かごしま国体 “ミスターセブンズ”現役復帰へ
- 2023年10月05日
「かごしま国体」の開幕が近づいてきました。鹿児島市出身で、7人制ラグビーの元日本代表の桑水流裕策選手は、国体のために再び、ユニフォームを着ることにしました。引退から2年のブランクを経て、ふるさと・鹿児島での現役復帰にかける思いを取材しました。
(鹿児島放送局・松尾誠悟記者)
リオデジャネイロ五輪キャプテンで4位
「楽しみが6割、不安が4割」
かごしま国体の開幕まで1週間となった今月1日、桑水流裕策選手はNHKのインタビューにこう答えました。ことし8月から、週2回ある鹿児島チームの全体練習に本格的に参加。言葉とは裏腹に桑水流選手は国体に向け、着実に練習を重ねていました。
ラグビーのベースをつくってくれた地でもあるので、鹿児島県に対してしっかりプレーで返していけたらいいなと感じています
桑水流選手は長年にわたって、7人制ラグビーの日本代表として活躍。愛称は「ミスターセブンズ」です。7年前のリオデジャネイロオリンピックではキャプテンとして日本代表を4位に導きました。しかし、所属するクラブの廃部もあって2年前、35歳で現役を引退。第一線を退いてからは、子どもたちが自分に合ったスポーツを見つけるサポートをしてきました。
スポーツで “人生豊かに”
桑水流選手は引退後、「なぜラグビーを続けてきたのか」、問い続けてきたと言います。自問自答するなかで、その答えはみずからの経験の中にあることに気づきました。
楽しむため、人生を豊かに、充実したものにするために、スポーツというものがあるんだと改めて気づいた
そして、引退前から再三オファーを受けてきた「かごしま国体」で、現役復帰することを決断しました。
勝つことにはこだわるんですけど、セブンズ(7人制ラグビー)をプレーすることを純粋に楽しみたいなって思っています。矛盾するかもしれないですけど、勝つことも大事、だけどセブンズをプレーすることについて、純粋にいまワクワク感もとてもありますね
年齢との闘いに加えブランクも
国体への出場を決めましたが、年齢は37歳。さらに、現役を引退してから2年のブランクもあり、そのなかでの現役復帰は自分との闘いです。週2回の全体練習とは別にジムに通い、自主トレーニング。基礎的な体力や筋力をあげるために、ベンチプレスを行いますが、思っていた重さを持ち上げることができません。取材に行った日は、「思っていた重さを持ち上げることができません。だめですね…。弱くなっていますね」と弱音もこぼしていました。
7人制ラグビーは少ない人数で、通常のラグビーと同じ広さのフィールドを駆け回るため、豊富な運動量が求められます。開幕が迫るなか、20代の若い選手たちに混じって練習に励んでいる桑水流選手。取材に伺った日は、練習後も、同じフォワードの若手を呼び寄せ、体力を取り戻すために、タックル練習をしていました。
練習で疲れた体で、桑水流選手は何度も何度もタックルをしては起き上がり、必死で食らいつきます。そうした姿は、若手に刺激を与えているようでした。同じフォワードの若手選手は「みんなの前でハードワークして、チームを鼓舞してくれるので、すごくいい刺激を与えてくれている存在」と話しています。桑水流選手は、若いころとは同じプレーはできないと感じながら、いま、自分なりの役割を果たすことに、喜びを感じています。
チームの精神的な柱になれたらいいのかなって。桑水流裕策がいるから若い選手が思い切り、プレーできると思ってもらえるのが一番、いい立ち位置なのかなって感じています
家族の存在も突き動かす
フィールドを離れると、4児の父親。上から、11歳、6歳、4歳、2歳の4人の息子がいますが、次男より下の子どもたちは、7年前のリオデジャネイロオリンピックで活躍した桑水流選手の姿を生で見たことはありません。家族の存在も、「かごしま国体」で戦う理由です。
リオデジャネイロオリンピックのときとは違って、いまは子どもたちと過ごす時間も増えました。この国体では子どもたちと楽しみながら、自分自身もスポーツを一生懸命やるっていう姿を見せられたらいいなって思います
現役復帰を決めた桑水流選手は、開会式で鹿児島県選手団の旗手にも抜てきされました。自分が楽しむため、子どもたちの記憶に刻み込むため、そして、ふるさとに勝利をもたらすために、戦う覚悟です。