。
「分子標的薬」とは、病気の細胞にある異常なたんぱく質や遺伝子などを標的としてピンポイントで攻撃する薬で、効果が高く副作用が少ないため、最近、注目を浴びています。

慢性骨髄性白血病の原因となるフィラデルフィア染色体があると、白血病細胞を増殖させる働きのある異常な遺伝子から「Bcr-Ablたんぱく」が作られます。この遺伝子にエネルギー物質であるATPが結合することで、白血病細胞は大量に増殖すると考えられています。

慢性骨髄性白血病の治療

分子標的薬のチロシンキナーゼ阻害薬は、エネルギー物質ATPの代わりに「Bcr-Ablたんぱく」と結合して、白血病細胞の過剰な増殖を防ぐのです。

分子標的薬は白血病細胞の過剰な増殖を防ぐ

他にも慢性骨髄性白血病のための分子標的薬は、これまで5種類が開発されています。

分子標的薬 第1世代から第3世代

治療では、この分子標的薬の中から、副作用や効果などをじゅうぶん検討した上で薬を選び、病気をコントロールしていきます。
この分子標的薬が登場してから慢性骨髄性白血病の治療法は一新されました。治療効果も劇的に改善し、1970年代には20%程度だった5年生存率も、2001年以降は90%に達しています。ただし、この分子標的薬は白血病細胞を死滅させるわけではありません。そのため、基本的には一生のみ続ける必要があります。

投薬を中止する試みも

このような分子標的薬の目覚しい進歩で、症状もなく検査でも異常が見つからない「寛解」からさらに進んだ「分子遺伝学的完全寛解」に達することが可能になってきました。これは、遺伝子検査をしても異常な遺伝子が見つからないレベルです。その状態を2年程度維持すれば、薬を止めることが可能である、とされる研究結果が報告されています。もちろん経過観察は必要ですが、限りなく完治に近づいています。

1990年代まで、慢性の白血病は、5~6年で急性化して多くの人が亡くなる、まさに死の病でした。病気の進行を食い止める手段は造血幹細胞移植しかなかったのですが、高齢の患者さんが多いため、移植を諦めざるを得ないケースも多くありました。しかし最近では、分子標的薬の登場で治療成績もめざましく良くなりました。移植という選択肢もほとんどなくなっています。確実に長期生存ができるようになってきた病気の一つです。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年1月 号に掲載されています。

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