いのちの電話 足りない相談員
- 2023年10月01日
鹿児島県では、去年315人が自殺し、7年ぶりに300人を超えました。人口10万人あたりの自殺者数は20.3人と全国で4番目に多くなっています。しかし、相談員のなり手が少なくなり、相談を十分に受けきれていない状況になっています。
鹿児島局記者 古河美香
9月10日からの「自殺予防週間」を前に、自殺を防ぐため心の悩み相談に無料で応じる「鹿児島いのちの電話」の“現場”を訪れました。ここは全国でも珍しく、24時間、年中無休で相談を受け付けています。
電話は、連日、ひっきりなしにかかってきます。
団体の専務理事を務める平川忠敏さんが見せてくれたのは、相談員が記録した「相談カード」です。1回の電話に1枚ずつ相談内容を書き留めています。8月1か月分だけで、厚さ10センチを超える束になっていました。
昨年度、「鹿児島いのちの電話」が受けた相談件数は1万3000件あまり。その1割以上が自殺をほのめかす内容でした。最近は、物価高騰による生活苦や孤独といった生きづらさを訴える声が相次いでいるといいます。また、デジタル化など社会の流れについていけないという相談も増えています。
職場でのパワハラなど、相談は男性よりも女性のほうが多くなりました。
孤独な人がいつでもどこでも話を聞いてもらえる。生の声でやりとりができるというのが電話の特徴で、そこを頼りにされてるのだと思います。
「心の限界」。「助けて欲しい」。
相談カードには電話をかけた人たちの声が並べられています。
こうした相談を受け止めるのは、高齢のボランティアが中心です。しかし、相談員が足りないため想定したシフトが組めず、2台ある電話は1台しか稼働していません。
「助けて」の声を拾いきれないのが現状です。
平川さんは相談員不足の理由について、高齢化にともなって電話の声が聞き取りづらくなったり、家族の介護などでシフトに入れなくなったりして、相談員を辞めてしまうケースが増えたといいます。
“誰かに相談するだけでも、思いを踏みとどまることにつながる”と話す平川さん。
追い詰められたりつらいことがあったりしても、1人で抱え込まず、誰かに相談してほしいと訴えています。
そして、相談員の確保が喫緊の課題だと考えています。
電話が2台あるので、いすに2人座ってもらいたいんですけどね。1人でがんばるのではなくて、とにかく相談する。“相談する文化”をなんとかして作りたいです。若い世代を掘り起こさないといけないのかなと考えています。
ただ、相談員は誰でもなれるわけではありません。相談対応のノウハウや心の問題などを学ぶ20回ほどの講習と、電話を使った実習を受ける必要があります。対応の質を下げないためです。
これまで多くのボランティアが支えてきた「鹿児島いのちの電話」。相談を聞いて救いたいのに、応じられない難しい現状に直面しています。
※不安や悩みを抱えている人は相談してください。
「鹿児島いのちの電話」099-250-7000