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男性育休現状って? 取得しても…半数以上は2週間未満

  • 2022年09月16日
(令和3年度労働条件実態調査)

「いいね、大きな会社は育休が取れて」

ことし2月、育休を取得した私が実際にかけられた言葉です。年々、取得率の上がる男性の育児休業。鹿児島県内は昨年度17.7%で前の年と比べて7.5ポイント上昇しています。
でも、実際のところ男性育休の現状ってどうなのか、取材をしました。

(鹿児島局カメラマン 末廣航)

“男性育休”の取得期間

男性育休の取り巻く環境は大きく変化しています。
「育児・介護休業法」が改正施行され、4月から事業主には個別に育休を取得するかどうか意向の確認をするなど義務づけられました。また10月からは分割での取得が可能になります。

一方で厚生労働省が発表した令和3年度雇用均等基本調査のなかに、気になる数字を見つけました。
女性の育児休業の取得期間はおよそ8割が10か月以上なのに対して、男性の育児休業の取得期間はその半数以上が2週間未満だったのです。女性に比べるとまだまだ短いのが現状です。

育休1年とってみた

森満誠也さん(34)

そんな中、鹿児島市役所に1年間の育児休業中の男性がいるという情報を入手。なぜ1年なのか、どうしてそんなに長く取得できたのか、さっそく取材しました。
森満誠也さん(34)、鹿児島市役所の建築部住宅課で市営住宅の建設などを担当しています。妻と4人の子どもと暮らし、ことし1月に次女の花織ちゃんが産まれ4月1日から1年間の育児休業を取得しています。

森満誠也さん
「子どもたちとしっかりと接して、向き合える時間を取りたいなと思い、1年間の育休を取ることを妻と話して決めました」

1人目が生まれた際は育休は取らず、2人目の時に初めて1か月の育休を取得。3人目は半年間、取りました。初めて育休を取ったときは、慣れない家事をこなすのが精いっぱいで、子どもとふれあう時間を持つことが全く出来ませんでした。

森満誠也さん
「例えば皿をどこにしまうのか、洗剤に何を使っているか教わって実践するけど、うまくいかない中で終わってたみたいな感じでした。全然子どもと関わる時間持ってなかったです」

職場の先輩の後押しもあり、しっかりと家族と過ごす時間を持ちたいと今回はさらに長期間の育休取得を決めました。

森満誠也さん
「1人目2人目の時とかは、だっこするときに、なんだか、こう距離があったんです。この子は(次女の花織ちゃん)全体的に身を任せてくれるている感じがして、やっぱりずっと家で一緒にいるからこそかもしれません」 

インタビュー中、森満さんにだっこされていた次女の花織ちゃんは安心したのかそのまま寝てしまいました。

森満誠也さん
「こうやって寝てくれるのもこれまではなかったなあって思うね」

妻の麻里子さんからは森満さんの育休についてこんな感想を。

妻 麻里子さん
「うちの場合だと子どもが複数いるので、パパがいてくれたりすれば2人で分担ができるので、子どもの相手をしてくれる人がいるっていうのが私は一番助かります」

森満誠也さんの思い

何より、子どもの成長を肌で感じる瞬間が最大の喜びといいます。

森満誠也さん
「一挙手一投足を本当にずっと追えるので。ここってこんなに成長したよねみたいなところを夫婦で共有できるのはすごく幸せなことだなと思います」

私自身、2人の息子がいて、ことし2月に次男が生まれ3か月の育休を取得しました。産まれてから生後3か月まででも赤ちゃんは驚くほど成長し、育児のやり方は試行錯誤の繰り返しでした。一定期間ですが、そばで一緒に過ごすからこそ出来るかけがえのない経験でした。

なぜ、男性の育休は短いの

ただ、そもそもどうして女性に比べて男性の育休は期間が短いのでしょうか。

鹿児島労働局 石田裕子雇用環境・均等室長
「業務の都合ですとか収入が減るということを避けたかった、もしくは職場が長期の育児休業を取得しづらい雰囲気があったということが挙げられるんじゃないかなと思います」

取得しづらい雰囲気の原因は何か。

鹿児島県が県内1000の事業所を対象に実施した調査によると回答した事業所のうちおよそ4割が育児休業取得に関して課題があるとしています。そのうち86%の事業所が課題として挙げたのが「代替要員の確保が困難」という点です。そうしたことから、「育休を取ると職場に迷惑がかかる」と考える人が多いのが現状だとわかりました。

鹿児島市の取り組み

では森満さんが働く鹿児島市役所ではどういった職場環境作り、体制づくりをしているのか、鹿児島市役所人事課を訪ねました。

鹿児島市 田口賢治人事課長
「鹿児島市の職員数はおよそ3300人。年間大体、40~50人の方が育休を取得します。女性は1年以上の育休取得されますので、育休を見越して、職員を多めに採用しています。育休を取得する人が職場を離れても、補充していくというような体制をとっていて要員不足にならないようにしていいます」

育休を見こし職員を多めに採用

およそ12年前から職場環境づくりを進めていて、鹿児島市役所の男性の育休取得率は昨年度48.7%でした。しかし森満さんのように長期の休業だと代替要員を配置しやすい一方で、短い育休に対しては対応の難しさがあるといいます。

鹿児島市 田口賢治人事課長
「例えば1か月の育休では異動でそこに職員を補充したとしても、1か月後には育休から戻ってくるので、そこに誰かを行かせるのはなかなか難しいのかなと。短い期間をしっかりと補充していくのは少し難しい部分はございます。1人減った状態でそこを乗り切っていただくというような状況は出てしまうと思います」

中小企業ほど厳しい現状

職員を多めに採用するなどの体制を作ってもすべてに対応するのは難しいというのは衝撃的でした。
鹿児島労働局 石田裕子雇用環境・均等室長は、鹿児島市役所の取り組みは選択肢のひとつとして考えられる一方で中小企業などが同じようにできるものではないと指摘しています。
実際に県の調査では規模が小さい企業ほど経済的負担、あるいはマンパワー的にも負担が大きいと回答しています。
男性が1、2か月育休を取るからと言って、その間だけ新しい人を雇うのは難しく、現実的には、いる人で乗り切るケースが多いようです。

取材を終えて

育休が長ければいい、短いからだめではなく、取る取らないも含めて、それぞれが家庭や仕事の都合に合わせて決めることが大切だと感じました。大事なことは育児に限らず介護や闘病しながらでも働きやすい社会をどう作っていくか、事業主側の体制づくりなどの課題をどう解決していけばいいのか、社会全体で考えていく必要があると感じました。

  • 末廣航

    NHK鹿児島放送局ニュースカメラマン 

    末廣航

     2013年入局 山口局・下関支局を経て3年前から鹿児島局。2児の父。コロナ禍の子どもたちの姿を追う。

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