鎮痛薬の使い過ぎで頭痛に!?注目される鍼(はり)のチカラ

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片頭痛緊張型頭痛頭が痛い吐き気

痛みを感じたときに服用する鎮痛薬。薬局などで手軽に入手できるため、日常的に服用する人も少なくありません。ところが最近、その使い過ぎによって引き起こされる頭痛が世界的な問題となっています。痛いから薬をのみ、薬をのんだことでかえって頭が痛くなる悪循環です。いま、その回復の手段として注目される、鍼灸治療の最前線を取材しました。

頭痛に悩まされる女性

潜在患者数100万人超!?薬の使い過ぎで起きる頭痛

慢性頭痛にはさまざまなタイプがありますが、片頭痛、緊張型頭痛に次いで患者数が多いとされる頭痛が「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」です。もともと頭痛持ちの人が鎮痛薬などを頻繁に使うと、薬が原因となる頭痛が起きてしまうことがあります。詳しいメカニズムは分かっていませんが、海外の研究によると有病率は人口の約1~2%で、日本の患者数は120~240万人と推定。症状は、ほかのタイプの頭痛と変わらないため、MOHであることに気づかないまま薬をのみ続けて、症状が悪化している人が少なくないと考えられます。

鎮痛薬

薬に代わって痛みを和らげる 鍼のチカラ

MOHの治療には、原因となる薬の使用を止めることが大切ですが、痛みがあるなかで薬を止めることは容易ではありません。そこで、減薬や断薬の助けとなっているのが、鍼のチカラです。

重い頭痛と吐き気に襲われた池田さん(仮名)

中学3年生(取材当時)の池田さん(仮名)。2021年5月の大型連休の直前、重い頭痛と吐き気に襲われ、病院へ。鎮痛薬が処方され、服用を続けましたが症状は悪化するばかり。楽しみにしていたバスケットボール部の交流試合も、当日の朝に、強い痛みと吐き気に襲われ出場できませんでした。その後、複数の病院を受診しましたが、原因は分からないまま。医師の処方による鎮痛薬の使用を続けましたが、さらに痛みが悪化。薬が手放せない状況に陥り、学校を休むことが増えていきました。

鍼灸師の菊池友和さん
治療をする鍼灸師の菊池友和さん

転機となったのが、鍼灸院に行ったことです。鍼灸師の菊池友和さんが、薬の使いすぎによって頭痛が起きている可能性に気づき、頭痛専門医の受診をすすめたのです。そこで、埼玉医科大学病院の「頭痛外来」を受診したところ、MOHと判明。鍼灸治療を週1回のペースで受けながら、薬の使用をやめることになりました。その結果、みごと断薬に成功。現在は学校を休むこともなくなりました。池田さんの母親は、「最初は、鍼がなぜ頭痛に効くのか分からず、若い人がやるイメージもなかったので、効果に疑問を感じました。でも本人が決断し、鍼治療を受けてみたら次第に体調が回復したので、とても安心しました」。池田さんは、「鍼は痛いのかなというイメージがありましたが、実際はそんなことはなく、施術中は寝てしまうくらいリラックスできます。自分に合っているのかなと感じます」といいます。

鍼治療で体調も回復し、断薬に成功した

再発防止の効果も 期待される鍼灸治療

MOHは、いったん断薬に成功したとしても、痛みがあるとまた薬を使ってしまう「再発」が多いことが問題とされ、その防止にも鍼灸治療が期待されています。2021年の頭痛診療ガイドラインの改訂では、新たにMOHに対する鍼治療が追加されました。埼玉医科大学東洋医学科の山口智准教授は、「薬なしで頭痛に耐えるのは非常に困難で、不安も大きいと思う。ぜひ我慢せず鍼灸治療をうまく活用し、MOHの状態を抜け出し頭痛を治療するのに役立ててほしい」といいます。

この記事は以下の番組から作成しています。

東洋医学

東洋医学ホントのチカラ「健康の大問題 解決SP」

2022年1月10日(月)午後7:30~[総合] 

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